10月半ば、ファミリーマートとサークルKサンクスを抱えるユニーグループとの“統合”が遂に発表されました。これにより、今月から2016年9月頃までを目処に「サークルKサンクス」の看板はなくなり、全てファミリーマートの店舗になります。今回の統合は消費者にとっても大きなニュースですが、加盟店にとっても大きな影響を与えるニュースです。内部や店舗で何が起きうるのか専門家が検証しました。
ファミマがサンクス吸収・加盟店へ大きな影響
10月半ば、二ヶ月ほど前の話になりますが、ファミリーマートとサークルKサンクスを抱えるユニーグループとの“統合”が遂に発表されました。
これにより、今月から2016年9月頃までを目処に「サークルKサンクス」の看板はなくなり、全てファミリーマートの店舗になります。
イチ消費者として、サークルKやサンクスのファンだった方にとって、慣れ親しんだコンビニブランドが消滅する今回のニュースは衝撃的なものと捉えられています。
しかし消費者以上に大きな影響を受けるのが、本部社員はもちろん、吸収される側のコンビニ加盟店です。
実際に加盟店にはどのような影響が出てくるのでしょうか。今回は、私自身の経験をもとに、可能な限りで紐解いてみます。
私が経験したコンビニチェーンの経営統合
実は私自身も、かつてコンビニチェーンに社員として在籍していた際に、経営統合を経験しました。
それは2010年に行われた、ファミリーマートとam/pmの経営統合です。
am/pmとは、かつて関東、関西、九州地域に出店していたコンビニチェーンです(関西、九州地域はエリア・フランチャイズ)。
比較的後発であり、店舗数も1,200ほどの中堅チェーンでしたが、全地域とも都市の中心部に出店をしていたことから、他のチェーンがかなり意識をしていました。
私は2006年、am/pmに中途入社しました。当時から本部の経営は芳しくなく、本格的に悪化したときにはローソンやファミリーマートが統合の数年前から、am/pmにアプローチをしかけていたと言います。
最初、am/pmとの基本合意を取り付けたのは、ローソンでした。
私がいた研修センターにも毎日ローソンの社員が立ち入り、統合に向けた会議を重ねるようになりました。
ただ、その中でもオーナー研修は通常どおり行っていたことから、一人のトレーナーでしかない私はその中に入ることはできず、どうなるかわからない中でオーナー研修を担当する毎日でした。
しかし、ローソンとの統合は破談に終わります。
最終的にam/pmの統合を実現させたのはファミリーマートでした。
ファミリーマートとの統合に向けて、大筋の流れや実施の時期が発表されていきました。
am/pm本部がファミリーマート本部に吸収される合併となることから、チェーン名もファミリーマートに2か年計画で統一。加盟店から質問を受けた時に答えるためのQ&A集も作られました。
統合が発表されると、最も驚き困惑するのは、間違いなく加盟店だと思います。
本部でも、社員への賃金カットに始まり、退職勧奨(と言ってはいけないのかもしれませんが、今思えば、それに近い状態だったと感じています)や複数回に渡る希望退職、直営店事業の会社分割などが発生しました。しかし、それ以上にam/pmオーナー達の気持ちは穏やかではなかったようです。
「これからどうなっていくのでしょうか」「ファミマの業務も覚えなければいけない」という話は賛成、反対の意見とともに、私の元にも多く寄せられたのですが、ダントツで多かったのは「オリジナル弁当はファミマになっても残るのでしょうか」という不安の声でした。
am/pmに加盟されたオーナーの中には、普段は冷凍保存しておき、加熱して利用者に提供するオリジナル弁当のファンが数多くいたこともあって、その商品がなくなることを最も恐れていたのです。
また利用者からも絶大な支持を集めていた商品だけに、「もしあれがなくなってしまうのならば、ファミリーマート加盟へのメリットを見出せない…」と嘆くオーナーもいたほどでした。
これはam/pmならではの影響だったのかもしれませんが、長年親しんだ商品やサービスがなくなってしまうことは、加盟条件(主に金銭面)や変わる店舗オペレーションへの不安以上に大きな打撃だったようでした。
また、ファミリーマートとの経営統合の基本合意直前に加盟されたオーナーが1組だけいて、決して悪いことをしているわけではないのに、そのときばかりは平常心を保つのがとても苦しかったことを覚えています。
研修の最中で私が「なぜam/pmに加盟したんですか?」と質問したことに対し、「数あるチェーンの中で、最も将来性を感じたから加盟した」と答えたオーナーの言葉は、今でも私の心に大きく刺さっています。
そして2010年3月、ファミリーマートとam/pmは統合。およそ2年かけて、am/pm店舗はファミリーマートへ改装されていきました。
中には閉店した店舗もありましたし、閉店こそしなかったものの、オーナーが加盟を続けないことから止むを得ず直営化した店舗、交渉に多大な時間がかかった店舗もありました。
ファミリーマートオペレーションを学ぶための研修も特設会場を作って対応するなど大忙しで、中にはこれまでよりも簡素化された機械操作もあったものの、使い慣れていた機能がなくなって、戸惑う姿も多く見られました。
私も2010年7月からはファミリーマートの店舗研修を担当するようになりましたが、やはり戸惑いは隠せず、朝から晩まで先輩トレーナーにくっついて、オペレーションの隅から隅までを確認する日々が続きました。
オーナーへの影響で考えられる3つのポイント
以上、私の経験から経営統合に伴うオーナーの影響について話してまいりましたが、その動きはとても複雑ですし、確実かつ慎重に進める必要があります。
他にも進めていく上で、様々な影響があると言えます。
1.フランチャイズ契約の結び直し
加盟チェーンが変更になることから、前チェーンの加盟直後であってもフランチャイズ契約の結び直しが発生します。
しかし、そもそもチェーンによって異なる本部へのロイヤリティー(指導料)を統一していくことは容易ではなく、サークルKサンクスでは、サークルKよりも徴収割合が少なかったサンクスのオーナーから反発を買い、未だにチェーン統合を果たせていません。
それが本部だけでなく、加盟店の体力も消耗していく原因の一つになっていました。
また、全てのオーナーが看板替えできるとは限りません。先述の統合でも、いわゆる元本割れを起こしていた加盟店など経営条件に適さなかったオーナーは、移転や閉店を余儀なくされるというケースもありました。
2.商品知識や店舗オペレーションの総入れ替え
扱う商品やサービスが変わるため、再度研修を受講し店長資格を取り、店舗運営にあたる必要が生じます。
加盟10年以上が経過していたオーナー夫妻が、まるで今回初めてコンビニをやるかのように、新しいレジや発注端末に戸惑う。そのような姿を見ても、新たな知識・オペレーション習得は簡単なものでないのは明らかです。
3.モチベーションの維持が難しい
先述の内容も含め、経営統合に関する動きで、店舗の経営・運営はバタバタになります。そのような中で、モチベーションを維持することはかなりの困難を極めます。
また、今回はオーナーへの影響を中心にお伝えしてきましたが、本部の社員でも相当の動揺が生じます。
特に、先輩や後輩の社員が退職勧奨にあう、あるいは自主的に辞めていく、というのは決して喜ばしい旅立ちではなく、その本部社員のモチベーションが、加盟店にも大きく影響することは避けられないでしょう。
また、再び再編が起こるのではないか…という不安もぬぐえません。
本部の運営上手く行かねば加盟店の離反もある
今回のファミリーマートとユニーの経営統合は、am/pmの買収時と違って、
- 対象となる店舗数が圧倒的に多い
- 共同の持ち株会社が設立され、ファミリーマートとサークルKサンクスが傘下として入る
形になります。
これは、2001年のサークルKとサンクスの統合ニュースの時と同じ形です。
サークルKサンクスのときは結果的にチェーン統合が果たせず、加盟店が本部を見限り、ローソンやセブンイレブンなど上位ブランドへ変更することも避けられませんでした。
今回はスケールメリットを生かしつつ、確実にチェーン統合を実施することができるのか…。他のチェーンの動きなども活発化していく中、今後もコンビニ再編の動きから目が離せません。
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(社)東京都中小企業診断士協会 フランチャイズ研究会所属
社会保険労務士法人プレミアパートナーズ
安 紗弥香
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