マイナンバー制度の利用範囲を金融などにも広げる改正マイナンバー法が、9月3日の衆議院本会議で可決され、成立しました。これはつまり、政府が国民の資産を正確に把握することで脱税などが把握しやすくなるということです。国民の情報を国が強制的に見ることができるようになることから、懸念を示す声もあがりはじめており、企業も慎重な制度運用を行うための基本方針や取扱規程の作成が急務となります。
マイナンバー法案改正 銀行口座もひも付けへ
マイナンバー制度の利用範囲を金融などにも広げる改正マイナンバー法が、9月3日の衆議院本会議で可決され、成立しました。
10月から国民全員に通知されるマイナンバーを、2018年から任意で預金口座にも適用する改正マイナンバー法が3日の衆院本会議で成立し、マイナンバーの活用範囲が現在決まっている制度より広がり、国による金融資産の監視体制が強化されることになった。毎日新聞 9月3日(木)
平成30年から、銀行などの預金口座にも任意で番号を適用することができるようになるということですが、これはつまり、政府が国民の資産を正確に把握することで脱税などが把握しやすくなる、ということです。
裏を返せば、国民にとっては本来知られたくない情報を、国は強制的に見ることができる、という仕組みが出来上がりつつあります。
制度始まる前の法案改正 目的はどこにある?
それにしても、まだ運用も始まっていないのに、もう改正?という気もします。
「一旦制度が始まれば、解釈や運用、改正法で適用範囲がとめどなく広がっていくのではないか」「人権侵害につながらないか」との懸念を示す人もいます。
また、マイナンバー制度はプライバシーを保障した憲法に違反するとして、弁護士や市民グループが、マイナンバーの使用差し止めなどを求める訴えを全国で一斉に起こす、とも言われています。
運用を始めてみると、次々に問題点が出てきて、前に進めることが難しくなる、という予想から、先に既定路線を引いておこうということでしょうか。
国税庁幹部は「効率化で浮いたマンパワーを、悪質な所得隠しや富裕層の課税逃れなどの調査に回したい」と強調している、といわれますが、くれぐれも弱い者いじめに使われることのないように、お願いしたいものです。
企業の基本方針や取り扱い規程作成は急務
ともあれ、10月になったらマイナンバーの通知カードが送られてきます。
特に中小事業主にとっては、余計な負担が増える、という声もききますが、とりあえずは、事業所としての基本方針、取扱い規程等の作成が求められます。
そして、最も肝心なのは、人の問題。いくら物理的、技術的な環境を整えたとしても、情報を扱う人の意識によって、情報管理が左右されます。
マイナンバーが始まるから、ということではなくて、「それぞれのプライバシーというのは守られる必要がある」ということを社員全体で確認しておきたいものです。