就業規則を新規に作成して労働基準監督署へ届け出る際は、「従業員の過半数を代表する者の意見書」を添付することが定められています。もし、意見書内で従業員が就業規則の内容に対して反対していたら、就業規則も無効になってしまうのでしょうか?労働基準法は労働者保護の観点に定められたものですが…専門家にズバリ答えてもらいました。
就業規則を新しく作ったのだが従業員にケチつけられた
先日、お客様から「就業規則を作成したので労働基準監督署に届出ようと思ったら、従業員の過半数を代表する者から、内容に不服があるので就業規則に同意しないと言われた。どうしよう…」というお問い合わせをいただきました。
就業規則とは、従業員数が常時10人以上雇用している事業場について、社員の働くルールを定める会社独自のガイドブックとして、労働基準監督署に届出ることを国が定めたものです。
就業規則の届け出時には、「従業員の過半数を代表する者の意見書」を添付することが定められています。
今回いただいたお悩み相談では、この「従業員の過半数を代表する者の意見書」、について従業員達が内容に不服を抱いているなら、就業規則が有効にならないのでは?というものです。
皆さんは、従業員の意見で就業規則が無効になると思われますか?
従業員の意見次第で就業規則が無効になることはない
結論から言うと、従業員の意見次第で新たに作成した就業規則が無効になることはありません。
労働基準法が「従業員の過半数を代表する者の意見書」の提出を求めているのは、あくまで「意見を聞く」ためであって、「同意や合意を得る」ためではないからです。
たとえ同意が得られず、反対の意見があったとしても、その旨を意見書に記載して、就業規則に添付して届出すれば、労働基準監督署は何の問題も無く就業規則を受理してくれます。
さらに、反対の意見があったとしても、就業規則の効力に何の影響も及ぼしません。
ただし、就業規則は、従業員にとっても大切なものでありますので、反対意見があることは、決して好ましいことではありません。
可能な限り従業員も賛同できる内容にするのが懸命でしょう。
就業規則の不利益変更は従業員全員の同意が必要
さて、従業員の過半数を代表する者の意見書は、就業規則を変更した場合にも添付する必要があります。
実は、就業規則を「変更する場合」には、少し注意が必要となってきます。
就業規則変更の場合に添付する書類も、あくまで意見書であって、従業員の過半数を代表する者の同意や合意を得られなくても就業規則自体には影響がありません。
ただし、その変更内容が、
- 従業員にとって利益になる内容
- 少なくとも不利益にならない内容
であれば、全く問題無いのですが、
- 従業員に不利益となる内容
の場合、変更自体が無効となってしまう場合があります。
特に賃金に関する不利益変更の場合には注意が必要です。
例えば、これまで支給してきた手当を、合理的な理由も無しに一方的に廃止してしまう場合などがあります。
従業員にとって重要な労働条件を低下させるような変更は、従業員全員の同意が必要となってきます。
ですから、賃金等を従業員にとって不利益となる変更を行う場合には、変更しなければならぬ理由をよく説明して、従業員に同意を得てから変更するようにして下さい。