人間のなんらかの欲求を満たすために絶滅危惧種へと追い込まれた野生動物は多数存在します。中でもサイは、角が漢方薬の原料として重宝されているため、毎年大量に密猟されています。この状況を打開するため、サイを飼育して、角の取引を合法化するという「サイ牧場」の取組が今年8月からスタートしています。あなたは賛成、それとも反対ですか?
人間の欲求を満たすため絶滅危惧種へと追い込まれる野生動物
こんにちは。マーケティングコンサルタントの松尾です。
今年(2017年)11月9日、人気のフリマアプリ「メルカリ」では、象牙製品の出品を禁止しました。象牙製品を禁止商材に加えるという同社の判断は、象牙市場の閉鎖が進められている国際的な動向に配慮したもの。
日本のECでは、2017年7月1日楽天株式会社が、オンラインモール「楽天市場」、およびフリマサイト「ラクマ」での象牙製品の扱いを全面禁止する自主措置を取っていますが、メルカリの措置はこれに続くものです。
ご存知のように、高値で取引される象牙のため、毎年たくさんの象が密猟により殺戮されており、アフリカゾウの場合、昔は2000万頭ほどいたと推定されていたものが、現在は30万頭あまりにまで減っています。象をはじめ、人間のなんらかの欲求を満たすために無残にも殺害されて絶滅してしまった、あるいは絶滅危惧種へと追い込まれた野生動物は多数いますね。
あなたは賛成?反対?「サイ牧場」の狙いとは?
さて、今回は象などと同様、角が高値で取引されるため密猟が拡大し、絶滅危惧種に指定されているサイを救えるかもしれない「サイ牧場」のことをご紹介したいと思います。
サイの角は、漢方薬の原料として知られていますね。その効能は科学的には証明されてはいません。しかし、以前、ベトナムのある政治家が「サイの角でがんが治った」と公言するなど、「効く」と信じられている以上、角に対する需要が減ることはないでしょう。
野生のサイは南アフリカを中心に2万頭以上が生息していますが、毎年1,000頭以上が密猟により殺されているとのこと。放置すればあと20年ほどで絶滅してしまう可能性があります。
このような状況を打開するため、サイを飼育して殺すことなく、角だけを定期的に切り落すこと、そして、サイの角の取引を合法化するという解決策が今年8月からスタートしています。これは、「野生動物の持続的な利用」を図るものであり、結果的に密猟が減れば絶滅も防げることを狙っているわけです。
南アフリカ共和国のクレルクスドルプでは、1500頭のサイが放牧されている「サイ牧場」があります。ここでは20カ月毎にサイに鎮静剤を打ち、角を切り落とします。こうして、サイは命を奪われることなく、時々角を切られるものの生涯を全うできるというわけです。
地球環境に配慮し持続可能な経済成長を目指す要請は今後更に高まる
サイ一頭を殺して得られる角は約8~9キログラム。サイ牧場の場合、サイが生きる40年~60年を通じて累計60~80キログラムが得られるとのこと。同牧場では、すでに6トンの角を保管しており、この8月からオンラインオークションでの合法的な取引が始まったばかりです。
さて、この取り組み、あなたは賛成ですか、反対ですか。
シンプルに考えると、密猟が減る可能性が高いと思われますが、他の類似の取り組みの場合、市場が拡大したことによって、かえって密猟も増加した例もあり、判断は難しいところです。
現代のビジネスにおいては、地球温暖化や野生動物の保護など、地球環境に配慮し持続可能な成長を目指す必要性がますます高まっています。自社ビジネスと直接関係なさそうな世界の動きにも目を向けておきたいものです。
参考URL
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/b/082200106/
Photo by publicdomainphotography on Visual Hunt / CC BY-SA
Photo by Nigel Swales – 2 on Visual Hunt / CC BY-SA