麻生太郎財相の「現政策下で利益を出せてない企業は、よほど運が悪いか、経営者に能力がないか」という発言が波紋を呼んでいる。反して帝国データバンクが発表した「円安関連倒産」動向調査では、円安関連倒産累計が301 件に到達し、前年同期の110 件に対して 2.7 倍と急増する。年末年始のリスクを踏まえ、取引先の信用調査を念のためしておきたい。
麻生財相の失言「利益出ないのは運が悪い」
麻生太郎財相の12月6日(金)に長野県松本市で行った、街頭演説における発言が波紋を呼んでいる。
現政権の実績を強調するために「我々は結果を出しており、企業は過去60年間で最大の利益率となっている。利益を出していないならば、よっぽど運が悪いか、経営者に能力がないかだ」と語ったからである。
麻生財相の言うとおり、上場企業の純利益は2015年3月期も昨年を上回ることが予想されている。また、国全体では企業の倒産数は過去24年で一番の低水準となっている。※1
自民党の政策は「円安により外貨を日本に還流し、結果として内需が増えた後増税を行って財政を健全化する」ことが基本方針となっているため、麻生財相の視点からは至極まともに聞こえるが、果たして真に受けて良いものだろうか?
失言の裏にあるのは過去最多の円安倒産
日本は典型的な内需先進国である。少し古い資料になるが、経済産業省のまとめたデータによると、日本のGDPにおける外需の割合は17%しかなく、内需が80%を超える産業構造の国だ。※2
これらのうち、中小企業に円安が容赦なく襲っている。
裏付ける証拠として、帝国データバンクが12月4日(木)に発表した「円安関連倒産」動向調査では、11 月の「円安関連倒産」は 42 件判明し、3 カ月連続で最多を更新したことが示されている。※3
更に2014 年 1~11 月の「円安関連倒産」累計は301 件に到達し、前年同期の110 件に対して 2.7 倍と急増しているのだ。
4月の消費税8%への増税により内需の消費欲が衰え、結果として12月8日(月)に発表された2014年のGDP速報値も、年率-1.9%とマイナス成長を見せた。
麻生財相には「円安」の裏側にあり苦慮する内需企業に対しても、一定の配慮を伴うコメントが同時に必要だったかもしれない。
年末年始の倒産が増える 取引先によく注意
円安により大部分の中小企業は何らかのデメリットを負っている。
特に年末年始は中小企業にとって、年末商戦の在庫の積み増しや販促費の増加が増えるため、キャッシュの積み増しが必要となる時期でもある。
自社が大丈夫だったとしても、取引先の財務状況によっては、ちょっとした入金のズレで相手が倒産するケースが十分にありうる。
忙しい時期であるからこそ心配な取引先があるならば、信用調査などチェックを怠らぬようにしておきたい。
※1 自民党HP
https://special.jimin.jp/political_promise/achievements/index.html
※2 経済産業省「日本の産業を巡る現状と課題」
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100225a06j.pdf
※3 帝国データバンク特別企画 : 第2回 : 「円安関連倒産」の動向調査
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p141201.pdf