今月の11日に次期米国大統領・トランプ氏の会見が行われましたが、政策の実現性に懸念が広がった結果、失望感によりNYダウが下落したことが報道されています。史上最大規模の雇用を生み出し、国内景気をあげる施策を打ち出したにも関わらず、その内容が市場に嫌気されたのはなぜでしょうか?その理屈を解説します。
トランプ会見は国内景気が良くなる政策を打ち出すも株価は下落
今月の11日に次期米国大統領・トランプ氏の会見が行われましたが、政策の実現性に懸念が広がった結果、失望感によりNYダウが下落したことが報道されています。
トランプ氏は、米国優遇をそもそも唱えており、法人税率を上げ、関税をあげることによって、米国内に産業をとりこもうとしています。
これが中流層以下の層に受け、大統領に当選したわけです。
トランプ氏は記者会見で自らが、「史上、最も多くの雇用を生み出す大統領になる。きちんと結果を出す仕事をしていく」とも述べました。
このように国内景気をあげる施策を打ち出したにも関わらず、その内容が市場に嫌気されたのはなぜでしょうか?
株価が下落する理由を自動車市場で考えてみる
たとえば、会見でも直接触れられた自動車市場の側面から、市場が何を嫌気しているのかを考えてみましょう。
メキシコで生産される自動車は、米国に輸出されるわけですが、これを税金の観点から見ると、トランプ氏は関税をあげる政策を表明しているため、自動車メーカーにとっては不利になります。
一方で、自動車製造工場が現時点でメキシコにあれば、部品がメキシコで製造されたり、逆にメキシコへ部品が輸入されています。
トランプ氏の言いなりになれば、今までコスト削減の一環で海外へ移転した生産拠点を、全て米国に移す必要があります。
しかし、再度の移転には膨大なコストがかかりますし、たとえば、そもそも世界最適地で製造しているトヨタの方法を変えてしまえば、それは自動車購入費用の直接的なコストアップ要因になります。
結果、トランプ氏を支持した米国民が自動車を買う際に、ものすごい高い金額で買わなければならないことになります。
トランプ政策で雇用が増えて給与があがっても、物価も大幅にあがりますので、米国民には何のメリットもないのです。
同じことは米国の自動車メーカーにも言えることであり、実際に、メキシコへの工場の移転計画を撤回したフォードの株価は、12日の株式市場で今年の最安値を記録しました。
トランプ氏の方針転換無くばアメリカの株価は下落しやすくなる
多くの投資家はここまで述べてきたように、トランプ氏の掲げる国内政策が実行されれば、
- 国外から国内への回帰による移転コストと不効率の発生
- コストの消費者価格への転嫁による物価高
- 消費の減退
という流れが起きることを分かっています。
従って、トランプ氏の方針転換が無ければ、将来の米国企業の業績が悪化すると想定するため、結果として株価は下がっていきます。
20日にトランプ氏の就任演説がありますが、そこまでは、1つ1つの発言などによって株価は大きく上下することが予想されます。
ここをチャンスとみて、しかける投機筋はもちろんあるでしょうが、素人にはなかなか手を出しづらい期間となるでしょう。
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