居酒屋はオワコン?そんなことはありません!
近年、「居酒屋はオワコンか?」という議論が時々再燃することがありますね。居酒屋はもはや「終わったコンテンツ」、すなわち、時代遅れの業態であるという意味です。
実際、過去に一世を風靡した大手居酒屋チェーンの多くが軒並み不振にあえいでおり、業績回復の打開策がなかなか見いだせない状況ではあります。
こうした居酒屋不振の背景には、若年層があまりお酒を飲まなくなったことや、経済的な事情で「家飲み」が増えていることが挙げられます。
しかし、手ごろな値段で仲間とわいわい楽しめる「飲み屋」に対する一定のニーズはもちろんあるわけで、大繁盛している居酒屋もあります。
要するに、居酒屋市場がもはや拡大せず、むしろ縮小傾向にあるなかでは、「優劣」がはっきりするということでしょう。
優れた店は流行る、そうでない店は閑古鳥が鳴く、というわけです。
居酒屋の優劣はコミュニケーションで決まる
では、現代の居酒屋の優劣を決めるポイントはなんだと思いますか?
私は、「コミュニケーション」だと思っています。
居酒屋の場合、手ごろな値段を目指すわけですから、抜群においしい料理やお酒を提供することはできません。
奇抜な内装を施したお店もありますが、目新しいうちは流行っても飽きられるのは早いので、たいして効果がありません。
料理やお酒や内装といった物的な条件に、ほとんど違いのない居酒屋のなかから、人が行きたくなるお店とは、ズバリ「店員さんとのコミュニケーション」ではないでしょうか。
現在、最も繁盛している居酒屋チェーンは「塚田農場」ですが、同店では、店員さんが来店客と積極的な会話を行うことを全店レベルで推進しています。
お店の雰囲気を作るのは店員と来店客の相互作用です。
一緒に飲む仲間同士だけでなく、店員さんと気さくな会話が交わせるとますます気分がよくなるものです。
接客で生まれる相互作用は採用をも助けている
以前、塚田農場で働いている学生さんの話を聞いたことがあるのですが、彼女は「積極的にお客さんと話せるので、仕事が楽しい」と言っていました。
働く側としても、ただ注文を取る、つまみや酒を運ぶだけでなく、お客さんに食材の説明をしたり、軽口をたたきあえると仕事が面白くなるのです。
つまり、店員と来店客の会話促進は、来店客の気分を上げるだけでなく、店員さんのモチベーションを高め、活き活きとしたお店の雰囲気を生み出します。
塚田農場が繁盛しているのは、おつまみのおいしさもさることながら、「コミュニケーション」にあるのです。
ですから、塚田農場では、来店客の少なさにも困っていないし、アルバイト確保にもあまり困っていないのです。
店員がロボットと化した居酒屋は既にオワコン
一方、大手居酒屋チェーンはどうでしょうか。
客足が鈍って売上が低下する一方、アルバイト不足のなか、経費削減のため各テーブルに「注文端末」を置くところが多くなっています。
タブレット画面から好きなメニューを手軽に注文できるという点で客にとっても便利ではありますが、店員はただ注文されたものを運んで置いていくだけ。
店員さんと客との間の会話の機会を奪うことになっています。
しかも、店員としてはただ厨房にいて注文が来るのを待っているだけになり、お客さんが楽しんでくれているかどうか、なにか困っていることがないかといったことを考えることをしなくなる。
つまりは既に、店員がなんの気配りもできない「ロボット」に成り下がっているのです。
いや、昨今のロボットのほうが高度な人工知能を搭載していますので、よほど気配りができ、来店客と気の利いた会話ができるかもしれません。
私は以前から、ただ言われたことを無表情でやるだけの店員さんに接客されるくらいなら、ペッパーくんのほうがまし、と繰り返し言っていますが、早晩、大手居酒屋の店員の多くがペッパーくんのような「接客ロボット」に置き換わるのは間違いないでしょう。
そのとき、接客ロボットは、塚田農場で活き活きと働く生身の店員さんに勝てるでしょうか。
私は勝てないと断言できます。どんなに複雑であったとしても、明確なルールのある囲碁や将棋、チェスと、生身の人間のサービスは全く違うものです。
少なくとも、あと数十年は、サービスの世界において、生身の人間がロボットに負けることはないと思っています。
Photo credit: gruntzooki via Visual Hunt / CC BY-SA