領収書等のスキャナ保存制度が平成17年に導入され早や10年が経ちました。平成28年度の改正においては、更にスキャナの利用要件が緩和されておりますので、今回はその内容をご紹介いたします。中小企業の経営者にとっては、経理作業を大幅に圧縮し、コストダウンを図るチャンスとなりそうです。
やっと領収書のスキャナ保存が実現に向かう
領収書等のスキャナ保存制度が平成17年に導入され早や10年、導入要件が厳しいということで、利用は遅々として進みませんでした。
そこで、平成27年度の税制改正により、対象とされる一定の書類について3万円未満の金額基準が撤廃されるなど、様々な要件緩和がされました。
平成28年度の改正においては、更にスキャナの利用要件が緩和されておりますので、今回はその内容をご紹介いたします。なお、これらの緩和については平成29年1月以後適用開始予定となります。
どのように要件が変化したのか、論点ごとに整理してみましょう。
領収書のスキャナ保存はどう緩和されるの?
1)スマホやデジカメでの保存も可能になる
現在、領収書等の書類の読み取り(電子化)にあたっては、固定型スキャナ(原稿台と一体となったスキャナ)を利用することが要件とされています。
しかし改正後は、スマートフォンやデジタルカメラ等の機器で、領収書等の読み取りが可能となります。
これによって、領収書等を会社に持ち帰って電子化する必要がなくなり、領収証を受領した人はスマホの写真機能を使って、いつでも、どこでも、電子化することが可能になります。
従って、出先でデータを社内のパソコン等に転送し、経費精算することも可能になります。
ただし、書類を受領した場合は、書類を受領した者がその書類に署名を行った上で、3日以内にタイムスタンプを付す必要があります。
2)適正事務処理要件も大幅に緩和
スキャナ保存制度を導入するためには、社内チェック体制の整備等が求められますが、一部の要件が緩和されます。
【1】相互けん制要件の緩和
現在、経理担当者等は、従業員から受領した領収書等の原本の内容を確認した後に、スキャンする必要があります。
改正後は、従業員がスマホ・デジカメで受領・スキャンした領収書等について、経理担当者等は画像の確認を行えばよく、必ずしも原本を確認しなくてよいことになります。
【2】定期検査要件の緩和
現在、書類のスキャンは経理担当者等が行う必要があったため、必然的に原本保管は、経理担当者等がいる事業所で行うことが要件になっておりました。
しかし改正後は、各支店保管でも認められることになります。
【3】小規模企業者(従業員数、製造業20人以下、サービス業5人以下)の特例
小規模企業者の場合にあっては、税理士による定期検査を行うことで、相互けん制要件が不要とされます。
これまでは、領収書等の受領者、経理担当者、検査担当者の最低3名の人員が必要でしたが、今後は、従業員と税理士の最低2名で足りることになります。
中小企業にとってコストダウン効果が大きい
営業で外を回る社員にとって、領収書等の電子化は、機動力の向上につながるため、大きなメリットがあります。
更に、中小企業の経営者にとっては、経理作業を大幅に圧縮し、コストダウンを図るチャンスともなります。
ぜひ、来年の本格的な施行に向けて、領収書等のスキャンを導入検討してみては如何でしょうか?