ビッグデータを駆使して将来取り扱う商品を先回りで商標登録せよ!

商標

 「将来取り扱う商品を先回りで検討し、これを見据えた商標登録を行う。」そんなことが出来たら最高だと思われませんか?日々変化し続ける市場ニーズに合わせて自社が将来どんな商品に取り組むか予測することは至難の業ですが、ビッグデータを活用するとこれが可能になります。ITの特許を専門とする弁理士・渡部さんからの報告です。

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変化する市場ニーズに合わせ商標登録するのは至難の業

  将来取り扱う商品を先回りで検討し、これを見据えた商標登録を行う。

 私達は、この問題について4年前から取り組んでおり、中小企業の皆様を対象に商標登録のお手伝いをしています。

 先日の記事、「新たな商標登録の管理制度始まる〜市場ニーズに合わせ企業の負担軽減へ」 でも説明したように、中小企業のおかれる市場は、ニーズの変化が激しいことに加え、下図のとおり創成期から成長期にあることから、事業の内容が変わる度合いも非常に大きなものとなりやすい傾向があります。

新たな商標登録の管理制度始まる〜市場ニーズに合わせ企業の負担軽減へ
 特許庁が、同じ商標をあとから別の商品にも使ったりする場合に商標登録を管理しやすくできるよう、商標制度を整えることが報道されました。新制度では、市場のニーズに合わせて商標を使う商品が増えたりした場合に、今より管理しやすい仕組みとなることが検討されています。

節約社長
 にもかかわらず、中小企業は、大企業のように知財部を設置し、普段から商標登録に関わっているわけではないので、商標登録の内容を見直すのが数年ごとにならざるを得ません。

 従って下記の図にあるように、事業が順調なほど事業の内容が変わりやすく、いつの間にか保護範囲から外れていた!、という事態に陥るリスクが高くなります。
節約社長

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将来取り扱う商品を検討することは可能か?

 このようなリスクも踏まえ、商標の専門家である私達は、できるだけ一番最初の商標登録を取得するときに、将来取り扱う商品まできちんと検討し、提案してきました。

 しかし、検討にはどうしても時間がかかるので、もっと何か効率的で確実な方法はないものかと考えました。

 幸いにも、私達はITの特許を専門としていることから、特許庁が発行する商標登録のビッグデータを活用し、お客様が将来取り扱う商品を分析できないかと研究開発を始めました。

 試しに1年分の商標登録のビッグデータを分析したところ、あることが分かりました。

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ビッグデータは将来扱う商品を見える化する

 例えば、最初の商標登録では「菓子」を指定していた企業が、次の商標登録では、「菓子」だけでなく「コーヒー」まで指定している事例が多数ありました。

 そこで、これらの企業のうち、幾つかの企業について調べてみると、最初はお菓子だけを取り扱っていたが、その後コーヒーも取り扱うようになったことが分かりました。

 なるほど。だから最初は、お菓子にだけ使う商標について商標登録を取得したが、その後取り扱う商品が増え、次はお菓子にもコーヒーにも使う商標について商標登録を取得したという経緯があったわけです。

 研究開発を続けていくと、特許庁が発行する商標登録のビッグデータを分析することで、「菓子」の商標について商標登録を取得した企業が、「菓子」と併せてどのような商品まで商標登録に含めたのかを、事細かに把握することができるのです。

 以下は、商標登録のビッグデータを分析したサンプルですが、「菓子」と併せて指定された商品は、次のようになっています。表中の「件数」は、該当する商標登録の件数を表しています。

節約社長

 この表から、「菓子」の商標について商標登録を取得する場合、「菓子」のほかに、「パン」「サンドイッチ」「ピザ」「ハンバーガー」「ホットドッグ」「中華まんじゅう」「ミートパイ」「コーヒー」「茶」「ココア」などの商品も商標登録に含めると、将来の事業まできちんと考慮した商標登録が取得できることが分かります。

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ビッグデータ活用は商標登録検討の強力な手段

 未来を予測するために大切なことは、出来る限りの「見える化」を行うことです。

 上記の例のように、商標登録のビッグデータから将来取り扱う商品を見える化すれば、中小企業でも、自社のビジョンと照らし合わせ将来の可能性を具体的に検討することができます。

 私達のチームでは、この分析結果を元に、お客様と将来の可能性について検討し、コストも考慮して最終的に商標出願で指定する商品を決めていきます。

 各企業が、変化の激しい市場のニーズに対応していくことを考えると、今後の商標登録では、このように将来取り扱う商品までデータ分析を行い、一番最初にきちんと手当てしていく方法がスタンダードになるでしょう。

 御社の商標登録でも、ぜひ今回ご紹介した手法を取り入れ、将来取り扱う商品を予測し、商標を取ることをお勧めいたします。

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最新情報をお届けします。
弁理士 渡部 仁

新卒で特許事務所に勤務し、生粋の知的財産専門家として20年以上の実務経験を有しています。
2009年に現在の特許事務所を鎌倉に設立し、特許・商標・著作権を専門として地元企業の支援に力を入れています。また、IT・ソフトウェア・ビジネスモデルの特許に強く、特許権の侵害訴訟や外国での特許取得も取り扱っています。
鎌倉商工会議所専門相談員、知財総合支援窓口知財専門家などに従事し、地域の中小企業や行政に対する公的な支援にも数多く携わっています。

知的財産権は、事業を守るだけに止まりません。活用の仕方によって利益を上げる武器にもなり得ます。
すべてのお客様が知的財産を活用して利益を上げ、事業を大きく発展させるという目標に導くことこそが私の使命です。
人との信頼、関わり合いを大切にし、情熱をもって誠実な仕事を心がけて参ります。
記事をご覧いただき、自社の知的財産についてお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

経営者の皆様へ
私たちは、知的財産活用の知識をもつ特許事務所です。
私たちは、地元鎌倉に根ざした特許事務所として、商標登録を取得し鎌倉でブランドを育てる企業を支援しています。
地元企業とのつながりが密接であることから、鎌倉で活躍する企業が具体的にどのような取り組みを行ったか、その取り組みのなかで知的財産をどのように手当てしてきたか、どういう取り組みが成功事例につながり、どういう取り組みが失敗事例につながったのかなど、ビジネスで使える知的財産活用の知識を有しています。
地元企業を支援して得られた知識や経験をもとに、お客様の事業そのものがうまく循環することを最も大切に考え、よりよい循環が生まれるように知的財産権を手当てしています。
このことが、結果として、知的財産を活用してお客様の利益を高めることにつながると考えているからです。

【資格】
弁理士 特定侵害訴訟代理人
第一種電気通信主任技術者
情報処理技術者

【公的な役職 2016年6月現在】
鎌倉商工会議所専門相談員
横須賀市商工相談員
知財総合支援窓口知財専門家
神奈川県特許等取得活用支援事業知財専門家
島根県特許等取得活用支援事業知財専門家
川崎市中小企業サポートセンター知財専門家
神奈川産業振興センター知財専門家
神奈川県商工会連合会知財専門家
日本弁理士会関東支部神奈川委員会副委員長
日本知的財産仲裁センター事業適合性判定人候補者
日本知的財産仲裁センター調停人・仲裁人補助者候補者

【主な講演実績】
2014年 かわさき知的財産スクール 講師
2015年 かわさき知的財産スクール 講師
2015年 経済産業省・特許庁主催の知的財産セミナー 講師
2016年 かわさき知的財産スクール 講師
2016年 神奈川県ものづくり技術交流会 IoTフォーラム招待講演 講師
2016年 経済産業省・特許庁主催の知的財産セミナー 講師

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