参院選の風雲児として、大きな注目を浴びた東京選挙区立候補の三宅洋平氏。彼の選挙活動において、街頭演説は「選挙フェス」と呼ばれ、首都圏の駅前などで多くの若者を集めた他、その演説動画は拡散され、非常に話題を集めました。しかしフタを開けてみれば結果は9位と惨敗。彼の選挙活動に欠けていたものは何だったのでしょうか?
参院選・三宅洋平氏のパフォーマンス実らず結果9位と惨敗に終わる
先日の参議院選挙は投票率も54.70%と低く、大方の予想通り与党が無難に過半数を確保して終わりました。
選挙権が18歳まで引き下げられたことが、メディアではしきりに取り上げられましたが、特にその影響はなかったという結果でした。
さて、その中でSNSを中心に異常とも言える盛り上がりを見せた候補者が、東京選挙区の三宅洋平氏でした。
ミュージシャンらしいセンスで街頭演説を「選挙フェス」と呼び、首都圏の駅前などで多くの若者を集め、その演説動画は拡散され、非常に話題を集めました。
完全な泡沫候補だったはずが、窪塚洋介氏や一色紗英氏などの有名人も彼を応援するなど、あまりのムーブメントに一部では「ひょっとすると当選するのではないか」との声も上がっていました。
しかし、ふたを開けてみると得票数は約25万票で第9位。
泡沫候補としては健闘した方なのかもしれませんが、選挙としては惨敗です。
ムーブメントは目的を果す1手段に過ぎない
政治的な思想を抜きにして、個人的にはこれだけの短期間にムーブメントを起こし、若者をあれだけ動員し、しかも25万票以上もの支持を集めたことは素晴らしいことだと思います。
一方で、外野から見ていて、客観的な感想としては「選挙で勝つ」という最終目的を達成することを、あまり重視していないようにも映りました。
それは中小企業でもよく起こりがちな「手段の目的化」の典型的な動きに見えたからです。
三宅氏はこれまで政治に関心のなかった若者にターゲットを絞り、「選挙フェス」というキャッチーなネーミングと聴衆を引き込むパフォーマンスで、一部からはカリスマ的な人気を集めました。
そう、ここまでは問題ありません。
むしろ、「本来無関心だった人たちに関心を持たせる」その手法に拍手を送りたいぐらいです。
しかし、選挙は「街頭演説に何人集めるか」「SNSで何回拡散させるか」という勝負ではありません。
どんな手法を用いようが、どんなに盛り上がりを見せようが、すべては「投票所で三宅氏に投票してもらう」という結果を出すためのプロモーション手段に過ぎません。
ムーブメントを起こすことは目的ではなく、目的を果すための1手段に過ぎません。
どんなに素晴らしいCMを作ったとしても、消費者の購買行動に繋がらなければ、それは作品としては評価されても、プロモーション手段としては駄作なのと一緒です。
世の中には政治に詳しい人たちの方がむしろ少ないでしょう。
小難しい話よりも、分かりやすい話に耳を傾けたいと多くの人は思うものです。
ましてや、若者は政治など自分たちには関係のないものだと思っています。そういう洞察のもと、自らが見据える層へターゲットを絞る戦略は間違っていません。
問題は、「投票してもらう」という最終的な行動を、三宅氏陣営がしっかりと見据えてパフォーマンスを展開していたのかということです。
目的を見据えない打ち手はすべてゴミ手になる
街頭演説に人を集める、SNSで拡散させる、そうして段々とムーブメントになり、選挙戦終盤には大きな盛り上がりを見せる…
盛り上がったのは良いのですが、今回の東京選挙区での当選ラインは約50万票でした。ところが三宅氏は、今回集めた25万票の倍に及ぶ票を集めなければいけなかったわけです。
私個人の感想としては、三宅洋平氏の選挙活動は、どうも盛り上がることが目的化してしまったように見えたのです。
大事なのは、選挙日に投票所にいって三宅氏に一票を投じてもらうことですが、三宅氏陣営の今回のムーブメントはその最後のコンバージョンのところまでをゴールに見据えていたと言えるのでしょうか。
自分たちが、誰とどんな勝負をしているのか、ライバルと対峙した時にどうすれば勝てるのか、という目的を見据えない打ち手はすべてゴミ手です。
三宅氏が選挙に勝つことは特に重視せず、今回のムーブメントを起こすことで満足しているなら問題ありませんが、もし本気で当選したいと思っていたのであれば、その手法以前に「勝つ」ためには、つまりは投票してもらうためには何が必要なのか、という部分を支持者1人1人の行動まで落とし込んだところから、逆算した行動戦略が必要です。
本気で当選しようとして選挙戦を戦うのであれば、おそらく最初の一手から違ってくるはずです。
盛り上がっているときほど、最終的な目的を見失ってしまいがちですが、手段はどこまでいっても手段です。
ビジネスにおいても同じ原理を見いだせます。
私達は、自分たちがなんのために行動しているのか、この打ち手は目的を達成することに本当に貢献するのか、という問いかけを常にする必要があるのです。
(注)今回の記事は三宅氏の主張や政治的なスタンスを批判する意図は一切ありませんので、その点はご理解ください。