企業によるマイナンバー制度の本格運用が、2016年の年末調整からいよいよ始まります。そこで、税務処理上でマイナンバーを取り扱う際に気をつけるべき3つの点をご紹介いたします。マイナンバーの記載が必要なのに、何らかの理由により記載が出来ない場合に備えて、マイナンバー提供に関するやり取りはきちんと記録に残しましょう。
年末調整から企業もマイナンバー制度を導入へ
今年からマイナンバー制度の運用が始まりました。
会社側としては、あと2か月後に迫った年末調整からが、本格的なマイナンバー制度の導入スタートといってよいでしょう。
そこで、税務処理上マイナンバーが必要になる場面を、いくつか例を挙げてまとめてみます。
税務処理上でマイナンバーが必要になる3つの場面
1)源泉徴収票を作成する場面
会社が源泉徴収票を作成する場面というと、
- ①年末調整後(未済含む)
- ②年の中途での退職者
- ③退職者に退職金を支払う場合
などがありますが、重要な点は「本人に交付する源泉徴収票にマイナンバーは記載しない」ということです。
マイナンバーが記載されるのは、税務署や市役所等に提出される源泉徴収票(給与支払報告書)のみです。
提出義務が無いためどこにも提出しない場合には、マイナンバーはいずれにも関係ないことになります。
2)支払調書を作成する場面
弁護士や税理士の報酬、外交員報酬、デザイン料・原稿料などの支払調書を作成する場合も、上記の源泉徴収票と同様に、本人に交付するものにはマイナンバーは記載されず、税務署へ提出するものについてのみ記載が必要となります。
支払調書にも提出要件があり、それを満たさないものは提出する必要が無いためマイナンバーは必要ありません。
ただし、要件を満たさないものでもあえて税務署へ提出するという場合には、マイナンバーを記載しなければなりません。
3)不動産の使用料等の支払調書を作成する場面
ただし、この支払調書で厄介と思われるのは「不動産の使用料等の支払調書」です。
いわゆる家賃の支払調書ですが、これを提出するには大家さんからマイナンバーを教えてもらわなければなりません。
家賃の支払先が不動産会社でも、それが単なる管理会社であれば、あくまでも所有者である先のマイナンバーが必要になります。
しかも所有者が共有名義であれば、共有者全員の分ということになります。
マイナンバーのやり取りは経過の記録・保存を
支払調書へのマイナンバー記載には、3年間の猶予期間を与えられているものがあります。
ただし、金融商品取引業者等などの一部のもので、給与や報酬・料金等、使用料などの調書には猶予期間はありません。
もし従業員や取引相手などからマイナンバーの提供を受けられなかった場合、提供を求めた経過等を記録、保存するよう心がけましょう。
単なる会社側の義務違反でないことを明確にし、その旨を税務署等へ説明できるようにすることが大事だからです。