ジビエ料理が今年ブームになると密かに予想され、外食産業でも熱い注目を浴びている。しかし、野生のシカとイノシシの食用部位は、人にも感染する寄生虫に高い割合で感染していることがわかっているため、販売側・消費者側が、政府の発信する規制を順守し、高いモラル意識を持って料理の取り扱い、消費を行うことが重要となる。
流行しつつあるジビエに鳴らされる警鐘
”ジビエ”とは、「ハンターが捕まえた野生あるいは半野生の鳥獣を食すこと」を指すフランス料理の言葉の1つである。
4月6日の読売新聞記事で、”ジビエ”について興味深い研究結果が発表された。
岐阜大学などのグループが調査したところ、「野生のシカとイノシシの食用部位は、人にも感染する寄生虫に高い割合で感染している」ということが分かったのだ。
とは言えジビエは今年ブームになると密かに予想され、外食産業でも熱い注目を浴びている。
今年2月には鳥取で第1回日本ジビエサミットが開催され、全国37都道府県から参加者が集まり、3月にも福岡県で第1回みやこジビエ祭が開催されている。
ジビエを楽しむのはとても良いことだが、その前にジビエ料理を取り囲む現状をしっかり再確認しよう。
徹底的な加熱がジビエを楽しむ必須の条件
現在、ジビエ料理の代表的な食材はシカやイノシシであるが、鳥類など食材は多様化しつつある。しかし、それぞれの食材(野生動物)について徹底的な病原菌に関する調査研究は発展途上だ。
また厚生労働省は「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針」を販売者向けに発表しているが、これはあくまでガイドラインなため、違反しても罰則がない。
ジビエ料理の消費が拡大した時に、「動物の腹部に着弾しないように狩猟をすること」、「食肉処理にあたって内蔵に異常がないかどうかを確認する」、といった手間のかかる規則を、販売者が良心を持って順守することも安全性を握る重要な鍵となるだろう。
では、ジビエを楽しむ消費者側が心がけるべきことはなんであろうか?
ジビエの生食に関する危険性を示す最たる事例は、平成15年に兵庫県で生シカ肉を食べた4名が、6.7週間後にE型肝炎ウイルス食中毒を起こしたことである。
消費者はジビエ料理を食べる時に、必ず火がしっかり肉の中まで通ったものしか食べないと心がける必要がある。中まで火が通れば、いずれの菌や虫も死滅する。
もしジビエ料理を楽しむ機会があれば、まず取り扱い店舗がしっかり衛生管理を行っているかどうかを確認しよう。生のジビエ料理を出す店舗はもってのほかで、加熱されている場合もきっちり加熱できているか、自分で目視確認してから口にするのが賢明だ。
食べ方1つ間違えれば命取り ルールは順守
2012年に牛の生レバー禁止に遅れて、今年2月には豚の生食も禁止される運びとなるなど、動物の生食は近年規制が益々強まる傾向にある。
ジビエ料理や生レバーなど独特の風味がある食材は、一度口にすると癖になるものだ。しかし美味しい肉も食べ方1つ間違えれば命取りとなる。
政府が発信する規制を順守してジビエを楽しもう。