試用期間について、「試用期間だから能力や適応性がないと思えば、どんな場合でも正社員に登用しなくても良い」と考える経営者の方は多いようです。しかし試用期間であっても、社員との雇用関係は発生しています。試用期間内であれば、正社員に登用しないのが、事業主に与えられた当然の権利と思ってしまうことのリスクを、本日は解説いたします。
試用期間なら首切りは当然という誤った認識
試用期間中に、能力、技術力や適応性などを判断し、問題がなければ正社員に登用する、このような形で試用期間は利用されています。
では、試用期間の何が問題であるかと言いますと、先述の通り「問題がなければ正社員に登用する」という事は、逆を言えば「問題があれば正社員に登用しない」というリスクが雇われる側に生じます。
もう少し言い方を変えますと、経営者にとってみれば「問題があればその人を正社員に登用しなくても良い」と言う事となります。
確かに試用期間中に能力や適応性に問題があれば、正社員に登用しなくても良いのは事実です。
正社員に登用しない場合は合理的理由が必要
しかし、ここで注意しなければならないことがあります。
試用期間だから能力や適応性がないと思えば、どんな場合でも正社員に登用しなくても良い、と思ってしまう事です。
つまり、試用期間内であれば、正社員に登用しないのが、事業主に与えられた当然の権利と思ってしまう事です。
実は、これは誤った認識なのです。
正社員に登用しないと言うことは、従業員を解雇すると同じ事ですが、たとえ試用期間であっても雇用関係は発生しています。
試用期間中は、確かに従業員の能力、技術や適合性などを判断する期間ですが、正社員に登用しない場合には、それなりの合理的な理由が必要となります。
この「合理的な理由」は、多くの事業主の方が考えているより、はるかに厳しいものです。
試用期間というものは、通常の正社員を解雇するよりは、解雇が認められ易いのですが、それ相応の合理的な理由が必要なのです。
試用期間だからと言って、むやみに正社員に登用しなくても良い訳ではないのです。
試用期間の安易な解雇は不要なトラブルの元
この点を認識せずに、安易に正社員に登用しない、つまり解雇してしまうと大きなトラブルに発展してしまいます。
不当解雇と認められれば、民事訴訟で最終的には3〜6ヶ月分の給与を支払わなければならない場合もあります。
原則的には、
- 労働者側に重大な規律違反が認められる
- 客観的な資料で労働者の能力が著しく劣ると認められる
- 会社の経営状況に鑑みて解雇が極めて合理的
と言ったことについて、要件を満たしている必要があります。
試用期間の社員についても、人を雇用することの重さはさほど変わらず、解雇の厳しさが、通常の正社員を解雇する場合に比べれば多少緩いだけという認識を持ちましょう。
試用期間は、無条件で従業員を正社員に登用しなくても良い期間ではなく、正社員に登用しないならそれ相応の合理的な理由が必要な雇用期間なのです。