社員に有給休暇を十分に消化してもらうことは、中小企業の経営者に大きな負担として覆い掛かります。しかし、有給休暇を取得させない方法など、もはや今の時代にはありません。ギリギリの人員や経費でやりこなしているとしても、見方を変えて、工夫をこらし、社員に有給休暇を取得してもらう必要があります。その方法をご紹介したいと思います。
キレイ事で済まされない有給休暇の取得問題
社員の有給休暇制度をどう組み立てるかは、事業主の方、特に中小企業の事業主の方にとって大きな問題の一つです。
特にアベノミクスの元で厚生労働省が、社員に年間で5日分の有給休暇を取得させる義務を企業に課す方針を持っている以上、今後もこの問題は経営者にとって避けられなくなっています。
そもそも認識するべき点として、有給休暇は、労働基準法に定められた「労働者に与えられるべき権利」です。
一定の要件さえ満たせば、パートタイマー、アルバイト等を含めたすべての労働者が、有給休暇の権利を行使できます。
「パートタイマーやアルバイトには、有給休暇なんて無い」と信じている事業主の方もいますが、それは明らかに誤った認識となります。
しかし、中小企業にとって有給休暇の負担が大きくなっていることは、キレイ事で済まされない現実です。
多くの事業主の皆さんが、ギリギリの人員や経費でやりこなしているのが実情ではないでしょうか?
社員に有給休暇を取らせない方法なんてない!
私もこれまで、
- 「うちみたいな零細企業で有給休暇まで取られたらとてもやっていけない」
- 「あんな働きが悪い社員に有給休暇なんて」
といった事業主の方々の声を聞いてきました。
個人的には事業主の方の気持ちもわからないではありません。
しかも、有給休暇は、従業員数1万人を超える大企業に勤務する従業員も、従業員数1人の会社の従業員も、全く同じ日数の有給休暇の権利が、与えられるのです。
「うちみたいな零細企業では・・・」と事業主の方がいくら言っても仕方がない事でしょう。
とはいえ、よく事業主の方から「従業員に、有給休暇を取らせない何かいい方法はありませんか?」と言われるのですが、私は、はっきり「ありません」と答えます。
有給休暇は社員へ積極的に周知させるべきです
では、実際に事業主の方は有給休暇について、どのように企業として取り組んでいく必要があるのでしょうか?
最も簡単で100%正論の答えは、従業員が自由に有給休暇を取得できる位の人員を確保し、それでも企業として経営が成り立ち、利益を上げていく事ができる企業になることです。
もちろん、最終的にはこのような状態を目指すべきでしょうが、「そんなの、何の解決策にもならない」と、多くの方は言われることでしょう(苦笑)
そこで私は、従業員の方に対して、有給休暇の取得を会社が認めている事を、徹底周知するようにアドバイスします。
ただし、その時に会社の現状等を説明し、
- 「決して従業員の数が十分ではないので、有給休暇を取得する場合は、数日前に前に申し出て欲しい」
- 「長期の有給休暇を取得する場合には、会社が繁忙期でない時期を選んで取得して欲しい」
- 「他の従業員との取得の時期を調整して欲しい」
等の、会社としての要望も言うようにお勧めしてます。
人間というものは不思議なもので、権利を頭ごなしに否定されてしまうと、大きな違和感、抵抗感を持ちますが、権利を認めてもらった上で協力を求められれば、必ずしも自分の権利ばかりを主張しなくなるところがあります。
有給休暇は取得していいので、ただし、その取得の方法や取得時期等については、従業員の方も会社の現状を考慮にして欲しい、というスタンスで対処していただくのです。
確かに、権利ばかりを主張してくる従業員もごく一部出てくるでしょうが、多くの従業員は必ず節度ある対応をしてくれます。
従業員にとっては確かに有給休暇も大切でしょうが、会社が存続して行かなければ、それはそれで大きな問題だからです。
有給休暇をプラスの面で捉えていく時代が到来
最後になりますが、有給休暇は、必ずしも事業主の方にとってマイナス面だけしかないわけでありません。
有給休暇によって、従業員がリフレッシュし、かえって生産性が上がることが十分考えられるからです。
「うちの会社は有給休暇も取らしてくれない」 と不満を持ちながら働く場合と、 「うちの会社はちゃんと従業員の権利を考えてくれる」 と思って働く場合とでは、どちらが会社にとってメリットが大きいでしょうか?
有給休暇の権利を認めつつ、その取得には協力してもらうというスタンスで望んだ方が、従業員の不満も少なくなり、トラブルの発生も抑えられるため、労使双方がメリットを享受できます。
「理想論的過ぎる」という意見があることは承知していますが、有給休暇が法律で定められた権利という事実は絶対に変わりませんし、これから権利は更に強化されます。
時代の流れに逆らえば、ちびっとの節約を狙ってたはずが、お上にペナルティを与えられて、会社ごと社会から抹殺されるリスクが大きくなっているのです。
見方を変え、工夫を重ねながら対処して行く必要があるのは、自明の理です。