政府と自動車メーカーの思惑でエコカーの高速料金がお得に

節約

 4月から電気自動車とプラグインハイブリッド車の、高速道路の利用料金を補助する制度の登録受付が始まる。そこには、技術開発は大きく進展したものの想定よりも浸透しない低公害車に対する国内メーカー各社と政府の思惑が見え隠れする。製品自体で差別化を図ることが困難な現在、ターゲットとなるユーザー層の意識に訴えかける商品開発が望まれる。

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条件付きのエコカー高速優遇政策が始まる

 4月から電気自動車とプラグインハイブリッド車の、高速道路の利用料金を補助する制度の登録受付が始まる。

 経済産業省および一般社団法人 次世代自動車振興センターは、この補助金制度によって実際の高速道路で電気自動車を多く走らせ、充電器の整備などに必要なデータを、詳細に調査するのが狙いだとしている。※1 ※2

 補助金を受けるには利用情報の提供やアンケートの回答が条件となる。その他、制度を要約すると以下になる。

  • 1) 電気自動車(以下EV)、プラグインハイブリッド自動車(以下PHV)を持っていること(事前に登録が必要:先着4万台)
  • 2) 補助金が出るのは全国の高速道路(首都高などの都市高速道路を除く)
  • 3) 補助金の上限はすべての対象期間で6万円まで、かつ1ヶ月当たり2万円までとなる
  • 4) 普通車の場合、2015年5月〜同年8月までは1,000円を超えた料金が補助の対象となり、同年9月〜12月の間は2,000円を超えた料金に変わる
  • 5) 調査に協力する期間は2015年5月〜2016年2月まで(2016年1〜2月は補助金の対象にならない)
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そもそもエコカー政策ってなんだったの?

 いわゆる低公害車に動力を補給する「EV充電スタンド」の整備が急がれる中、そもそも国内における低公害車の政策とはどのようなものだったのかを振り返ろう。

 過去に経済産業省が打ち出した「高効率クリーンエネルギー自動車開発」というものがある。1997年から2003年の7か年に計画を実施する内容だった。※3

 2001年には環境省、経済産業省、国土交通省が一体となって「低公害車開発普及アクションプラン」を策定している。※4

 当時、掲げた目標は、1)2010年度までに1000万台以上の普及を目指す、2)燃料電池自動車は2010年度に5万台の普及を図るとしていた。

 結果はどうなったのか?

 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公開した、2004年の「高効率クリーンエネルギー自動車の研究開発(事後評価)分科会」によると、国の支援が始まってすぐの段階でも、自動車メーカー各社における、低公害車の技術開発は大きく進展していたことがわかる。※5

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背景に見え隠れするのはメーカーの思惑

 政府の音頭によって自動車メーカー各社は次世代の低公害車の開発を進めた。しかし、マーケットの変化やインフラ整備の遅れなどによって計画通りに事は進まなかった。

 補助金を出す背景には、EV、PHVの普及に苦慮する自動車関連メーカーと政府の思惑が見え隠れする。

 2014年の国内新車登録台数は、われわれ一般市民が日常で使用する普通車、小型車の合計で約286万台だった。四年前の2010年と比較すれば2%減だ。

 ところが軽自動車は2010年の1.3倍となり、いまや貨物やバスなどを含む登録車すべてを合計しても全体の4割を超えているのだ。普通車、小型車、軽自動車にカテゴリを狭めると、内訳の44%を軽自動車が占める。※6

 一方でトヨタ、三菱、ホンダが販売するEVやPHVが劇的に売れているとはいえない状況にある。そこで政府も積極的であるかは別として、テコ入れに取り組む必要があったのだろう。

 実際、市場や環境の変化は日本国内だけではない。

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消費者意識に訴えかける巧者はEUメーカー

 ヨーロッパの自動車メーカーは高級車を中心にガソリン・ハイブリット、PHV、EVなどをラインナップして商品価値を高めるようになった。

 特にヨーロッパでは、カタログ燃費よりもCO2(二酸化炭素)の排出量の意識が高い傾向にある。社会的な意識として「個人の財布にやさしい」よりも「地球環境に配慮する」方が一般的に好まれるのであろう。

 すでに製品自体で差別化を図ることが困難な現在、ターゲットとなるユーザー層の意識に訴えかける、したたかな戦略と言える。

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インフラが整わない市場 利用者にメリットは?

 では、利用者にとって補助金制度はメリットがないのか?

 実際に制度を活用するとしたら、クルマで頻繁に長距離を移動するような利用者であれば大きな恩恵を受けられるはずだ。調査の対象となる期間や金額の上限など、限定的ではあるが、積極的にコストダウンを図る制度として活用したい。

 なお、今回の制度を機に新たにエコカーを購入する際は、購入時の補助金が道府県毎に異なるため事前にチェックが必要だ。

 日産自動車ホームページに「全国自治体 補助金情報一覧」があるのでおすすめだ。

 何よりもいちばん財布に優しいのは、丁寧なアクセルワークやブレーキングだろう。安全運転の基本は忘れずに、しっかりと節約しよう。

参照元

※1 一般社団法人 次世代自動車振興センター「高速道路利用実態調査事業の開始について」
http://www.cev-pc.or.jp/
http://www.cev-pc.or.jp/hojo/pdf/20150312_c_oshirase.pdf

※2 経済産業省「電気自動車等の普及促進に係る取組を強化します」
http://www.meti.go.jp/press/2014/03/20150312001/20150312001.html

※3 経済産業省「経済産業省のこれまでの政策(平成15年)」
http://www.meti.go.jp/policy/newmiti/policy/pcy00003.htm
http://www.meti.go.jp/topic/downloadfiles/2-1-6.pdf#page=44&zoom=auto,-55,480

※4 環境省「低公害車開発普及アクションプランの策定について」
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=2729

※5 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「高効率クリーンエネルギー自動車の研究開発」(事後評価)分科会」
http://www.nedo.go.jp/content/100091025.pdf

※6 自動車情報プラットフォームマークラインズ
http://www.marklines.com/ja/
http://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_japan_2014

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