週末の金曜日、もう年末のおやすみモードに入られた方も多いのではないでしょうか?もうお休みという方も多いかもしれませんが、個人の課税期間は12月31日までを一区切りとしています。節税対策ができるのも年内まで。個人の場合、1年間の株式売却益については、20%(所得税15%、住民税5%)の税金が課税されます。もし利益が出ているとしたら…今直ぐすべき節税対策があります!
年末おやすみモードは節税対策の期限でもある
週末の金曜日、もう年末のおやすみモードに入られた方も多いのではないでしょうか?
税理士事務所があるビルのイオンタウン有松(名古屋市緑区)では、多くの家族連れが買い物に来て楽しそうにしています。
ところが、この時期は税理士にとっては年末調整の繁忙期ですので、税理士業界へ転職してからは休みをとった記憶がありません。
もうお休みという方も多いかもしれませんが、個人の課税期間は12月31日までを一区切りとしています。
節税対策ができるのも年内までです。
そこで前回記事「ふるさと納税による年末の節税」に引き続き、12月中にチェックすべきことをお伝えしたいと思います。
今回は、株式についてのチェックをしてください、という内容です。
株式売却益には20%の税金がかかる
個人の場合、1年間の株式売却益については、20%(所得税15%、住民税5%)の税金が課税されます。
あなたの今年の投資成績はいかがだったでしょうか。
とても儲かった?それはすばらしいです。
でもこのままだと20%の税金がかかってしまいますね。
もちろん、そのまま税金を払うことで国に利益のお裾分けをしても全く構いません。
でも、多くの人は、その税金を何とか安くしたいなあ、と思いますよね。
もしそうであれば、ぜひ次に読み進めてください!
今年まだ間に合う節税方法とは?
そんな場合には、今年まだ間に合う節税方法があります。
それは、売却損を出して今年の売却益を相殺をすることです。
現在保有している株式で、含み損をもっているものはありませんか?
もしあれば、そのまましばらく保有するのではなく、12月中に売却してその含み損を吐き出し、今年の売却益を相殺させることができれば、節税につながります。
たとえば、今年の売却益が100万円あったとしましょう。
このままだと、100万円×20%の20万円の税金がかかります。20万円っていっても大金ですよね。
一方、残念ながら値下がりして、売るに売れない株式も保有していて、その含み益が30万円あるとしましょう。
この含み損を抱える株式を12月中に売却して売却損30万円を出します。
そうすれば、課税される売却益は、今までの売却益100万円-今回の売却損30万円=70万円になって、売却益に対する税金は、70万円×20%=14万円。
そのまま含み損を抱えた株式を保有するよりも6万円も税金を少なくすることができます。
わかっちゃいるけどその株式手放したくない…
ところがどっこい、株式を運用しているとどうしても「損したくない」という気持ちになってしまうのが人の人情。
その含み損を抱える株式を手放しなくない場合もありますね。
よくあるケースが、
- ・その売却した株式が今後は値上がりの見込みがある
- ・魅力的な株主優待があるのでまた所有したい
とかいう場合です。
そのような場合でも、一度今年中に売却して、その後買い直せばいいのです。
日本に予見も出来なかった天変地異が起きて市場が休場となったり、年末にその会社が倒産しないかぎり、投資することは可能です。
まずは目の前にある確実な「節税効果」を取るのが、賢明だとは思いませんか?
株式売却損益の相殺による節税対策の注意点
この売却益と売却損を相殺する節税方法ですが、注意点があります。
(1)株式は市場で売却する
株式は東京証券取引所などの市場で売却する方法以外にも、相対で売却する方法もあります。
しかし、この節税策では市場で売却するようにしてください。
相対取引では、売買価格を操作することが可能です。税務署に怪しまれる可能性が高いです。
市場で売却すれば、操作することのない相場で売却したことになります。
(2)買い戻す場合は、クロス取引はしない
同日に1つの会社の株について、同じ数量の売りと買いを同時に行う「クロス取引」というものがあります。
このようにすれば、売却損の実現をしながら、実質は保有していたとほぼ同じ状態を続けられることになります。
売却後少し日数をおいてから買い戻すと、もしかしたらその間に株価が大きく動くことだってありますから。
でもこのクロス取引。おすすめしません。
第1の理由は、税務署が文句をつけてくる可能性があるからです。
実質的に保有していると同じだから、クロス取引はなかったものとみなす、という理屈です。
そして第2の理由
現物株について、このクロス取引を自分でネット証券などでやると、大抵は失敗します。
「保有していた現物株を売る」→「売った株を現物で買い戻す」という順番でやったつもりでも、現物株の場合は、証券会社の内部システムで「買い」→「売り」の順番に勝手に変更されるそうです。
つまり、含み損を抱えた株式は、まず追加購入になって、売却したことになってしまうのです。
そのように順番が変わると、取得価額は平均で計算しますので、売却損が少額になってしまい、含み損を吐き出す効果が大きく下がってしまうからです。
例)株価1000円で購入した株式1000株(取得価額100万円)のA社株式の株価が500円に下がっていたので、売却損を実現するため売却した。
- 通常:売却(500円-1000円)×1000株)=売却損50万円
- クロス取引失敗例:
・まず買いが発生→50万円(500円で1000株)で購入により、
取得価額150万円で2000株の保有となる。(平均取得価額=150万円÷2000株=750円)・次に売りが発生→500円で1000株売却により
(500円-750円)×1000株=売却損25万円となって売却損が半減する。
クロス取引でなくても、同日に時間をおいて売りと買いをしても同じ計算方法になるという情報もあります。
したがって、買い戻すのは売却の翌日以降にするとよいでしょう。
(3)2015年12月25日(金)までに売却する
「今年中に売却」と書いていますが、今年の市場で取引される最後の日=大納会は12月30日(水)です。
12月31日に売却しようと思っても、その日は市場は開きません。
それだけではありません。
株式の場合、税制上は引き渡し日が売却した日の基準となります。
- 2015年12月25日(金)取引分の受け渡し日は、2015年12月30日(水)
- 2015年12月28日(月)取引分の受け渡し日は、2016年01月04日(月)
つまり、12月25日までの取引が2015年分の売買とされ、12月28日以降の取引は、2016年の売買とされてしまいます。
特定口座の場合は、この受け渡し基準で計算されます。
つまり、12月中に売却といっても、実際には2015年12月25日(金)までに売却する必要があります。
ということは、今日は25日(金)…
市場が開いているのは後場(PM12時30分〜15時まで)ですから、まさに、ギリギリというところですね。
もし売却損を出せる方は、ダッシュで検討してみてください!
(注)一般口座の場合は、確定申告の際に売却日を引渡し基準ではなく、約定日基準での選択も可能です。(所得税基本通達36-12)