市場拡大によって新規参入する会社が増え続けているネット業界。イニシャルコストが低くて、利益率が高く、プレイヤーも増えている。となれば、国税庁もこれに目をつけないワケがありません。実際に国税庁が発表する資料を見ると、ネットビジネスを行う会社への税務調査はどんどん強化されています。ネットビジネスと税務調査の今をお伝えします。
市場拡大するネットビジネスは税務調査の狩場
起業するならインターネットという方は、非常に多いですよね。
実際に私の元へやってくる経理や税金の相談も、インターネット関連のビジネスをしている人からの割合が随分増えたなぁと感じています。
ネットビジネスはお金の初期投資も少なくて済むので、「これからビジネスを始めていこう!」という方と相性がとても良い分野です。
しかし、多くの人がネットビジネスに参入しているといことは「それだけ市場規模が大きくなっている」ということも意味します。
ここ最近は、アフィリエイトやネット販売だけではなく、動画配信(メディア)やビットコイン(金融)など多様な分野に、規模の大小を問わず様々な企業が進出しています。
ドッグイヤー(10年単位で技術革新が起こる)どころか、マウスイヤー(数年もしないうちに技術革新が起こる)の速さで、業界は成長し続けているのです。
こうなると…コワーイコワーイ税務署がインターネット業界に目を配らせることになるわけです。
そこで今日は、インターネットビジネスに参入するならば、税務調査に気をつけろ!という内容をお届けしたいと思います。
国税庁もネットビジネスの税務調査へ力を入れると表明する
それでは、税務署がネットビジネスに目を光らせる理由を詳しく解説しましょう。
前述の通り、市場規模がますます大きくなっているので、ネット関連のビジネスを行う人や、業界全体の売上規模が増えるのは必然。
特にネット関連のビジネスは、「初期投資などの経費が少なくて済む = 利益率が高い」という特徴があるので、「売上があがれば利益も多くなる」というのは誰の目にも明らかなことです。
従って、ネット関係のビジネスには税務署のチェックの目も厳しくなっています。
国税庁のホームページにも、ネット関係のビジネスについては重点的に調査していく方針が明らかになっています。
インターネット取引者に対しては、あらゆる資料情報を収集・分析するなどして、平成28事務年度においても積極的に調査を実施します。
(2017年1月 国税庁HP「インターネット取引を行っている者の調査状況」より)
参考:インターネット取引を行っている者の調査状況(国税庁報道発表記事)
「あらゆる資料情報を収集・分析する」って、ちょっと怖いですよね。
国税庁の強い意気込みが伝わってくるのは、私だけではないはずです。
とにかく、実際の実務現場でも、「ネット関連の情報収集は行っているなぁ」という実感はありますよ。
フェイスブックなどのSNSもチェックされていますしね。
ネット関係のビジネスをしている方は、今後は税務調査も増えてくるかもしれませんので、本当にご注意を・・・。
ネットビジネスは全業種平均と比較して1.2倍の所得申告漏れを起こしている
実際に国税庁のホームページには、インターネットビジネスについて税務調査の統計資料も発表しています。
2016年 国税庁HP インターネットビジネスの調査実績
ネット通販やネットオークションに対する調査件数が多いので、パッと見た感じでは「ネット通販やオークションが狙われているな・・・」と思うかもしれません。
しかし、実際には税務調査はまんべんなく行われているというのがタテマエ。
「調査件数の割合=そのビジネスに携わっている人たちの割合」ということができるんです。
上にある円グラフは調査に入った割合ですが、税務調査に入った後の「所得の漏れ」についても公表がされています。
「所得の漏れ」というのは、要は「申告していなかった利益」ということで、悪い表現をすると「ごまかしていたり間違って処理していた利益」ということになります。
国税庁がわざわざ発表した資料を見ても、税務調査に入られると、
- 全業種:941万円/件の所得漏れ
であるのに対して、
- ネットビジネス:1,164万円/件の所得漏れ
ということがわかっています。
ここで注目したいのは、全業種平均に比べてネットビジネスの平均所得漏れ率が1.2倍以上も多いということです。
つまり、一般的なビジネスに比べて利益の漏れている割合が多いんですね。
税務署にしてみれば「税務調査にはいれば多くの所得漏れが見つかるのではないか?」というターゲットになりやすい業界といえるのですよ。
ネットに詳しい専門の税務調査官も出現した!
更に悲報なのですが、「ネット専門に監視をしている税務調査官」というものも実は存在します。
どんどん新しいビジネスが世の中に広まっていますので、その内容をチェックする税務署も、新しいものに対応できるように必死になっているのです。
まだまだ数は多くはありませんが、調査官の中にも、ネットを活用したビジネスに詳しい人も多くなってきました。
税務調査など税金に関する法律も、新しいビジネスに対応できるように改正されています。
今までは紙ベースでの調査が中心でしたが、法律が変わってパソコンの中のデータについても、税務調査できるようになります。
ちなみに税務調査の対処となるのは、会計ソフトの中のデータだけではなく、メールやチャットなどのデータについても、必要だと判断されれば調査されることになります。
税務調査官には「どういった内容の取引か」ということについて調査する権利(質問検査権)というものがあります。
理由なく調査を拒否することはできないので、「データだから見せなくても平気だろう」と思っていると痛い目を見るかもしれません。
いずれにしても収入があった場合に、きちんと税務署に申告することはとても大事なことです。
バレないだろう・・・と思っていても、税務署はあなたが考えている以上に目を光らせていますよ!