日本のコンビニエンスストア業界で覇権を握る企業といえば、セブン-イレブンです。店舗数こそ今月15日に経営統合を発表したファミリーマート・ユニー連合に越されたものの、1店舗あたりの日商ではトップを独走しています。セブン-イレブンが業界の覇者たる3つの秘密を、コンビニエンスストア業界のプロが解説してくれます。時代の変化に対応し顧客ニーズに応え続ける姿勢に学ぶものは多いはずです。
他社を圧倒 セブン-イレブンの絶対的な強さ
まず、この記事を読む前にやってみていただきたいことがあります。
パソコンやスマートフォンなどで「セブンイレブン 強さ」と入れて検索をしてみてください。そうすると、なんと約64万件ものデータがヒットします。
その中身を見ていくと、1日の売上(日商と言ったり、日販などと言ったりします)や商品開発力が高いこと、OFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー:店舗経営指導員の呼称)のサポート力などがクローズアップされています。
あるいは消費者目線で「商品がおいしい」「接客がいい」と書かれているブログ記事などが出てきます。また、有名コンサルタントが考察している記事もあります。つまり、セブン-イレブンはそれだけ世間に注目されている企業なのです。
ちなみに、コンビニエンスストアチェーン各社の指標としてよく比較されているのが売上と店舗数です。
今月の15日に経営統合を発表したファミリーマートとユニーの合計店舗数は18,642店舗(平成27年10月時点)と、セブン-イレブンの店舗数(平成27年8月時点で18,092店舗)をわずかに上回ります。
しかし、店舗の1日の売上平均は、それでもセブン-イレブンが668千円(平成27年8月時点)とトップを独走していることが予測されています。
コンビニエンスストアは立地が売上の重要な要素である、と言われながら、実際には各チェーンで格差が発生しているのが事実です。いったいセブン-イレブンの強さはどこからくるのでしょうか…。
セブン-イレブンが有する強みの秘密は3つ
今回は、セブン-イレブンの強みの秘密について、インターネット上に転がるキーワードの検索数を添えながら検証してみたいと思います。
1)セブン-イレブンのご飯がおいしい(約91万件ヒット)
おにぎり、お弁当などに加え、アイスクリームやパン、お菓子など、幅広い食品ラインナップにおいて「おいしい」と言われ続けるセブン-イレブン。
これだけ消費者から「おいしい」という声を集められる秘密は、全国に165ある専用工場でこだわりをもって商品が作られていることに加え、メーカーに対しても品質に対して妥協を許さない開発への姿勢があるからだと言われています。
また、商品名がストレートでわかりやすく、年代を限定しない、ということも挙げられます。他のチェーンが比較的凝った商品名にして販売している中、セブン-イレブンの商品名はとことんシンプルなものになっています。
シンプルな商品名にどのような効果があるかというと、中身や味がわかりやすい、想像しやすい、ということが挙げられます。梅なら梅、チャーハンならチャーハン、というように、誰が見ても想像ができるものばかりなのです。
だからこそ、年代を問わず手に取りやすく、定番化しやすいのです。逆に凝った商品名だと、一部の客層に限定されてしまったり、トライアル購入にとどまってしまったりします。
2)セブン-イレブンの変化への対応(約45万件ヒット)
鈴木敏文会長が話す有名な言葉に「変化への対応」というものがあります。
高齢化社会、単身者や共働き世代の増加に伴い、商品やサービスへのニーズも変化しています。その変化に対応せずしてお客さまの真のニーズは掴めないし、企業の継続的発展もない、というのが言葉の趣旨です。
実際にセブン-イレブンが取り組んできたものとしては、商品開発や改良はもちろんのこと、日常生活に必要なものを、近くの店で時間をかけずに購入したい、というニーズから生まれたサービスが多々あります。
例えば、
- コーヒーを日頃から持ち運ぶ客層へアプローチした「セブンカフェ」
- 「セブンプレミアム」に代表されるプライベートブランドの確立
- 書籍やCDなど店舗にないものでも買えて受け取れるネット通販サービス「セブン-イレブンネット」
更に今年の11月1日からは、リアルとネットを融合させたオムニチャネル「omni7(オムニセブン)」も本格スタートします。
多忙を極めるビジネスパーソンや、遠出が難しい主婦層や高齢者がコンビニエンスストア、中でもセブン-イレブンをさらに気軽に利用するための積極的なしかけです。こうした変化への対応を欠かさず続けてきているからこそ、セブン-イレブンの独自性が際立っているのです。
3)セブン-イレブンのOFC(約31,500件ヒット)
セブン-イレブンでは、加盟店の経営指導、アドバイスを行う指導員がつきます。彼らは通称「オペレーションフィールドカウンセラー(以下:OFC)」と呼ばれ、他のチェーンでは「スーパーバイザー(SV)」や「ストアアドバイザー(SA)」などに相当する役割を担っています。
OFCは、オーナーが経営初心者であっても、セブン-イレブンのオペレーションはじめ、店舗運営や事業所経営についてノウハウを直接的に提供してくれる、頼りになる存在です。
そのスーパーバイジングができるようになるまで、セブン-イレブン本部の社員は2年~3年の年月をかけ、店舗業務や加盟店指導に必要な数値分析、コミュニケーションを学び、実践していきます。
コンビニエンスストアでは、どのチェーンも毎週のように新商品が発売されます。また、1年を通じて店舗勤務を経験しないと、季節のイベントや商品の傾向は掴めません。そのため、長い期間をかけてでも、オーナーの生活の基盤であるコンビニエンスストア経営をサポートしていく存在として、育成されていくのです。
ここも、あまり外からは見えませんが、セブン-イレブンの大きな強みになるところでしょう。
そういえば、私がかつてディズニーストアにいたころ、セブン-イレブン出身の上司と一緒に仕事をする機会がありました。その上司は、セブン-イレブンのOFCとして、かつて加盟店に指導をしていたように、私に対しても様々なノウハウを教えてくれました。
一番面白く、また私がコンビニエンスストア業界に転職するきっかけになった言葉として、「ケーキ屋を見ろ!」というものがありました。これは、ケーキ屋は鮮度が落ちるのが早いため、日々気温や天気、周辺のイベントなど情報収集を行い、ケーキの製造、発注を行っているのだそうです。
つまり、同じように外的要因に売れるものが左右されるコンビニエンスストアでも、ケーキ屋の動向を継続的に見ていれば、ある程度の傾向が掴めてくる、というものでした。これが今でも記憶に残っており、私の行動の礎にもなっています。
時代の変化に対応し顧客ニーズに応え続ける
まだまだありそうなセブン-イレブンの強みですが、時代の変化に対しシンプルに対応、そしてお客さまのためならとことんこだわる。という背景が見えてきました。
コンビニエンスストアチェーンは、時代の変化に対し、積極的に対応していかなければ、あっという間に置き去りにされてしまうシビアな業界であると感じます。
その中でセブン-イレブンが常にナンバーワンであり、オンリーワンでいられるのは、まさにお客さまの変化していくニーズに対して「当たり前のことを徹底する」というところにあるからなのです。
ぜひ、皆さまもセブン-イレブンに足を運ばれたら、どのような工夫があるのかを見つけてみてください!
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(社)東京都中小企業診断士協会 フランチャイズ研究会所属
社会保険労務士法人プレミアパートナーズ
安 紗弥香
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