マツダ車は自動車教習所という小さな市場で、初心者にも優しい操作性と、通う若者のセンスに合うデザインを兼ね備えた車として認知され、市場シェア49%を確保している。マツダは、トヨタのような強者が取る同質化戦略に対して、弱者の取るべき差別化戦略で徹底的に対抗しており、ランチェスター戦略実行のお手本と言えよう。
初心者マークドライバーの御用達車はマツダ
毎年この時期になると、初心者マークをつけた自動車教習所の教習車を多くみかける。
現在ドライバーの多くが、教習所で初めて運転する車の多くがマツダ車であることをご存知だろうか。RBBTODAYによると、マツダは自動車教習所で利用される教習車の販売シェアの49%を獲得しているという。
教習車マーケットでは圧倒的なシェアを勝ち取っているのには理由がある。アクセラが、自動車教習所が望むデザインと機能性の良さを両立しているからだ。
デザイン性を重視するヨーロッパで、2013年11月に欧州カー・オブ・ザ・イヤーで日本車で最高位の第2位に選出されたことは、デザインの良さを立証している。
更に身体を自然に伸ばせば、ハンドルやブレーキ、アクセルに身体が届く理想的なドライビングポジションを計算して作られた車は、初心者にも優しい操作性を実現している。
多くの教習所が、アクセラを教習車として導入すると「マツダのアクセラを導入しました!」と声高々に宣伝するほど、アクセラに対する信頼感は大きなものである。
マツダは独自路線を貫きコアなファンを得る
マツダといえば国内自動車メーカーでは、トヨタ・ホンダ・日産に続く4番手の存在であるが、規模では国内ビッグ3には遠く及ばない会社だ。
2014年の国内メーカー別の販売台数シェアは約4%程度であり、一年間の国内新車販売台数(2014年)では、トヨタが1,509,149台を販売しているのに対して、マツダは224,359台と7分の1程度の規模でしかない。
しかしマツダには熱狂的なファンが存在している。その理由は他のメーカーと異なり、マツダが独自の路線を貫く姿勢にある。
多くのメーカーが円高により海外生産へシフトした2000年代中盤から後半に、マツダは採算ベースが厳しいにも関わらず、国内生産率70%を維持し続けた。2010年に当時の山内社長は「為替レートが1ドル70円になっても、60円になっても、広島で自動車を生産し続ける」と宣言。これが今でも強烈なメッセージとなっており、マツダブランドを愛する熱狂的なファンの心を掴んで離さない。
現在でもマツダの国内生産台数は、メーカー中2位の68,287台(1位トヨタ:169,574台/2015年2月)となっている。アベノミクスによる円安転換も功を奏し、海外輸出比率80%以上に達するマツダは、利益の刈り取り時期を迎えている。
また他のメーカーが、2000年代から電気自動車や燃料電池自動車を中心とした車作りを始めたのに対して、マツダは「スカイアクティブ」という独自のプロジェクトを2007年に始め、エンジン、トランスミッション、プラットフォームを全面的に改良し、お家芸である内燃機関の品質も向上させた。
エコカーの開発競争を避けて、マツダが選んだ独自の技術路線により、マツダ車のデザイン性と操作の快適性は、海外でも非常に高く評価されるようになった。ヨーロッパ(特にドイツ)ではトヨタ以上の名声を得ている。
マツダの姿勢はランチェスター戦略の極み
- 1)自動車教習所という狭いカテゴリのシェアでナンバーワンになる
- 2)国産であり続けるブレない姿勢
- 3)エコカー開発競争に参戦せず独自技術を磨き具現化する
マツダのあり方は、トヨタのような強者が取る同質化戦略に対して、弱者の取るべき差別化戦略で徹底的に対抗しており、ランチェスター戦略実行のお手本と言えよう。
折しも直近の決算においてマツダは、営業利益率で国内売上規模第2位のホンダを抜いた。
中小企業の経営舵取りを判断する上で、マツダの取る戦略から学べることは多い。