スポーツ選手の多くが億単位の巨額年俸をもらいながら、現役引退後に自己破産を経験している。大金を手にしながらお金がなくなる人には共通した特徴がある。「フリー・キャッシュ・フロー」に対する意識が少ないことである。現役時と引退時のフリー・キャッシュ・フローにどのような変化が起こるか解説し、現役時にどのような行動を取るべきかも提示する。
大金を手にしたスポーツ選手がなぜ破産?
スポーツ選手の年俸(年収)がテレビで報道されると、「こんな大金を彼らはどうやって使い切るのか?と疑問に思う方は多いことだろう。
しかし現実にはスポーツ選手の多くが巨額の年俸をもらいながら、現役引退後に自己破産を経験している。
例えば、80年代に虎の4番でヒーローだったあのバッターはもちろん、日本プロゴルフで最多優勝回数を誇るジャンボなスターまで自己破産者となった経験があるのだ。
「スポーツのプレイヤーとして一流でも、ビジネスの素人だから仕方がない」といえば簡単な話であるが、大金を手にしながらお金がなくなる人には共通した特徴がある。
「フリー・キャッシュ・フロー」に対する意識が少ないことである。
フリーキャッシュフローを意識するメリット
キャッシュフローとは、ある一定組織内におけるお金の流れのことを指すが、近年特に注目されているのが「フリー・キャッシュ・フロー(FCF)」だ。
フリー・キャッシュ・フローとは、企業の営業キャッシュ・フローに、企業活動を継続する上で必要な投資キャッシュ・フローを加算した額として把握される。
営業キャッシュ・フローは企業が一年の営業活動で得たお金の総額を表し、通常はプラスとなる。
対して投資キャッシュ・フローは、企業が投資を行うことにより生まれるキャッシュ・フローで、出ていくお金資金が多いため、通常はマイナスとなる。
一流のプロスポーツ選手の元へは現役時代に億単位の収入(営業キャッシュフロー)が入ってくるため、現役時はキャッシュを幾ら使っても資金難に陥ることは少ない。
対して現役を引退後は収入が少なくなり、今までと同じ資金の使い方をしては投資キャッシュ・フロー(例:居酒屋の立ち上げ、ゴルフ場への投資、株・不動産への投資)ばかりが膨らむため、フリー・キャッシュ・フローは悪化し、ついにはマイナスのフリー・キャッシュ・フローになってしまう。
マイナスのフリー・キャッシュ・フローは現役引退後でも最初のうちは、ネーミングバリューで融資を受けて、当座をしのげるかもしれない。
しかし投資キャッシュ・フローを抑えない限り、フリー・キャッシュ・フローのマイナスはどんどん膨らむ。最後には融資も受けられなくなり、自己破産せざるを得なくなるのだ。
フリーキャッシュフローをプラスにする策
ではプロスポーツ選手達はフリー・キャッシュ・フローを引退後も大きくプラスで維持するために、現役時代どのように動くべきだろうか?
- 1)引退後に自立するためのビジネス教育を積極的に受ける
- 2)引退時に向けて自己資金を貯める(現役時に不必要な運用はしない)
- 3)引退後にビジネスを始めるなら現役時に各方面の支援者人脈を作る
- 4)大きなお金を借りる買い物を現役時にしない(キャッシュアウトは小さく)
- 5)小さく始められて、お金の出にくいビジネスモデルを考え実験する
上記5点を現役時代に意識して実行するだけで、引退後のフリー・キャッシュ・フローにはプラスの作用があるはずだ。
プロスポーツに引退があるように、企業も同じビジネスモデルで利益を永続的に出し続けることは難しい。業績の良い時ほどフリー・キャッシュ・フローを意識し、業績が悪化したとしても持ちこたえられる会社を作る必要がある。