舛添都知事の私的流用問題と青年会議所の裁決
東京都・舛添都知事の正式な辞任日が、明日に迫っています。
彼の政治資金に関する私的流用問題について、ニュースを目にしない日はありません。
辞任が決定した後に、「公私混同で使った額が小さいのに、辞任は行き過ぎ」という論旨の意見も見かけるようになりました。
彼の資金流用が、法的・倫理的にどうだったか?という問題はさておき、私達にとって一番身近なところで「公益活動」を行う場所として、青年会議所があります。
青年会議所は全国各地に組織されており、若い世代の経営者が集って、地域ボランティアなど「公益活動」を行っていらっしゃいます。
そこで今回は、青年会議所の経費を巡って行われた、一つの裁決事例を紹介したいと思います。
公益に資する活動を行う人にとっては、一つの指針となる事例だと思います。
青年会議所の交通費等は給与に該当するか?
平成27年7月に決着した裁決事例の概要は、以下の通りです。
青年会議所に所属する会社の代表は、会議に出席するための交通費等を損金の額に算入して、法人税等の確定申告を行いました。
一方で税務署は、交通費等は代表者への給与だとして、法人税等の更正処分等(追徴課税の請求)を行ったのです。
青年会議所の会員は、税務署の判定は「不当だ」として、全部の取り消しを求めました。
「青年会議所の活動で利用した交通費」が経費になるのか?否か?で、真っ向から2者が対決した結果はいかに?
判決の鍵は「法人税法34条」でした。
この条文の「法人がその役員の活動について負担した費用が、事業遂行上」必要か否か?が争点となったのです。
裁決では、青年会議所における会議の目的は「公益的な活動であり、特定の個人又は法人の利益ではない。」とされたのです。
会議に出席したことによって、たとえ新たな顧客を得たとしても、それは副次的な効果に過ぎず、それをもって交通費が事業の遂行上必要なものとは認められませんでした。
最終的に、青年会議所の会議に参加する交通費等は、経費ではなく「代表者に対する給与に該当する」とされたのです。
政治家に求められる経費計上基準も同じでは?
つまり、事業活動の一環として支出する費用については、その全てが損金となるわけではなく事業関連性及び必要性が、社会通念上、客観的にみて証明できるかどうかがポイントとなりました。
このことは、個人事業者の必要経費に関する考え方にも、同様のことが言えます。
所得税法27条②には、必要経費に算入すべき金額は、
- 所得を得るために直接要した費用の額及びその年における販売費
- 一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用
とされています。
あくまで事業の直接の関連を持ち、事業の遂行上直接必要なものに限られ、かつ、その判断は、費用を負担する事業者の主観で判断できるものではありません。
過去の公表裁決事例でも、司法書士業を営むものが支出したロータリークラブの入会金とについて、そのロータリークラブの活動が、司法書士としての「業務」を行う上で直接必要はないとして必要経費に該当しないと示した事例もあります。
このような「公益に資する活動」に対する民間への措置を見れば、客観的な判断といっても、厳しい基準で判断されることは自明の理であり、同じ基準で政治家の「公益に資する活動」に関する経費計上も、平等に判断していただきたいところです。