女性だけが離婚後6カ月間は再婚できないとする民法の規定は、「法の下の平等」などを定めた憲法に違反すると求めている裁判で、12月にも最高裁の憲法判断が示される見通しです。「女性にだけ再婚禁止期間が設けられているのは差別だ」という論点に注目が集まりますが、実際に733条の制度趣旨を冷静に見ると争うべき論点は「子供のためにどうなのか?」という部分に集約されるべきだとわかります。
女性のみに再婚禁止期間設ける民法第733条
女性だけが離婚後6カ月間は再婚できないとする民法の規定は、「法の下の平等」などを定めた憲法に違反するとして、岡山県に住む30代の女性が国に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁大法廷は、11月4日午前、当事者の意見を聞く弁論を開きました。
12月16日頃にも大法廷として初めての憲法判断が示される見通しです。
記事によると、女性は2008年に元夫と離婚しました。 当時、現在の夫との間の子を妊娠していたが、女性のみに再婚禁止期間を設けた民法733条の規定により、離婚後の6カ月間は現在の夫と再婚できませんでした。
これにより女性は精神的苦痛を受けたとして、国に対し165万円の損害賠償を求めて11年に岡山地裁に提訴し、民法第733条は「法の下の平等」を定めた憲法14条や、結婚についての法律は両性の平等に基づいて制定されるとした憲法24条に反すると訴えています。
しかし、12年10月の一審・岡山地裁と、13年4月の二審・広島高裁岡山支部の判決はともに『民法第733条は離婚後に生まれた子の父親をめぐって争いが起きるのを防ぐために設けられた規定で、合理性がある』などとして請求を退けたという経緯があります。
この訴訟で取りざたされているのが「女性にだけ再婚禁止期間が設けられているのは差別だ」という論点です。
しかし根本の問題として民法第733条が「誰のために作られたものか?」という制度趣旨はあまり語られていません。
この点を本日は解説したいと思います。
民法第733条は子供の父親を明確に決める法
民法第733条【再婚禁止期間】とは、 女性は、夫と死別したり、離婚したり、結婚を取り消されたりした日から6カ月経過した後でなければ、再婚することはできないことを定める条項です。
ただし、女性が夫と死別したり、離婚したり、結婚を取り消されたりする前からすでに妊娠していた場合は、その子供を生んだ日から再婚しても構わない。という規定も定められています。
つまり民法第733条は、岡山地裁と広島高裁が判断したように、生まれてくる子供の父親が誰の子供であるかが分かるようにするために規定されたものです。
なお、昨今芸能ニュースでも話題になっている、大沢樹生氏と息子さん(実母・喜多嶋舞氏)の親子関係が否認された点は、その子が婚姻後200日目に生まれていて『200日を過ぎていない』点が最大のポイントになりました。
民法第722条は、婚姻して200日を過ぎてから生まれた子は、この婚姻による夫の子と推定され、婚姻終了から300日以内に生まれた子は、別れた元夫の子と推定されると規定し、最高裁は、DNA鑑定よりもこの規定が優先すると判断しているからです。
このことから見ても、「子供の父親を明確化する」ことが、民法第733条を含めた法の趣旨であることがわかります。
もしも、第733条の再婚禁止期間を無視した婚姻については、再婚者のほか、再婚の配偶者や前婚の配偶者も取消しを請求することができる(ただし、前の婚姻終了から6ヶ月経った場合、また女性が再婚後に妊娠したときは取消しを請求することはできない。)とも別の条文で規定されています。
民法第733条の主役・子供不在の理論は不毛
女性は、「当時、現在の夫との間の子を妊娠していた」と主張していますが、それは、おそらく出生後に確定した事実でしょう。
医学的には、妊娠中でも親子関係を調べることはできると思いますが、この再婚禁止期間は、生まれてくる子のために設けられている規定であり、女性差別を論じるような規定ではありません。
子供のことを考えて、賛成反対の意見を表明したり、再婚禁止期間の長短を変える議論は兎も角、夫婦別姓や男女差別に関する議論を大々的に展開するのは、今回の裁判に限って言えば論理が飛躍しているかもしれません。
今後は最高裁大法廷の判断と、おそらく添えられるであろう裁判官の個別意見に注目が集まります。
法治国家である以上、下された最高裁の判断を『正』として、次に進むことが大切です。