日本だと使われることが少ない検索エンジンBing(以下:ビング)が、アメリカでグーグルを猛追してシェアを増やしています。アメリカではグーグルとアップルが手を組んでグーグルに対する包囲網を築きあげつつあります。日本でもウィンドウズ10の普及に伴い、ビングを利用するユーザーが増える可能性が考えられます。これからインターネットをビジネス活用する際は、グーグルのみならずビングにも気を使う必要が生じています。
米国ではビングがグーグルを検索シェアで猛追
米国の検索エンジン市場調査会社“comScore”が2015年7月に発表した調査で、米国での検索エンジンシェアはグーグルが65%、Bing(以下:ビング)陣営が33%という結果が発表されました。
2013年の時点でビングの米国におけるシェアは18%程度しかなかったこともあり、これは非常に衝撃的なニュースです。(2013年グーグルシェアは66.7%)
これを例えてみれば「インターネット共和国」という国の人口が100万人とした場合、18万人しか人口のいなかった都市がたった2年で倍増に近い33万人の人口を抱える都市に成長したようなものです。
ビングはマイクロソフトの提供する検索エンジンであるため、マイクロソフト関連のサイトでは当然ビングが採用されていますが、2010年以降は米・ヤフーとアップルも検索エンジンとして採用しています。
特にアップルは、アイフォンに搭載しているSiriやSpotlightで検索した時に優先的にビングを採用する仕様を搭載させています。
しかしちょっと待って下さい。皆さんも御存知の通り、マイクロソフトとアップルは犬猿の仲でした。
ビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズは、もともとお互いの製品に対する考え方(パソコンへ求める消費者ニーズのあり方)に相容れないものを感じており、批判しあう仲だったのです。
では、なぜマイクロソフトとアップルは連携し始めたのでしょうか?
グーグルとマイクロソフト・アップルの対立
二社の連携は、2007年にマイクロソフトのビル・ゲイツとアップルのスティーブ・ジョブズが和解をして「共通の敵」に立ち向かうことを宣言したことに端を発します。
その共通の敵とはグーグルのことです。
グーグルは以下のように両者の領域を深く侵食し、対抗する姿勢を見せてきました。
マイクロソフトVSグーグル
- ウィンドウズ⇔CromeOS
- インターネットエクスプローラー⇔Cromeブラウザ
- マイクロソフト・オフィス⇔GoogleDoc
アップルVSグーグル
- iOS⇔アンドロイド
- アイフォン・アイパッド⇔ネクサス
特にグーグルのネクサス(スマートフォンとタブレット)発売から、両者は泥沼の訴訟を繰り返しています。
古参のパソコン市場のスターでありライバルであるマイクロソフトとアップルが仲間だとビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズが気づいたのが2007年で、その仲の良い様子は「Steve Jobs and Bill Gates Together at D5 Conference 2007」という動画から見て取れます。
古い格言でいう「敵の敵は見方」という言葉がまさに実現した瞬間でした。
日本でビングの影響が強くなる前に備える対策
このようにアメリカではマイクロソフトとアップルがタッグを組んで、確実に影響力を強めています。
日本では未だグーグルが検索エンジンとして圧倒的に強い状態ですが、いずれビングの影響力を無視できなくなるでしょう。
それは知らぬ間に訪れるペリー提督の黒船のようなもので、黒船が来航してから準備をしていたのでは刀や槍で鉄鋼船に歯向かうようなものです。
アップルがビングを優遇していることは、iOS9をアイフォンにインストールした方、あるいは最新のアイフォン6S、アイフォン6S plusを使っている方ならすぐにわかります。ホーム画面を右にスライドして出てくるSpotlight検索の画面の一番上にある検索ボックスにキーワードを入れて検索をしてみてください。
私は先程自分の使ってるiOS9をインストールしたばかりのアイフォン6で、ホーム画面を右にスライドして「ダイエット」というキーワードを入れて検索してみました。
検索結果の中段あたりに「BING検索」という欄が出てきて、そこに3件のビングの検索結果が表示されています。
アップルは明確にグーグルではなくビングを優遇しています。
ところでビングで自社のサイトが上位表示されるよう、SEO対策を取るにはどうすれば良いのでしょうか?
あまり知られていないことですが、ビングには以前ヤフーが運営していたYSTという検索エンジンが統合されています。YSTのアルゴリズムと当時のデータが2010年よりマイクロソフトとヤフーが締結した契約によりビングに統合されています。
現在のビングのアルゴリズムは当時のYSTの特徴をかなり持っています。
当時のYSTの特徴は、
- 古いサイトからのリンクが効果がある
- ヤフーカテゴリ登録が上位表示に効果がある
- ヤフーカテゴリに登録されているリンクが効果がある
の3つです。
現在グーグルでは上位表示されているけれど、ビングでは何故か上位表示出来ていないというサイトには、上の3つの全てあるいはいくつかが欠乏しています。
反対にビングでは上位表示出来ているがグーグルでは上位表示していない場合は、クリックされて流入が起きるリンクが不足していること、内部要素(キーワードの書かれ方、コンテンツの独自性、十分な文字数)が弱かったり、アクセスが少ないサイトであることが理由と考えられます。
現在の米国の検索市場ではビングが33%のシェアが有り、グーグルが65%ということはすでにビングはグーグルの半分にまで成長しているということです。
フェイスブックがどちらに着くかも大きく影響
これまで完全に無視してもよいほどだったビングのシェアは、思わぬ援軍であるアップルの存在により再び陽の目を浴びつつあります。
無料で配布されているウィンドウズ10の日本語版にも、もうじき日本語版のコルタナというパーソナルアシスタントが実装されます。コルタナはユーザーからの音声やテキストによる質問に対して、様々な情報ソースから答えを返します。コルタナによるウェブ検索は当然自社のビングが採用されます。
アップルのアイフォンユーザーが増えれば増えるほど、マイクロフトのウィンドウズ10やコルタナを実装するXboxのユーザーが増えるほど、グーグルの検索シェアは圧迫されます。
更にもう一つ見逃せない第三極の動きも忘れてはなりません。
第三極とはつまりフェイスブックのことです。
フェイスブックがどちらにつくかですが、今のところフェイスブックとグーグルはあまり仲良くありません。
グーグルがまずフェイスブックの真似をしたグーグル+を作ると、反対にユーチューブを真似る動画事業をフェイスブックが始めるなど、対立関係にあるからです。
Webサイト運営者はもちろんですが、現在ビジネスに勤しむ企業の全ては、プラットフォームの対応1つで大きくビジネスの成果を左右される立場にあります。
自社のサービスを求める相手が、御社サービスに付随する特定のキーワードで検索をかけた時に、ライバル企業が数個上に自社サイトを検索表示させるだけで、商談に結びつかないということが日常的に起こっているからです。
上にあげた話はどこか遠くの国で起きている王様同士の合戦ではなく、やがて私達の舞台(事業)にも影響を与えます。グーグル、マイクロソフト、アップル、そしてFacebookの動向を注視し続けましょう。