「ルビンの盃」と呼ばれる多義図形は、人間がある情報を手にした時に、どのような情報処理過程を経て行動を起こすのか解明する、認知心理学(ゲシュタルト心理学)を説明するのに良く使われるものです。
新年会は、しばし事業やプロジェクトの話題があがるため、社員それぞれで驚くほど異なる意見やモチベーションを発見できるイベントであり、経営者にとっての判断材料を収集する最適な場所と言えます。
同じ絵を見ても描かれた対象の解釈は異なる
皆さんは以下の絵をパッと見た瞬間、何に見えましたか?
人の顔が対面している図に見えた方、盃(さかずき)のシルエットに見えた方、それぞれいらっしゃらなかったでしょうか?
では、次の絵を見た瞬間、皆さんは何が描かれていると感じましたか?
この絵は盃に見えた方が圧倒的に大多数だと思います。
ただし、中には、この絵をパッと見た時に、人が対面している図に見える方もいらっしゃるはずで、それも正常なことです。
なぜなら2つの絵は同じシルエットで描かれており、独自の感覚や知覚・記憶を元に、個々人が絵の中で見つけるものは異なるからです。
ご存じの方も多いかもしれませんが、上にあげた2つの絵は「ルピンの盃」と呼ばれる多義図形で、人間がある情報を手にした時に、どのような情報処理過程を経て、行動を起こすのか解明する認知心理学(ゲシュタルト心理学)を説明するのに良く使われるものです。
新年会の席で社員の意見がバラバラに別れたら
年始の挨拶で、社員それぞれが所信表明をする場を経営者が作るかもしれません。
バリバリの具体的な目標を立てて邁進する旨を発表する社員もいるでしょうが、中には不安を覗かせたり、何をしたら良いかわからずチグハグな社員もいることでしょう。
挙句の果てには、「別に…」とまでは行かなくても、あまりやる気が見えない社員もいます。
その後、会食はお酒も入って盛り上がり、売れない商品や、あと一歩何かが足りないプロジェクトの話に移っていきます。
ある人は「予算が足りない」と訴え、もう一方は「人が適材適所に配置されていない」と不満を告げます。
ダンマリを決め込んで、冷めた目でその光景を見ているだけの社員もいることでしょう。
ともすると辟易としてしまうこの状況ですが、先程触れたルビンの盃について思い出してみると、これは極々普通の状況です。
生い立ちや親からの教育環境、立場の違いや収入の違いを通じて、社員それぞれに独自の感覚や知覚・記憶が生じているからです。
生活習慣が多様化した時代を生きる上で、なおさらこの事実に私達は目を向ける必要があります。
異なる意見の中で最終的な判断は経営者が司る
このような状況にあるとき、経営者はどのようにその場で有益な時間を過ごすことが可能でしょうか?
まずは、思い思いに語る社員たちの、それぞれに異なる意見を吸い上げるだけ吸い上げましょう。意見を述べない人には個人的に質問を投げかけ、今行われている論争に対して意見を問うてみましょう。
ただしどれだけ様々なヒントが出ても、最終的な答えはそこにありません。最終的に利益を出すための答え(判断)を決めるのは、経営者の役割だからです。
自らが下そうとしている答えの前に、個々の社員がどのように具体的な役割を担えるかを見極め、会社が向かう方針に向かって彼らがどのように最適化して行動できるのかを想定する。
新年会の場で沸き起こる論争は、その判断を下す上で経営者にとって絶好のチャンスと言えます。異なる意見をどんどん吸い上げましょう。
画像参照:ウィキペディア