アパレルグッズを手がける株式会社うんこ(以下、うんこ社)という会社が、「うんこ」という言葉で商標登録を取得したという報道が話題となっています。際どい言葉、人の目を引くギリギリの言葉を使ったマーケティングは、小さな企業にとって大きなチャンスを生み出しますが、マジメと不真面目の線引きはどんな視点で行なわれるのでしょうか?専門家の解説です。
株式会社うんこが「うんこ」という言葉で商標登録を認められる
「うんこ漢字ドリル」が子供のいる家庭で流行するなか、アパレルグッズを手がける株式会社うんこ(以下、うんこ社)という会社が、商標「うんこ」について商標登録を取得したという報道が話題となっています。
参考記事:こだわりグッズ発売「株式会社うんこ」日本で初めて商標登録
この報道のなかでは、うんこ社が初の商標登録を実現したと報じられています。
何が初なのか。それは「うんこ」という言葉について商標登録を取得したことが歴史上初めてだということです(笑)
初めてというからには、これまでいくつか「うんこ」の商標登録にチャレンジした先人がいたものの商標登録を得られず、今回初めてこれが達成された、というニュアンスのように受け取れます。
過去にも「うんこ」の商標申請は行われていた
そこで、「うんこ」という言葉について過去の出願を調べてみたところ…
やっぱり、ありましたよ。先例がっ!
平成15年に「うんこ」の言葉を含む商標が出願(商願2003-115371)されていましたが、特許庁の審査で認められず、商標登録にならなかったという経過が確認できます。
上記の報道でも、「弁理士からは『出願しても無理だ』と言われていたが、一念は岩をも通した。」とうんこ社のコメントがあります。
際どい言葉、人の目を引くギリギリの言葉を使ったマーケティングは、小さな企業にとって大きなチャンス(もっともピンチを招くこともある)を生み出します。
しかし、どこから商標登録が認められ、どこからが認められにくいラインなのかは、とても判断が難しいところです。
たとえば、この「うんこ」という言葉の場合、特許庁の審査で一体どのような点が問題になるのでしょうか。
商標審査でキーワードとなる「公序良俗」とは
特許庁の審査の項目の一つに、「公序良俗を害するおそれがある商標は、商標登録を受けられない」という決まりがあります。
「公序良俗を害する」ってちょっと難しい言葉ですが、具体的には、「他人に不快な印象を与えるような文字を含む商標」が該当するとされています。
前出の弁理士が「出願しても無理だ」とコメントしたのは、「うんこ」が他人に不快な印象を与えるような文字に該当する可能性が高いと判断してのことだと思います。
しかし、このたび、うんこ社が「うんこ」の商標登録を取得できたのは、「うんこ」が他人に不快な印象を与えるような文字ではないと、特許庁で判断されたからに他なりません。
実際に「うんこ」の審査結果をみても、特に難産だったということではなく、特許庁から指摘を受けず、すんなりと商標登録が認められています。
大真面目なコンセプトと不快感を与えないことの両立が重要
なお、「うんこ」に似た事例(一見フザケたような言葉)を探してみたところ、例えば、次のような商標登録が認められています。
- 「うんち どっさり」(登録4813624)
- 「ゴリラの鼻くそ」(登録4521877)
- 「ボイン」(登録4813624)
- 「チンチン」(登録2357567)
インターネット検索をかけたところ、出願者はいずれも申請した商標にこだわって、大真面目にマーケティングを実行されている会社さんのようです。
保守的な日本の商標制度ではありますが、言葉が事業や商品の理念をアウトプットする上で欠かせないものであったり、消費者へのアプローチに直結するものと解釈できるもの、かつ、不快感を与えないアプローチのものには、意外と寛容なのかもしれません。
貴方が大真面目なら、チャレンジしてみるのも1つの手です。
ただし、公序良俗という審査ポイントがある以上、単なるオフザケな商標が認められ難いことは、大原則として覚えておいていただければと思います。
さて、「うんこ漢字ドリル」の株式会社文響社も、「うんこ漢字ドリル」の出版に先駆けて「うんこ」を出しています(商願2017-022241)。
うんこ社の「うんこ」が先例としてありますし、こちらも大真面目なマーケティング施策の一環としての商標申請ですから、すんなりいきそうですね。