今年の4〜9月に、関東の倒産件数は26年ぶりの低水準を記録しました。とはいえ、必ずしも社会全体の景気が良いとは言えず、年末になると意識すべきなのが年末倒産です。年末倒産はなぜ起こるのか?そのメカニズムを解説すると共に、年末倒産を防ぐために今からどのように万全な対策を立てられるか説明いたします。
倒産件数は26年ぶりの低水準でも気をつけたい年末倒産
東京商工リサーチが2016年4~9月の東京都と神奈川、埼玉、千葉3県の倒産状況をまとめた指標を発表しました。
件数は前年同期比で2.4%減の1387件と7年連続で減少し、1990年以来、26年ぶりの低水準となったそうです。
景気がよければ倒産件数は減りますが、倒産件数が減ったからといって必ずしも社会全体を見渡して景気が良いとは言えません。
そして時は既に11月、年末が近づくと増えるのがいわゆる「年末倒産」です。
なぜ年末倒産は起きるのか?黒字でも要注意
さて、なぜ年末になると倒産が増えるのでしょうか?
倒産というと、2回目の手形不渡りによる事実上の倒産や、会社更生法・民事再生法・破産法の申請といった形態があげられますが、その原因の大半は資金不足です。
例えば卸売の会社があるとします。業績は好調で毎月ごとに売り上げが伸びていく状況です。
売り上げが伸びれば、当然仕入や経費の金額も膨らんでいきます。
ここで売り上げの入金が2か月後の手形(サイト3カ月)決済、仕入・経費は翌月決済とします。
そうするとお金が手元に入るのが最大5か月後なのに対し、支払いは1か月後で、4カ月のずれが生じます。
その間は、手元資金でキャッシュをやりくりしなくてはなりません。
特に、業績拡大期は支払の資金繰りが追い付かず、黒字なのに倒産に追い込まれるという事態が起こってしまします。
同じように、年末に向かっては、クリスマス商戦や年末年始商戦が繰り広げられ、取引金額が膨らみやすくなり、しかもボーナスまで支払わねばなりません。
このような原因で、体力のない中小企業ではキャッシュが尽きやすくなり、年末倒産が起きやすくなります。
年末倒産を防ぐため事前に立てたい対応策とは
逆に言うと、どれだけ赤字でも資金繰りさえ都合がつけば、自分で会社をつぶそうと思わない限り、倒産することはありません。
社長が会社に貸し付ける、銀行融資を受ける、手形を割り引くなど、資金の都合をつけて回している中小企業は多いはずです。
年末に会社を倒産させないため、まず行うべきことは、自社の資金繰りの状況を正確に把握することです。
3~6カ月の資金繰り表を作成すると一つの目安になります。
そのうえで、資金の融通先をいかに確保するかを考えてみましょう。
取引条件の変更に応じてくれそうな相手先はあるか、削減できる経費はあるか、社長個人の資金を入れられるのか、考える必要があるでしょう。
また、資金の確保において最も有効なのは、銀行からの借入です。
銀行の融資枠がいくらあるか、その借入条件など取引銀行と常日頃からコミュニケーションを取っておくことも大事です。
下請け仕事がメインの会社は、元受に万が一があったときに備えて「経営セーフティー共済」といった制度に加入しておくことも一助になります。
これは連鎖倒産防止のために貸し付けを受けられる共済で、当座の危機をしのぐ助けとなるでしょう。
年末に向けて、まさかで起こりうる不測の事態へ十分に備え、ラストスパートをかけていきましょう。