「節税保険」に金融庁がついに待ったをかける
生命保険各社が「節税」をアピールして中小企業経営者に売り込む保険に対して、金融庁が商品の設計などを問題視し、実態調査に乗り出しました。
参考リンク:「節税保険」実態解明へ 金融庁、商品設計を問題視
現在は合法の節税用の生命保険の商品に対して、ついに金融庁のメスが入ることになります。
駆け込み加入が増えることは間違えありませんが、大きな視点で見ると、これ以外にも各方面に影響が出ることは必須です。
どんな影響が考えられるかご紹介しましょう。
駆け込み保険加入以外に想定される2つの影響
1)保険各社による国債の引受が減る
私の理解では、生命保険会社に対して、政府がこれら商品を作ることによる資金調達のメリットを与え、その見返りとして、国債を生命保険会社が大量に引き受け、国債の安定化に協力をしているという構図が背景にあったのではないか?と考えています。
生保は今回の措置により大打撃を受けるはずで、結果として、彼らは国債の引受を大幅に減らすことも考えられます。
日本の国債はとんでもない水準にありますから、これが暴落し、その結果、利上げとなれば、国家は金利負担すらできず、財政が破綻します。これだけはなんとか避けなければならないはずです。
2)リース商品など同類の節税商品にも余波がある
生保だけでなく、リース商品においても節税商品が広く受け入れられています。
この商品を中心に業績を伸ばし、上場している企業もあります。矛先は節税目的のリース商品にも及ぶでしょうから、影響は甚大です。
本音と建前が大幅に異なる日本の典型事例
保険各社による経営者向け保険は「節税対策」とはいえど、実際にできることは「課税の繰延」が正解で、掛け金に対してはいつか課税されます。
とはいえ、民間保険へ加入する一部の法人だけが、こうした税務メリットを享受するのは当然に不公平です。
しかし、長い間、この実務が続いてきました。
金融庁がこの不公平な制度を問題視することは極めて正しいことだと思います。
しかし、これらの慣行をぶっ壊した後の代案を出さないと、ただ混乱を招いてしまう結果になってしまう可能性が高いでしょう。
日本でよく見られる、本音と建前が大幅に異なっている典型的な事例のような気がしています。