インターネットの普及によって情報がオープンになった現代社会において、消費者は店舗へ来る前に購入商品を既に決めている傾向が強くなっています。自動車業界でもこの傾向は強く、これを受けて日産自動車は大型旗艦店を用意することで少しでも見込み客の「購入検討対象メーカー」となる取組を始めました。私達は皆、消費者行動の変化に目ざとくある必要がありそうです。
来店タイミングで消費者は既に購入する商品を決めている
こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。
インターネットの普及によって、消費者の購買行動は大きく変化しましたね。
最も大きな変化は、営業担当者に会うタイミングが後ろのほうにずれたという点でしょう。
自動車のように高額な製品で、最終的に営業担当者との打ち合わせが必要なものの場合、「インターネット」以前は、比較的早い段階でディーラー店舗に行き、営業担当者に会って製品パンフレットをもらいつつ、詳細な説明を受けていたものです。
しかし、「インターネット」後は、メーカーのWebサイト、メディアサイト、比較サイト、レビューサイトなど、オンラインで豊富な情報が手に入りますので、購入検討初期の段階で営業さんに会う必要ががなくなりました。
しかも、買い手の立場で考えると、早い段階で営業さんに連絡を取ると営業攻勢を受けてわずわらしいのではないかと感じるでしょうし、余計営業担当者と会うタイミングを後ろにずらすことになると思われます。
米国での調査によれば、B2Bのケースですが、営業担当者に会う時点で既に購入商品を決めている人が57%に達するという結果が出ています。これはどういうことを意味しているかおわかりですよね。
競合他社の営業担当者にとっては、このお客さんはすでに営業活動ができない、手遅れのお客さんなのです。この傾向はB2Cにおいてもほぼ同じことが言えると考えられます。
ディーラー店舗に行かなくなった見込み客を大型旗艦店によって囲い込み狙う日産
では、こうした消費者の購買行動の変化に企業はどのような対応を図ろうとしているのか、日産自動車の最近の新たな取り組みをご紹介しましょう。
日産自動車では2017年度から、全国に25の大型旗艦店を導入する計画を持っています。これら大型旗艦店では、扱い車種が限られているディーラー店舗と異なり、全車種が展示されます。
旗艦店開設の狙いは、たいして車に関心のない人も含む見込客に、早い段階で旗艦店に足を運んでもらい、電気自動車や自動運転機能がついた最新車種を実体験してもらうことにあります。
つまり、まだ購入を検討している段階、もっと言えば、検討する前の段階から、興味本位でも旗艦店で日産車に触れてもらうことで、将来的に日産車が当見込客の「購入検討対象メーカー」となることを期待しているのです。
そして、もし日産車の購入を検討したいとなったら、車種や居住エリアに応じて適切なディーラーに紹介し、成約に向けて営業担当者へと橋渡しをする、これが旗艦店の役割です。
同社の調査によれば、10年前は車を購入するまでに平均7-8回はディーラーを訪問していたけれど、現在は平均2.6回にまで減っています。
また、今の消費者が自動車を購入検討する際、いくつのメーカーのディーラーに訪問するかというと、わずか1.53メーカーです。すなわち、ディーラーに訪問するときには、ほとんどそのメーカーのどれかの車種に心が決まっていて、他のメーカーにはもはや興味がなく、他メーカーディーラーの店舗に足を運ぶことをあまりしない。
以前のように、トヨタ、日産、ホンダと複数のディーラーを回っていろいろ見て回るということをする消費者は激減しているわけです。
また、ディーラーに訪問するのは「買う時だけ」という消費者が、71%に上っています。車買おうかな(買い換えようかな)と思ったとき以外は、ディーラーは消費者にとって縁遠い存在となっているんですね。
このような消費者に対して、ディーラー店舗とは異なる役割を持たせ、早い段階から消費者の関心を日産自動車に向けさせようと狙っているのが、大型旗艦店というわけです。
縮小傾向にあるとはいえ日本はまだ重要な市場
自動車業界はグローバル化が進んではいます。
一方、日本市場は縮小傾向にあるとはいえ日本メーカーにとってはおひざ元の重要な市場であることには変わりありません。
日本の消費者の購買行動の変化に対し、各自動車メーカーはどのような施策を打ち出してくるのか、引き続き私もウオッチしておきたいと思います。