東京の台所・築地市場が11月に豊洲へ移転します。今回の移転で場外にある飲食店は豊洲へ移転せず、そのまま残ることになっています。東京ドーム5個分の広大な敷地面積を誇る市場が移転することで、築地の飲食店や近隣の街(銀座や東京)に、どのような影響が与えられるか考えてみたいと思います。築地の移転は日本全国で起こる変化の縮図であり、経営者の教科書となります。
築地市場の移転後に場外は大きな変容を遂げる
『2016年11月に築地市場が豊洲に移転をする』
このニュースを聞かれて、今まであんなに栄えていた築地市場はどうなるのか?不安と寂しさを感じられた方も多いのではないでしょうか?
今回の移転は場内だけとなっており、場外にある飲食店等のある商店街については、そのまま残るということになっています。
しかも現・築地市場の敷地面積は東京ドーム5個分とも言われ、その跡地に何が果たしてくるのか?逆に楽しみな方もいると思います。
跡地には、『築地魚河岸』と呼ばれる施設が建設され、仲卸業者約60店舗(93区画)が出店予定とも言われています。
また、カジノの話や、野球場やサッカー場等のレジャー施設が出来上がるとも言われています。
今回は、今後の場外飲食店等の商店街の動向について、考察していきたいと思っております。
更に私達がこれから築地で起こる変化に、何を学べるかについても触れていきます。
築地市場は銀座や東京との導線があって栄えた
最初に、なぜ築地市場(以下:築地)は栄えたのかという疑問を、エリアマーケティングの視点で考えていきたと思います。
日本最大の市場の販売額を誇る築地は、新鮮な魚介類を東京や関東だけでなく日本全国に供給するという意味で、非常に栄えてきました。
当然、飲食店や卸業者も多数、仕入れに行き、築地自体がお客様を呼び込むマグネットとして働いていました。
また、築地が観光名所として機能しており、日本人観光客だけでなく、外国人観光客まで引き寄せる施設でした。
そのマグネットに隣接する場外の商店街は導線上、非常に好立地に恵まれており、関連して売上を上げてきたのです。
しかし、実は、築地の場外はそれだけで繁栄してきたのではありません。
築地市場の反対側、つまり日本最大のショッピング地域である『銀座』を半径1km圏内に控えており、銀座にも隣接しているという点で非常に大きなメリットがありました。
また、交通の中心である東京駅についても半径2km圏内と、実は、市場以外にも大きな集客に繋がるマグネットとなる施設は、そのまま残るということになります。
つまり、築地は築地市場単体で集客が出来ていると考えるのではなく、銀座や東京駅、築地市場でお客様が回遊することで、売上が上がる立地となっていると考えられます。
築地市場が移転した後も、そのまま場外のほとんどの飲食店等はそのまま残るということですから、店舗が集合することで起きるマーケットのポテンシャルは、残るということです。
つまり、変化として考えられることは、次の2つであると思っております。
- ①築地市場=新鮮な魚介類が食べたり、購入したりすることができる
⇒このブランドイメージが豊洲に移転されるということ
- ②築地市場・場内に存在したマグネットが新施設のマグネットに変わり、客層が変化されること
ではないかと考えております。
市場無き後の築地繁栄に求められる2つの要件
上記のことを踏まえると、築地市場に今後求められることは2つであると思います。
1)従来の『築地市場』ブランドから新たなブランドの確立
これまでは、場外の飲食店に対して「市場で取れたて」という視点が強く、非常に新鮮な点が差別化として築地市場にあったと考えられます。
そのため、その素材を活かしたという点で寿司屋が多く、この築地には点在していました。しかし、それが豊洲に移転するとなると、新たな付加価値をこの築地に付加しなくてはならないと思います。
当然、新設される場内には仲卸業者も入居しますが、マグネットとなる新施設のコンセプトと併せて、店舗の商品も変化しなくてはならないものと思います。
つまり、周辺環境の変化によって、各店舗が大枠の中ではブランドコンセプトを併せて、各店毎の特色を差別要因として出していくことが重要であると思います。
築地の新ブランドの確立と同時に、周辺の店舗もそのブランドに併せて商品を変化させ、街全体で新しいブランド化を図る必要あると思います。
2)客層の変化への対応
これからの新施設の内容によっては、当然、来店される客層に変化が出てきます。
この変化に従って、商品、価格、販路、販促、店舗イメージを変えていかなければならないと思っております。
つまり、新しい客層にニーズに対応するお店づくりが要求されてくると思います。
築地の変化は私達にとっての大きな勉強材料
地域環境の変化は、この築地だけでなく、日本全国どこでも影響が大なり小なり必ずあります。交通量や人口の変化もその一つです。
仕事柄マーケティングのご支援を多数させて頂いておりますが、企業や店舗が生き残るには、経営者を先頭に『変化への対応』が出来る必要があります。
そのため、築地でこれから起こる変化を他人事と考えずに常に、その変化にアンテナを張り、変化への対応を機敏に見届けていきたいものです。
筆者としては、『築地市場』については、この大きな環境の変化に対応して、各店舗、企業が変革を起こすことで、必ず活気がある場所であり続けることと信じております。