ファン待望のドラゴンクエストⅪが7月29日(土)に発売されました。同ゲームのファンの中には、徹夜してでもドラクエをプレイしたいと願う人が続出してます。では、もしも、「ドラクエの新作をやり込むから1週間の有給を取る!」と部下に言われたら、上司はこれを拒否できないのでしょうか?解説いたします。
ドラクエやりたいから有給取得!ってありか?
ファン待望のドラゴンクエストⅪが7月29日(土)に発売されました。
ドラゴンクエストといえば、勇者が敵と戦闘を繰り広げながら成長していくロールプレイングゲームの金字塔です。
ロールプレイングゲームは、ダンジョンを繰り返してレベルアップを図る必要があるため、裏を返せばやり込めばやり込むほど時間が必要になります。
ゲームをやるために徹夜する人も後を絶ちません。
さて、ある時、あなたの部下の1人が突然、来週から一週間の有給休暇をもらいたいと願い出てきました。
なぜそんなに突然?ということで、よくよく理由を聴いてみるとなんと、「出たばかりのドラゴンクエストⅪをやり込むため」と言うではありませんか?
「そんな馬鹿なことのためにいきなり休むな!」と言いたい方もいるかもしれませんが、果たしてゲームのために有給を取得する部下の要求を拒否しても良いのでしょうか?
原則論:ドラクエやりたい人の有給取得は止められない
原則論から言うと、有給休暇は労働基準法で定められた労働者に与えられた権利です。
また、有給休暇の利用目的についても、「年休の利用目的は労働基準法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由であるとするのが法の趣旨である」という判例が出ています。
つまり、有給休暇をどのように利用するかは、労働者に与えられた自由、守られるべき権利です。
業務の正常な運営を阻害するためのストライキといった特殊なケースを除いて、利用目的によって、有給休暇の取得に対して会社が制限を加えることは出来ません。
従って、ドラゴンクエストのための有給休暇の取得であっても、会社が有給休暇の取得の申請を拒否することはできません。
例外論:事業の正常な運営が妨げられる場合はドラクエ有給を止められる
ただし、有給休暇の取得は労働者に無条件で与えられる権利ではありません。
労働基準法は労働者に対して、有給休暇の取得権を無条件に与えているのではなく、「会社が有給休暇を労働者が指定する時季に与えなければならない」としています。
これを、「有給休暇の時季指定権」と言います。
一方で、労働者がドラゴンクエストのために平成29年8月21日〜25日に有給休暇を取得したいと思った場合、労働基準法は有給休暇の時季指定権に対して、会社側に「有給休暇の時季変更権」を認めています。
つまり、会社は、労働者が指定した時季に有給休暇を与えなければならないのですが、事業の正常な運営が妨げられる場合に、有給休暇の取得時季を変更する権利を会社側に認めているのです。
会社の事情が認められるケースはほぼほぼ無い
以上を踏まえると、労働者の有給休暇取得にあたっては、
- 事業に大きな差し障りが無い時期の有給⇒労働者の時季指定権が優先される
- 事業に大きな差し障りがある時期の有給⇒会社の時季変更権が優先される
と解釈することが可能です。
ただし、会社にとって、「事業に大きな差し障りが無い」「事業の正常な運営が妨げられる」ことは、よっぽどのことが無い限り起こり得ません。
たとえば、会社に労働者が10人いたとして、6〜7人の労働者がインフルエンザに羅患してしまい、やむを得ず出勤要請をするなどの場合は、このような事態に該当するかもしれません。
多少の支障はあるでしょうが、殆どの場合は通常通りに業務が行われるはずです。
事業の正常な運営が妨げられるか否かの基準については、法律で明確な基準が定められていないので事案ごとに判断されますが、有給休暇の時季変更権が認められるためのハードルは非常に高いです。
労働者がドラゴンクエストをぶっ通しでやりたいので有給休暇を申請するなら、思いっきりゲームを楽しんでもらい、次の仕事へのモチベーションにつなげてもらうほうが良さそうです。
Photo credit: Norio.NAKAYAMA via VisualHunt / CC BY-SA