日産ゴーン氏逮捕についての気になる5つの点
今週、日産のカルロスゴーン氏が逮捕されました。
ざっくりおさらいすると、
- 報酬の過少申告
- 会社資金の私的流用
という2点について容疑をかけられています。
会計士として監査に関わっている観点から、本件について何個か気になる点がありましたので共有します。
1)逮捕されたが今のところ完全なクロではない
現時点では「逮捕」ですので、「有罪」かどうかは不明です。
おそらく逮捕されたのは、逃亡の可能性が高いと判断されたためでしょう。しかし、彼が簡単に逃亡できるかというと甚だ疑問です。
おそらく、国外に向かい、しばらく日本に来ないことにより、捜査が不利になったり、あるいは思惑通りに捜査が進まないことを、検察側が危惧したのでしょう。
いずれにしても有罪が確定したわけではない点は注意が必要です。
日本では逮捕の報道を大々的にしますが、その顛末がどうなったかは軽視される傾向にあるので、なおさらです。
2)日産からのプレスリリースが簡便すぎる
今回の日産からのプレスリリースはあまりにも簡便です。
参考リンク:当社代表取締役会長らによる重大な不正行為について:日産自動車
プレスリリースのあった深夜に、社長による記者会見がおこわなれましたが、あまりにもプレスリリースの文面が軽いです。相当急ぎだったのでしょうか。
3)監査の目から見える意図的なバイアス
プレスリリースでは確認できませんが、きっかけは内部告発ということです。
ただ、監査を担う人間として言えることとして、有価証券報告書へのゴーン氏報酬の過小記載を、内部担当者が知らなかったはずがありません。
高額報酬を受けとっているゴーン氏が、有価証券報告書に記載する報酬を、わざわざリスクを負ってまで過小記載する必然性も感じません。
また、住宅を無償提供しているという批判についても、グローバル企業のトップの立場に鑑みれば考えうる話です。少し利益が落ちているとはいえ、5,000億円以上の利益を出し続ける企業のトップとして、報酬以外のサポートがあってもおかしくありません。
内部告発はいつでもできたのに、この時期、しかも、会社のプレスリリースと逮捕報道がほぼ一緒ということは、日産は内部調査の過程で警察への情報提供をしていたことになります。
正しくガバナンスが効いていたともいえますが、社内調査発表→警察による捜査、ということでも良いと感じます。この機会にゴーン氏を追い出すという目的バイアスを感じずにはいられません。
4)そもそもゴーン氏の立場が異常
そもそも、ゴーン氏がルノーと日産、三菱自動車の経営者を兼任していることは問題でした。
この問題を誰かがずっと解決しようとしたが、できない中で、今回、たまたま発見された不正がそのきっかけとして使われたように見えます。
5)誰がゴーン氏の後を継ぐのか?
会社公表のリリースを前提にすれば、ゴーン氏には大きな問題があります。しかし、この後、彼が日産を去り、誰が日産を経営していくのか、これはこれで大きな問題です。
まだ、確定的なことは言えませんし、ゴーン氏にも落ち度はありますが、事件のニュースに触れて感じた気になる点は以上になります。
Photo credit: Adam Tinworth on VisualHunt / CC BY-ND