生命保険は、契約者・受取人を法人、被保険者を代表者にすることで、万が一の時に備えて、会社を守るための命綱として利用されています。そこで本稿では、社長の生命保険について法人契約を締結する3つのメリットと、注意しておきたい2つの点について解説いたします。
社長名義の生命保険は法人を守る命綱の一つ
自分の身に万が一のことがあったときに、家族を守るためにあるのが生命保険です。
一方で、契約者・受取人を法人、被保険者を代表者にすることで、会社を守るための契約形態にすることが可能です。
特に中小企業では、社長は唯一の経営権保有者であり、ナンバーワンの営業マンであることが多いです。
そのため、社長の身に万が一のことがあれば一気に経営が傾く、という事例も珍しいことではありません。銀行や取引先からの信用が落ちたり、従業員への給与支払いも困難になることも考えられます。
- 契約者(=保険料負担者):法人
- 被保険者:社長
- 保険金受取人:法人
このような契約形態の死亡保障に加入しておけば、まとまった保険金を経営を立て直すための原資とすることができます。
保険料の一部を損金参入できるものも多く、定期保険や逓増定期保険などに加入している経営者も多いのではないでしょうか。
医療保険の法人契約を締結する3つのメリット
このように、法人契約の死亡保険は以前から広く知られているところですが、最近は入院保険やがん保険(以下医療系保険)の法人契約にも注目が集まっています。
医療系保険は個人で加入する方がほとんどですが、法人契約することによる3つのメリットをご紹介したいと思います。
1)損金算入できる
死亡保険と同様に、医療系保険の保険料も経費として認められるため、損金算入できます。
医療系保険の多くは解約返戻金のない、いわゆる「掛け捨て」ですので、全額損金算入できることがほとんどです。
2)給付金を社長不在時の売上補てんに利用できる
前述したように、社長は会社の信用の要です。
死亡でなくても、入院やがんなどで一線を離脱することにより、会社の売り上げが一時落ちることも考えられます。
その穴を埋めるために、保険給付金を利用することができます。
3)将来社長個人に名義変更できる
これが医療系保険法人契約の一番のキモかもしれません。
保険の契約者は変更が可能ですので、例えば退職時などに合わせて、社長個人に名義変更することができます。
保険料の払込を60歳終了などで契約しておけば、退職時には保険料支払は終わっており、個人負担することなく終身の保障が手に入ることになります。
「タダで」というわけではありません。譲渡時の解約返戻金相当額が給与として扱われますが、ゼロか数万円~10万円程度なので、大きな課税にはなりません。
医療保険の法人契約を締結する際に注意したい2つの注意点
メリットばかりに見える法人契約ですが、注意点もあります。
注意点1)法人で受け取る給付金は雑所得になる
入院、がんなどの給付金は会社に入ります。本来個人契約で受取る給付金は非課税ですが、法人では雑所得として計上する必要があります。
注意点2)給付金を社長に支払うと給与扱いとなってしまう
給付金を社長個人に渡すことはできますが、お見舞い金程度です。例えばガンの一時金200万円などを社長に支払うと給与扱いとなり、課税対象となってしまいます。
最低限の個人名義保険も加入しておくと良い
このように、法人契約である間は保険は法人のものです。
「ガンになってしまった場合に、社長個人の家計負担を補てんする」というような使い方はできないので注意が必要です。
名義変更するまでの間だけでも、最低限の個人保険も加入しておいた方が良いかもしれませんね。
以上のように現役時代の受取り方には注意が必要ですが、個人負担なく将来大きな医療系保障が手に入るのは、大きな魅力です。
最近は介護や所得補償、死亡保障などの特約が付いた医療保険も登場しています。現役時代は会社を守るため、そして退職後は自分を守るため、経営者の方は一度検討してみてはいかがでしょうか。