経歴を詐称していた社員は果たして解雇可能?
年の前半も過ぎ去さりましたが、春先に話題となったことの一つに、人気コメンテーターの経歴詐称問題がありました。
社会的認知度も高い方だっただけに、キャスターとして採用内定を出していたテレビ局の痛手は、非常に大きいものだったことでしょう。
さて、このようなことは、会社においても起こり得ます。
つまり、採用した社員が、履歴書に書かれていた経歴を詐称していた、という話です。
もしも社員の経歴詐称が判明した場合、これを理由に解雇することはできるでしょうか?
経歴を詐称した社員を解雇する合理的な理由
まず、会社が社員を解雇する場合は、客観的に見て合理的な理由が必要となります。
この「合理的な理由」とは、次のような場合です。
- 社員の労働能力・適格性が欠如喪失している場合
- 社員が規律違反行為をした場合
- 解雇をしなければならない経営上の必要性が存在する場合(工場閉鎖、事業縮小など)
どのような場合に社員を解雇できるのか、という明確な解雇事由が、就業規則には示されていなければなりません。
しかも、このような解雇事由があったとしても、具体的な事情を考慮した上で解雇することが「合理的」であり、社会通念上相当なものであると認められる必要があります。
「解雇」とは会社が社員の意思に関係なく一方的に会社を辞めさせることですから、それ相応の理由が必要となります。
では履歴書に書かれた経歴に嘘があった場合は、社員を解雇できるでしょうか?
「本当は経験がないのに、履歴書には過去に○○の業務に従事」
「一週間だけ勤務していた会社名を履歴書に書かなかった」
なんてことは、かなりあり得ますが、これら軽微な経歴詐称は、解雇の理由としては認められないのです。
経歴詐称でも実害及ぼすことが明らかで合理的な理由がある場合は解雇に正当性が生まれる
これでは、会社があまりにも不利な立場に立たされると、お考えの方もいらっしゃることでしょう。
実は、経歴詐称が解雇理由となるパターンもありますので、最後にご紹介しましょう。
解雇理由となりうる経歴詐称とは
- 前の会社で使い込みなどをして懲戒解雇を受けていたことを隠していた
- 経理事務募集に、簿記の知識がまったくないのに、簿記2級の資格を持っていると偽った
というような、実害及ぼすことが明らかで、合理的な理由がある場合は、解雇が正当になる可能性があります。
覚えておいて、損はない知識かと思います。