会計ソフトを利用する際、クラウド型とインストール型、どちらを使えばよいか迷ってしまうケースが多いと思います。
実際のところ、どちらがお得なのか、気になりますよね。
今回はそんな疑問を解決するべく、クラウド型とインストール型の会計ソフトを機能面や料金面などから徹底比較していきます。
クラウド型会計ソフトの特徴
クラウド型会計ソフトは、パソコン本体にデータを保存せずに、インターネット上にデータを共有して管理するタイプの会計ソフトです。
近年、ネット環境の発達により、クラウド会計のシェアが急速に伸びてきています。
クラウド型会計ソフトの特徴として、下記の点が挙げられます。
・複数の端末で共有できる
・自動仕訳機能が搭載されている
・機能をカスタマイズできる
サーバーの構築が不要
会計ソフト用のサーバーを構築する必要がなく、利用を始めるまでの手間がかかりません。
クラウド上のセキュリティ管理は、販売会社が一括して行ってくれるので、利用者側がセキュリティ対策する必要もありません。
複数の端末で共有できる
設定した人数内であれば、複数の端末でデータを共有したり、作業を行うことが可能です。
パソコンのみならず、スマホからのアクセスにも対応しているソフトもあり、場所や時間を選ばずに作業を進めることができます。
自動仕訳機能が搭載されている
自動仕訳機能とは、過去の入力データに基づいて、自動的に勘定科目を提案してくれるシステムです。
AI(人工知能)が、仕訳パターンを学習して、最適な勘定科目を表示してくれます。毎回、勘定科目を探す必要もなく、経理担当者の負担を減らすことが可能です。
機能をカスタマイズできる
たとえば、制度会計に加えて、管理会計の科目も利用したい場合に、機能を追加することで管理会計の帳票も作成・出力できるようになります。
追加料金はかかってきますが、使用目的に合わせてカスタマイズできるのも、クラウド型会計ソフトの強みです。できるのも
クラウド型会計ソフトを使うメリット
クラウド会計ソフトを使うメリットは以下の4点です。
・データ流出、破損のリスクを低くできる
・自動で最新版にアップデートされる
・外部データとの連携を簡単に行える
会計業務を効率化できる
たとえば、品目を選ぶだけで勘定科目が自動入力されたり、金額表示が拡大アップで表示されたりする機能が挙げられます。
経理の仕事は専門知識がないと難しいとされてきましたが、クラウド型会計ソフトの登場によって、その常識は変わりつつあります。
また、自動仕訳機能によって、過去に使用した勘定科目を自動で提案してくれるソフトも多く、データ入力の手間を省いてくれます。
会計業務にかかる時間を減らして、他の業務にあてることができ、会社全体の経営効率を高めることも可能です。
データ流出、破損のリスクを低くできる
クラウド上ではデータの暗号化が行われるため、外部の脅威からデータを守ることができます。
加えて、クラウド型会計ソフトでは、データのバックアップが常に自動で行われるものが多く、誤ってデータを削除してしまっても安心です。
使用しているパソコン自体が破損しても、データ自体はクラウド上にあるので、地震などの災害にも強いといえます。
自動で最新版にアップデートされる
利用者側でアップデートをする必要もなく、ソフト会社側がアップデートを行ってくれます。
毎回、手動でアップデートをする必要もなく、経理の負担を減らすことができます。
パソコンを新しく買い替えても、ネットにアクセスするだけで最新版のソフトが利用できるので、都度ソフトをインストールする必要もありません。
外部データとの連携を簡単に行える
たとえば、銀行口座の入出金履歴やクレジットカードの利用利益を同期させることで、会計ソフト側にデータを自動で送ることが可能です。
毎回、データを手入力する必要がなくなり、業務効率化につながります。
クラウド型会計ソフトを使うデメリット
クラウド型会計ソフトはメリットのみでなく、下記に挙げるデメリットもあります。
・インターネット環境によっては動作が遅くなる
・クラウド会計に対応できない税理士もいる
・意図しない仕様変更がある
月々の利用料金が必要
利用料金は会計ソフトの種類によって変わってきますが、インストール型の会計ソフトと比べると、料金が高い傾向にあります。
機能が充実したプランであるほど、利用料金が高くなるので、金額に見合った機能が搭載されているか、確認必須です。
インターネット環境によっては動作が遅くなる
クラウド上で大量のデータを送受信するため、回線の容量が小さいと処理が遅れてしまいます。
クラウド型会計ソフトを導入する際は、ネット回線の見直しも改めて行った方が良いでしょう。
クラウド会計に対応できない税理士もいる
税理士の多くは、インストール型の会計ソフトを利用してきており、クラウド型会計ソフトを利用した経験がない場合が多いのです。
既に顧問税理士がいる場合は、クラウド型会計ソフトに対応できるか確認をとることをおすすめします。
確認せずに導入してしまうと、顧問税理士の方で対応ができなくなり、契約上のトラブルに発展する危険もあります。
クラウド型会計ソフトの利用に特化している税理士も徐々に出てきているので、クラウド会計を利用する際に顧問税理士を変えてみるのもひとつの手ですね。
意図しない仕様変更がある
使い慣れていた画面が意図しない仕様変更によって、使い勝手が悪くなってしまうこともあり、業務に支障をきたすリスクが少なからずあります。
大幅な仕様変化が起こる可能性もゼロではないので、その点、留意しておく必要がありますね。
代表的なクラウド型会計ソフト
クラウド型会計ソフトの種類は年々増えてきていますが、その中でも高いシェアを誇っているのが、下記の会計ソフトです。
・クラウド会計ソフト「freee」
・マネーフォワード クラウド会計
弥生会計オンライン
老舗企業ということもあり、利用者に対するサポートが充実しています。
オペレーターと画面共有しながら操作方法を質問できるので、初めてクラウド型会計ソフトを利用する人でも安心です。
料金プランは下記の通りです。
- 無料プラン:最大2ヵ月無料
- セルフプラン:26,000円 / 年 (税抜)
- ベーシックプラン:30,000円 / 年 (税抜)
セルフプランは、2ヵ月間の間のみしかサポート受けることができないので、サポートをフルに受けたい場合は「ベーシックプラン」をおすすめします。
弥生会計オンラインについては以下の記事で詳しく解説しています。
クラウド会計ソフト「freee」
簿記の知識がなくても、感覚的に操作できる手軽さがあり、クラウド会計ソフトのシェアN0.1を誇っています。料金プランは下記の通りです。
- ミニマムプラン:1,980円 / 月
- ベーシックプラン:3,980円 / 月
- プロフェッショナルプラン:39,800円 / 月
ミニマムプランは料金は安いですが、経費精算機能が含まれていません。
経費精算は、個人・法人問わずに必要な作業ですので、経理用に使うのであればベーシックプラン以上の利用をおすすめします。
経費精算を当面の間行わないのであれば、ミニマムプランを利用して、使い勝手を確認してみるのもアリです。
クラウド会計「freee」はこちらクラウド会計ソフト「freee」については以下の記事で詳しく解説しています。
マネーフォワード クラウド会計
マネーフォワードクラウド会計は、freeeに次いで人気のあるクラウド会計ソフトです。
freeeと比べると、操作画面が若干、経理経験者向けの仕様になっていますが、経理初心者の方でも使えないことはありません。
freeeとマネーフォワードを使い比べてみて、使いやすい方を選ぶと良いです。
料金プランは下記のようになっています。
- スモールビジネス:3,980円 / 月 or 35,760円 / 年
- ビジネス:5,980円 / 月 or 59,760円 / 年
スモールビジネスとビジネスは、登録可能な部門数とクラウド上のストレージ量に違いがあります。
スモールビジネスだと2部門まで、ビジネスだと無制限に部門登録できます。
また、ストレージに関しては、スモールビジネスが100MB、ビジネスが10GBです。
総じて、ビジネスの方が部門数、ストレージ容量にゆとりがあるので、経理作業用に利用するのであれば、ビジネスのプランがおすすめです。
マネーフォワードクラウド会計はこちらマネーフォワード クラウド会計については以下の記事で詳しく解説しています。
インストール型会計ソフトの特徴
インストール型会計ソフトは、パソコンに会計ソフトをインストールして利用するタイプの会計ソフトです。
従来は経理業務は、このインストール型会計ソフトを利用して行われてきました。
クラウド型会計ソフトが登場した現代においても、インストール型会計ソフトを利用している企業もあります。
インストール型会計ソフトの特徴として、下記の点が挙げられます。
- インターネットが通らない場所でも利用できる
- スムーズに動作する
- セキュリティ面で手間がかからない
インターネットが通らない場所でも利用できる
インストール型会計ソフトの場合、インターネットが通っていない環境でも利用することができます。
一度、パソコンにインストールしてしまえば場所を問わずに経理作業をすることができます。
スムーズに動作する
インストール型会計ソフトは、インターネット環境に依存しない分、クラウド型会計ソフトよりも動作がスムーズです。
インストールした機器のスペックにもよりますが、メモリやデータ容量に余裕を持たせておけば、サクサク作業を進められます。
セキュリティ面で手間がかからない
インストール型会計ソフトは、保存したデータがネット上で共有されることはないので、セキュリティ面で手間がかかりません。
パソコンのウィルス対策を行っておけば、外部からの攻撃でデータが流出する心配はありません。
ただし、人為的なミスでデータが流出する可能性はあるので、その点の対策は必要です。
インストール型会計ソフトを使うメリット
インストール型会計ソフトを使うメリットとして、下記の点が挙げられます。
- 月額(年額)で料金を支払う必要がない
- システム障害があまり起こらない
月額(年額)で料金を支払う必要がない
一度、ソフトを購入する際に代金を払えば、その後は料金を払わずに使用できます。
長期的に見ると、ランニングコストを減らすことにつながるので、資金にゆとりがないうちはインストール型会計ソフトの利用がおすすめですね。
システム障害があまり起こらない
ネットのメンテナンスや通信速度の影響を受けないため、ソフト自体のシステム障害が起こりにくいです。
経理作業の期限に追われているときなどに、システム障害が起こってしまうと大変ですが、インストール型の会計ソフトであればそのような心配もありません。
インストール型会計ソフトを使うデメリット
インストール型会計ソフトを使うデメリットとして、下記の点が挙げられます。
- ソフトのバージョンアップを行う必要がある
- ハードディスク容量が必要
- 利用できるデバイスに制限がある
- バックアップの際に事故が起こる可能性がある
ソフトのバージョンアップを行う必要がある
そのため、法律が改正された際は、新しいバージョンへアップデートしなくてはいけません。
クラウド型会計ソフトであれば、法改正にともなうアップデートは自動で行われますが、インストール型会計ソフトの場合は、手動で行わなくてはいけません。
アップデートを忘れてしまうと、経理業務に支障がでてしまうので、この点、少々手間な作業となります。
ハードディスク容量が必要
この際にパソコンに十分なハードディスク容量がないとインストールできない場合があります。
容量の少ないもので500MBほど、機能が充実したソフトだと2GBを超えるものもあります。
会計ソフトをインストールする前に、パソコンの空き容量を確認しておきましょう。
利用できるデバイスに制限がある
バージョンやソフトによっては、2台以上のデバイスにインストールできるものもありますが、基本的には1ソフト1台が基本です。
デバイスによっては、会計ソフトと相性が悪いものもあるので、注意してください。
バックアップの際に事故が起こる可能性がある
ハードウェアが紛失したり、盗難されたりすることで、データが外部へ流出してしまう可能性もあります。
パソコン上のセキュリティ対策が万全でも、ハードウェアの管理体制がしっかりしていないと、データを守ることができません。
代表的なインストール型会計ソフト
代表的なインストール型会計ソフトとして、下記のソフトが挙げられます。
- 弥生会計20シリーズ
- 勘定奉行シリーズ
- MJSLINK NX-PLUS 財務大将
弥生会計20シリーズ
21年間連続でインストール型会計ソフトの売上実績NO.1を誇っており、多くの事業主・企業から支持を受けています。
インストール型は以下のラインナップとなっています。
- 弥生会計20スタンダード:39,800円
- 弥生会計20プロフェッショナル:77,200円
- 弥生会計20プロフェッショナル2 user:105,000円
- 弥生の青色申告20:12,000円
インストール型の弥生会計では、購入後に「あんしん保守サポート」に申し込むことで、下記のサポートを受けられます。
- 電話、メールによる運用サポート(経理業務の質問も可能)
- 弥生会計の次期製品、法令改正対応版の無償提供
- PC関連のトラブルへの対応
万が一の事態に備えて、あんしん保守サポートに申し込むことをおすすめします。
勘定奉行
導入実績は56万社以上で、顧客満足度も通算11回No.1を取得しており、その評価は折り紙つきです。
勘定奉行は、Microsoft Officeと提携できる機能をもっており、Excelなどで作成したデータをそのまま勘定奉行へ反映させることが可能です。
また、内部統制やIFRS(国際財務報告基準)への対応も進んでおり、国外で法人設立を考えている企業にもおすすめの会計ソフトです。
勘定奉行の価格は下記の通りです。
- 勘定奉行 i 11 スタンダアロン:250,000円~
- 勘定奉行 i 11 Network Edition for Windows:1,120,000円~
- 勘定奉行 i 11 Network Edition for Windows with SQL Server:1,320,000円~
MJSLINK NX-PLUS 財務大将
こちらの会計ソフトは、制度会計はもちろんのこと、管理会計機能も充実しており、自社の会計にあったシステムを構成することがきます。
オプションも豊富で、業界特有の会計処理がある場合にも対応可能です。
かただし、オーダーメイドで会計システムを構築できる分、基本価格が「77万円」からとなっており、かなりコストが高いです。
導入の際は、他の会計ソフトで代替できないか確認した上で、それでもどうしようもならない際は、MJSLINK NX-PLUS 財務大将を利用するようにしましょう。
クラウド型、インストール型会計ソフトの比較表
クラウド型会計ソフトとインストール型会計ソフトの違いについて、下記の表にまとめてみました。
クラウド型 | インストール型 | |
料金 | 毎月or毎年支払う | 購入時に支払う |
ネット環境 | ネット環境が必要 | ネット環境は不要 |
利用デバイス | PC、スマホ、タブレットなど 設定可能 |
基本はPCのみ 1ソフト1台が基本 |
バージョンアップ | 自動で行われる | 手動で行う |
ハードディスク容量 | クラウドを利用するので、容量は少なめ | PCにインストールするため、大容量が必要 |
対応OS | Mac、Windows両方に対応 | ソフトによって制限あり |
料金面はクラウド型が「継続課金」、インストール型が「一括」、
料金の支払いは、クラウド型が毎月、もしくは毎年支払いを行う「継続課金」、インストール型が購入時のみに料金を支払う「一括型」になっています。
トータルの利用料金を考慮すると、最初の1年間の合計料金はクラウド型の方が安い傾向にあります。
2年以上使用を継続してくると、インストール型の方が一括で払った分、料金が安くなってきます。
ネット環境への依存度は、クラウド型の方が高い
クラウド型会計ソフトの場合、ネット環境へ接続していないとデータの保存やアップロードができません。
これはクラウド型会計ソフトの強みでもあり、弱みでもあります。
インストール型会計ソフトの場合は、ネット環境に接続していなくても、一度パソコンへインストールしてしまえば利用可能です。
ただ、パソコンにソフトをインストールする分、パソコンの容量を使うことになり、動作が遅くなる原因となることもあります。
クラウド型は自動でバージョンアップされる
クラウド型会計ソフトは、法令改正などに伴うバージョンアップが自動で行われます。
利用者側で手動でバージョンアップする必要がありません。
これに対して、インストール型会計ソフトの場合は、手動でバージョンアップを行う必要があります。
手動で行うのを忘れてしまうと、法令改正に対応していない書類を作ってしまうことになり、後々修正が必要になることがあるので要注意です。
総じて使い勝手が良いのは「クラウド型会計ソフト」
クラウド型会計ソフトは、ネット環境さえあればすぐに利用開始することができ、インストール型のような手間がかかりません。
データのバックアップやセキュリティ対策も自動で行われるので、余計な手間がかかりません。
パソコンのデータ容量も、クラウド型の方が少ないので、パソコンの動作スピードを落とさずに利用できます。
クラウド型会計ソフトを利用して、効率よく経理業務を進めよう
クラウド型ソフトとインストール型ソフトの情報をまとめてきましたが、最終的におすすめなのは「クラウド型会計ソフト」です。
クラウド型会計ソフトにも様々な種類があるので、最初は各ソフトをお試しで比較利用してみるのも良いですね。
クラウド型会計ソフトを使って、効率よく経理業務を進めていきましょう。