銀行や銀行員に対して多くの中小企業経営者は、「晴れの日に傘を貸して、雨の日に傘を取り上げる」「融通が利かない」と嫌気しています。しかしながら、特に地方銀行は、銀行がこれまでの様に保障や担保、決算書等に依存しすぎず、しっかりとその事業の将来性を判断する「事業性評価」を行うことを金融庁から迫られています。銀行を味方につけるのが、容易な時代がやってきました。
銀行を良く思う経営者はほとんど存在しない
経営者の方は、銀行員についてこんな風に思っている場合が多いのではないでしょうか?
- 「晴れの日に傘を貸して、雨の日に傘を取り上げる」
- 「融通が利かない」
- 「弱い者いじめ」
2年前に大ヒットしたテレビドラマ「半沢直樹」に出てくる大和田常務のようなイメージですね。
自分が銀行にお世話になるほど困っていなければ、
- 「銀行員が来ないに越したことは無い」
- 「用がある時は(お金借りたいときは??)こっちから出向くよ」
というスタンスの方も多いはずです。
ところで自分が銀行とそこまで関わっていないのはもちろん、銀行員が訪ねてくる回数が減った方もいらっしゃいませんか?
理由は様々ですが彼らは決して、
- 「あなたみたいな小さい会社に構っている暇がない!!」
- 「もっとでかい会社を相手にしてるんだ!!」
とは考えていないようです。
銀行員の現状は多忙とリストラでてんてこ舞い
なぜ銀行員が会社に来ないのか?理由は単純明快で、彼らも忙しいからです。
現在は、銀行で生命保険や損害保険、投資信託等を販売しているのはご存知の方も多いですし、それら多岐にわたる商品を売るための知識や資格取得も必要になってきます。
また、業界再編で店舗統合やリストラでマンパワーも減らされてきています。特に地方銀行ではこの傾向が顕著に現れています。
そうなるとどうしてもお客様を回る時間が削られてしまう、という悪循環に陥っているのが現状のようです。
これは銀行に限らず、どの業界でも同じことが言えます。
それでは、銀行が全く融資に力を入れていないかというと、そうでもありません。
何と言っても銀行の本業は融資ですから、有力な取引先には積極的に融資を行いたいと銀行員は常に考えています。
それに対して、その企業は有力な企業かどうかの判断は、会社に足繁く通って情報を掴む必要があるのに、その時間がなかなか取れない。
彼らもなかなかうまく行きません。
事業性評価で銀行員の融資基準が大きく変わる
そんな銀行員達とうまく付き合う上で、直近のキーワードとなる施策があります。
それは「事業性評価」という施策です。
事業性評価とは、銀行がこれまでの様に保障や担保、決算書等に依存しすぎず、しっかりとその事業の将来性を判断することを示した指針です。
金融庁が、平成26年に「日本再興戦略」の一環として地方銀行に対して、中堅企業・中小企業・小規模事業者が成長することを支援するよう要請したものです。
先述の「半沢直樹」で言うと、半沢直樹は伊勢志摩ホテルのキャッシュがなくなり存亡を掛けたピンチの時に、会社の将来性を「良い」と判断し、巨額の融資について決済を銀行へ下ろさせました。
結果として、笑福亭鶴瓶の息子が演じる若社長により、会社は見事に再生されました。
このような例が更に増えることを金融庁は望んでいます。
でも、金融庁がそう言っているからっていきなり顧客回りの時間が生み出せるわけでもありません。
ここに中小企業の大きなチャンスがあります。
事業性評価を活かして銀行に自ら頻繁に行こう
売上高5億円未満の中小企業で、事業計画書を作っているところは殆どありません。
カッコよく作る必要はありませんが、誰が読んでも分かりやすいように自分の言葉で事業計画書を作ってみましょう。
そして、最低今後1年間のお金の流れをまとめた表を作ってみて、こちらから銀行を訪ねてしまいましょう。
毎月毎月その予定表に対してどれ位達成しているかを資料を持って報告に行くのです。
月1回の訪問をルーティンにしてしまいましょう。
なぜなら金融庁からのお達しで「事業性評価」に基づく融資を銀行は求められているため、銀行はあなたの会社の情報を欲しているからです。
そんなことをしている中小企業はほぼありません。
それだけで貴方の会社は銀行にとって印象に残るしっかりした会社だと思われます。
銀行と頻繁に会う時に気をつけるべき2つのこと
この定期訪問で、銀行員の友人から聞いた注意点も2点ほどご紹介します。
1)銀行へ行く際は専門家に丸投げせず自分も行く
銀行への融資相談をされる企業の中には、税理士さんやコンサルタントさんが一人で来るケースがあるそうです。
これは辞めた方が良いようです。これをやるくらいなら、全く来ない方が良いと思っている銀行員もいるみたいです。
なぜなら、プロが作った資料はカッコよく出来ていますが、税理士などの専門家に手順を丸投げする社長さんは、その資料を全く理解していないケースが多いからだそうです。
銀行員にとって、それらの資料は絵に描いた餅でしかありません。
専門家が同行しているくらいは大丈夫ですが、銀行員はやはり社長の生の声を聞きたいようです。
2)情報は良い部分も悪い部分も包み隠さず話す
情報は包み隠さず出してほしいようです。
銀行に会社の弱みを見せると、一気に心象が悪くなると思っている経営者の方が多いようですが、銀行は強みはもちろん、弱みも知りたいのが現実です。
銀行は多くの取引先と周辺情報を持っていますが、更にそれを欲しています。協力できるようなら、良い他の商談相手を紹介するのも1つの手です。
これまでと違った価値観で融資を行うことに迫られている銀行と、うまく付き合って自社に有利な融資をゲットしましょう。