近年業界の再編が進むコンビニ業界。ファミリーマートとユニーグループの経営統合は、昨年末の一大ニュースとなりました。そしてもう1つの再編の目玉として、昨年から取り上げられているのが、ローソンとスリーエフの業務提携に関する動向でした。ところが両者は交渉が締結されるであろう土壇場で、その発表を延期しました。どんな要因が両者の提携を阻害しているのか考えてみましょう。
ローソンとスリーエフの業務提携が延期になる
近年業界の再編が進むコンビニ業界。
ファミリーマートとユニーグループの経営統合は、昨年末の一大ニュースとなりました。
そしてもう1つの再編の目玉として、昨年から取り上げられているのが、ローソンとスリーエフの業務提携に関する動向でした。
ところがローソンとスリーエフの資本業務提携は、年末に契約という流れになっていたにも関わらず、土壇場の12月30日に延期が発表されました。※1
ここには、大手コンビニ各社の業務提携の目的と、4位以下のコンビニ各社との目的の違いが、大きな要因として存在します。
今回は、コンビニ業界の再編に関する、「大手と中小企業の目的の違い」という視点から、ローソンとスリーエフの業務提携延期の要因を考察したいと思います。
コンビニ業界はシェア争いに突入している
そもそもコンビニ業界はなぜ業界再編が行われるようになったのでしょうか?
コンビニエンスチェーンは、従来は24時間営業を行う小売店ということで便利さを追求し成長を行ってきました。近年では、公共料金の代理受領やATM等の取り扱いにより、地域のインフラとして姿を変えてきています。
また、コンビニ業界の商圏は、昔半径2km等と言われていた時代ですが、現在では半径500mと商圏範囲が狭くなってきており、キメの細かい出店が必要となってきています。
こうなってくると、そこかしこにコンビニエンスストアが立地しているため、過当競争が起きます。
過当競争に勝ち抜くためには、絶対的なシェアが必要になります。
つまりコンビニ業界の競争においては、出店数がものを言う時代となってきているのです。出店数の多いチェーンの方が、市場認知も早く、シェアを確保できるのです。
その点でもセブンイレブンは、従来からドミナント出店を行い、店舗数は業界NO.1を誇ってきましたので、2位以下のローソン、ファミリーマートがセブンイレブンに追いつくには、早急な店舗数の拡大が必要なのです。
逆に4位以下のチェーンは、業界大手3社に店舗網を商圏に張られることで売上が大幅に悪化し、チェーンとして経営難に陥っています。そこで彼らにはローソン、ファミリーマートと業務提携を行うことでこの経営難をクリアしてきたいという狙いが生じます。
これら大手・中小間で全く異なる2つの視点により、業務提携の動きは加速しているのです。
しかし、ここで問題があります。
大手2社としては、自社のシェアを上げることが目的の業務提携であるため、出来る限り自社看板に変えていきたい思いは当然強くなります。
反対に、4位以下のチェーンは、自社看板は守りたいという思いで両者の思いが反し、業界再編交渉が難航しているのです。
実際にスリーエフは、当初ファミリーマートとの業務提携の話もありましたが、自社看板が存続できないということで、交渉が進まなかった経緯があります。
フランチャイズ構造が業界再編の難航要因に
更にコンビニ業界の再編は、コンビニ本部だけの問題ではありません。
コンビニ業界は、フランチャイズ展開を行っており、各店舗は独立事業を行っているのです。
当然、業界の再編により、看板替えが行われるのであれば、現在まで競合チェーンであった近隣店舗が、同看板のチェーンに変わる可能性も高い状況となります。
コンビニ業界のオーナーからすれば、同看板程、差別化できないことはありません。
その点で、フランチャイズオーナーの理解が得られる形をとるための交渉は非常に厳しく、業界再編を難航させる要因となっているのです。
コンビニ提携最大の目的はスケールメリット
このように提携が難航しても各社が再編を諦めないのは、再編後のメリットを見越しているからです。
どのようなメリットかというと、「スケールメリット」の面で大幅なリターンがあると、各社は見込んでいます。
スケールメリットとは、量が集まれば、原材料や商品も良いものが安く仕入れることが出来たり、物流コストを低減できる等、効果が非常に大きいものです。
フランチャイズの醍醐味とも言えるのが、このスケールメリットです。
実は、この再編にはセブンイレブンの存在が大きいと思います。
ローソン、ファミリーマート各社が抱える一番の課題は、セブンイレブンとの平均日販の格差です。
平均日販の格差はチェーン全体の売上の差に繋がるだけでなく、各加盟店オーナーの売上・利益の差として現れます。この差が埋まらない限り、業界1位のセブンイレブンには勝つことが出来ないのです。
そこで業務提携を行い、共同仕入れや共同商品開発を行うことで、品質や粗利を改善することがメリットとなるのです、実はここにも一つ障害があります。
セブンイレブンは、商品の品質が高いといった声がお客様から多数得られていることは有名ですが、それは全てオリジナル商品を自社工場で作っていることから実現ができています。
品質を上げようとすれば、ローソンはオリジナル商品であるローソンセレクトを中心とした品質改善や、粗利改善を行うことが必要になります。
実際に業務資本提携を行ったポプラには、ローソンセレクトが導入されています。
スリーエフも業務資本提携するとすれば、その流れを受けることは予測できることです。
そうすると、スリーエフの拘り(こだわり)である、自社ブランドの維持がどこまで出来るのか?という点が、交渉を難航させる要因であることは推測されます。
両者はいずれ合併するが熾烈な駆け引きが続く
業界再編の目的を検証することで、今回はローソンとスリーエフの業務資本提携延長の要因を推測しました。
筆者は、両者はいずれ業務資本提携を行うと考えておりますが、両社共に業務資本提携の目的と、自社ブランドの維持の駆け引きが行われると考えられます。
今後も、両社の動きに着目していきたいと思います。
参考:
※1 スリーエフ 資本業務提携の締結時期延期に関するお知らせ
http://www.three-f.co.jp/ir/pdf/20151230gyomuteikeiteiketsuenki.pdf
Photo credit: Yuya Tamai via VisualHunt / CC BY