マイナンバー制度の導入がいよいよ開始する。マイナンバーの利用範囲は「行政手続きのみ」に限定され、他目的での利用が一切認められていない。従って企業にとっては、税・社会保障など行政が絡む実務面の影響が多いことが想定される。しかし企業を縛る規定や罰則など多くの負担があるので、企業規模に関係なく今のうちから対応しておくのは賢明だ。
マイナンバー制度が今年からいよいよ始まる
マイナンバー制度の導入がいよいよ始まる。今年中に国民一人一人に番号が割り当てられ、2016年1月からはその番号の利用が開始されることが決定している。
マイナンバー制度とは、個人番号が国民一人ひとりに付与され、基礎年金、健康保険、パスポート発行、納税、運転免許証番号など、あらゆる行政から受けるサービスをナンバー管理される制度のことを言う。
現状は行政も氏名住所をセットで確認し”名寄せ”するのが精一杯だが、マイナンバー制度の導入により、個々人に唯一無二の番号が付与されることで、個人の行動を効率的かつ詳細に把握できるようになる。
政府はマイナンバー制度の導入により、「宙に浮いた年金記録」が問題となった事件の原因が解決され、本当に手助けが必要な方への社会的サポートをしやすくなる、と主張する。
制度自体は、3億円事件が起きた1968年に、当初「国民総背番号制度」として計画されたが頓挫した経緯があり、実に40年越しの制度導入となる。
今なお個人番号が割り振られていない国は、先進国としてはかなり珍しかったため、晴れて今回の導入と相成った。
企業のマイナンバー取り扱いにおける注意点
マイナンバーの利用範囲は「行政手続きのみ」に限定され、他目的での利用が一切認められていない。従って企業にとっては、税・社会保障など行政が絡む実務面の影響が多いことが想定される。以下注意点を提示する。
1)総務・経理の業務に負担が増える。
税務署や地方公共団体、年金事務所といった関係機関に提出する法定調書や各種届などについてマイナンバーの新たな追記が必要。全従業員のマイナンバー、個人事業主との支払いにマイナンバーが必要なため、無用な手数を増やさぬよう、税理士、弁護士と相談しておくことをお勧めする。
2)取扱いに多くの制限が生じる
保管にあたって「安全管理措置」などの細かい規則がある。一度地方自治体の「マイナンバー制度」窓口で相談してみることをおすすめする。特定個人情報ファイルにアクセスできる人をID管理したり、アクセス制御を行うことを推薦されるだろう。
3)厳しい罰則規定が新設
取扱いについて違反があると、既存の「個人情報保護法」よりもさらに厳しい罰則が待ち受ける。例えば、正当な理由なくマイナンバーを含む特定個人情報ファイルを外部に提供した場合、「4年以下の懲役または200万円以下の罰金」もしくはその両方を科せられることになる。
4)情報漏えいすると、個人が特定されるリスクは高い
その番号だけでは個人の名前がすぐにわかるわけではないものの、万が一番号から個人情報を特定されると、特定された個人情報が悪用される可能性が生じる。外部からの情報入手を防ぐのはもちろん内部コンプライアンスの見直し、厳粛化が必要となる。コンプライアンス研修を設けることも検討しよう。
企業の規模に関係なく対応が必要となるはず
リスクに対しての対応策を前述したが、これらの内容に企業規模の大小は関係ない。
従業員数が数名だろうが、数千名だろうが、扱う情報の重さに変わりはない。
納税や医療に関する手続きが容易になる反面、経理や総務の業務は負荷がかかりやすいため、今のうちから経営者を含めて対応策を練っておきたい。