バークシャー・ハサウェイの会長であるウォーレン・バフェットが、米国市場におけるM&A価格が高すぎて今は魅力がない、と株主への手紙でコメントしたことが話題となっています。
ウォーレン・バフェットが米国企業のM&A価格について高いと言及
バフェットの基本的な投資スタンスは、上場企業のうち価値ある会社の株価が低い時に購入し、これを長期保有する、というものです。
バフェットは、今の株式市場における株価が高いか安いかの明言こそ避けていますが、投資に対する過熱感を感じていることは間違えないでしょう。
私もM&Aの世界に関わらせていただいている身ですから、バフェットのスタンスで今の日本企業のM&A価値を少し検証してみたいと思います。(ちなみにバフェットは日本株には投資しないことで有名です。)
日本の上場企業について買収を検討するならPERを見よう
ここからはバフェット同様、上場会社への投資と考え、日本ではどの程度の金額を出せば企業買収が可能なのか、シンプルな指標で確認してみましょう。
使うのはPERという指標です。これは時価総額と純利益の比率で、例えばPERが10倍ということは、利益の10年分の時価総額がついていることを意味します。
それでは日本のPERがどうなっているのか、東証のサイトで確認しておきます。以下は2018年1月のデータです。
東証1部平均PERは約20倍、マザーズは80倍です。
皆さんはこの指標を使った時に高いか安いか、具体的にイメージが湧きますか?
日本企業の買収にかかる費用は利益100年分?!
実際、上場企業を買収しようとすると、既存株主の保護のため、30−50%程度のプレミアム=買収金額の上乗せをしないといけません。
これを加味すると、東証1部の企業を買収しようとすれば、PER約20倍ですから平均30年分の利益、マザーズでいえば、PER約80倍ですので平均すると100年分の利益を払う覚悟が必要となります。
これは平均値の計算で個別案件の話ではまったくありませんが、日本でも上場企業を買収するということは、これだけのコストがかかる可能性が高く、「高い」ことは間違いありません。
このような市場環境にあっても、割安でM&Aを実行する方法はありますが、それはまた違う記事でご紹介したいと思います。
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