AKB48選挙が先週末行われた。投票総数は昨年の268万9427票を大きく上回り、328万7736票(前年比22%増)にも及んだが、ファンの主な投票権の獲得方法がCDシングルの購入であることから独占禁止法が禁止する「抱き合わせ販売等」にあたるという批判もある。本稿ではAKBの販売手法が抱き合わせ販売にあたる販売手法か考察したい。
第七回AKB48総選挙で指原莉乃が1位獲得
先週末6日(土)福岡市ヤフオクドームで、アイドル・グループAKB48の41枚目シングル「僕たちは戦わない」を歌う選抜メンバーを決定する「第7回AKB48選抜総選挙開票イベント」が開催された。
今年の総選挙では指原莉乃が19万4049票を獲得し、2年ぶり二回目の1位となりセンター位置を確定させた。
投票総数は昨年の268万9427票を大きく上回り、328万7736票(前年比22%増)にも及んだ。
今回の総選挙でも熱烈なファンが複数投票権の有資格者となった。投票権の有資格者となるには11通りの手段があるが、その中でも一番メジャーなのは投票資格権付きシングルを複数購入することである。
実際に最新シングル「僕たちは戦わない」は5月19日発売初日に、AKB48史上最高記録となる147万枚以上の販売を記録した。※1
音楽の流通経路が電子化しCDが売れない時代にこれだけCDがヒットする要因は、「ファンにCDを複数枚買わせようと誘導する手法」によると言われる。一般的に「AKB48商法」と呼ばれる商法だ。
ファンが投票権だけを使って不要なCDを不法投棄する事件が発生したこともあるため、大御所芸能人をはじめ、倫理的な観点で批判の声をあげる人は多い。
AKB商法は独占禁止法に抵触する商法か?
一方でビジネスの側面ではAKB48商法は独占禁止法に抵触するのではないか?と主張する人もいる。
独占禁止法第19条には「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」とあり、不公正な取引方法は「昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号」により16項目が定められている。
そのうち10項目に「抱き合わせ販売等」という項目があり、AKB48商法は以下の条項に反しているのではないか?と言う論旨が展開されている。
- 相手方に対し,不当に,商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ,その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること。
抱き合わせ販売とは、本来の商品・サービスと別に売れにくい商品をセットで抱き合わせて販売する手法である。
AKB48のCD販売手法についてもCDの販売に付随して、AKB48の総選挙投票権を抱き合わせ販売していると考えることが可能だ。
しかし公正取引委員会は2つの商品(サービス)が密接にかかわっている場合は、独占禁止法が定める抱合せ販売に当たらないと見解を示している。※2
AKB48のCDに付随した投票権の配布は、ファンサービスの一環としてCD販売に密接に関連しており、なおかつ複数枚の購入は強制はされていない。
また、あくまでもCD購入に依る投票権の入手は11通りある選挙権入手法の1つであるため、抱き合わせ販売とは言い切れないのだ。
バーター形態の取引あらば必ず法をおさらい
ただしAKB48運営側が自主的に独占禁止法違反に触れる可能性から、その商法を撤回したことがある。
2008年に発売したCDシングル「桜の花びらたち」にメンバー個人のポスターを挿入し、当時44人いたメンバー全員のポスターが揃った人を特別イベントに招待するという企画を打ったときだ。
このパターンは、明らかに売れない商品(CD)をイベントの参加費用(ポスター)に抱き合わせて販売する手法と見なされ、批判とともにCDを自主回収する事態となった。
AKB48商法を批判するのは簡単だが、我々の多くはバーター取引や、それに近い交換条件の取引を経験しているはずだ。
少しでも抱き合わせに該当する疑いがあらば、今なにも起きていないうちに法律の専門家へ相談し、適正な取引を行うことで、会社を危険に晒すリスクを下げよう。
参照元
※1 2015年5月21日 日刊スポーツ紙面より
http://www.nikkansports.com/entertainment/akb48/news/1479728.html
※2 公正取引委員会「独占禁止法に関する相談事例集(平成16年度)
http://www.jftc.go.jp/dk/soudanjirei/h17/h16nendomokuji/h16nendo08.html