ここ数年で急速に喫煙率が下落したことで、喫煙者の肩身がどんどん狭くなっています。タバコを楽しむ権利はどこへ行ってしまったのか…と嘆く愛煙家も多いことでしょう。ところがどっこい、世の中には「喫煙する権利」というものがある「らしい」のです。そこで本稿では、「喫煙する権利」とはどのようなものか?どれくらい効力があるか?の2点に触れてみたいと思います。
喫煙者にも喫煙する権利があるって本当?!
ここ数年で急速に喫煙率が下落しています。
平成28年には成人男性の平均喫煙率が29.7%となり、昭和40年以降のピーク時(昭和41年)の 83.7%と比較すると、50年間で54ポイント減少したことになります。
数字からも明らかですが、副流煙の有害性などが叫ばれていることも相まって、愛煙家の居場所がどんどん無くなっています。
タバコを楽しむ権利はどこへ行ってしまったのか…と嘆く愛煙家も多いことでしょう。
ちなみに、弊社は従業員全員が非喫煙者であり、「働くひとの健康をつくる」というビジョンを掲げておりますので、原則的に喫煙者の入社をお断りしています。
一方、喫煙者の中には、「俺たちにだって喫煙する権利があって良いんじゃないか?」と、おっしゃる方もいらっしゃいますよね。
そこで今日は、時流に逆らって(笑)、敢えて「喫煙する権利」って本当にあるのか?考察してみたいと思います。
喫煙する権利はなぜ認められる?大本の判例
喫煙者の「喫煙する権利」の大本となっているのは、最高裁で昭和45年に判決が下った判例を根拠とするものです。
その文言は以下のとおりです。
喫煙の自由は、憲法一三条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない。
最高裁昭和45年9月16日判決
この判決がまず一番言いたいところは、
- 『喫煙の自由』は日本国憲法13条が保障する人権に含まれる
というものですね。
さらっと言ってしまいましたが、タバコを吸うことは憲法で基本的人権の一つとして認められているんですね。
これは、愛煙家にとっては朗報ですね。
ところが、判決文の後半を読むと、
- ただし、時と場合によっては制約が加わえられても文句を言えない
という解釈の文言が含まれています。
実は、ここがミソなのです。
日本国憲法は、憲法第12条・13条「公共の福祉に反しない限り」、喫煙する権利を国民に与えています。
一方で、これが基本的人権に基づく解釈であることに鑑みれば、タバコを吸う権利は、他の人の権利や自由を侵してまで保障されるものではないということも、判例では証明されているのです。
つまり、他人の権利や自由>喫煙する権利、と考えるのが妥当と言えるでしょう。
喫煙者に喫煙する権利があるなら嫌煙者にも権利がある
では、会社は喫煙者と、喫煙する権利について、どのように対応すれば良いのでしょうか?
会社は賃金を支払い、労働者を雇用しています。そして、業務の遂行方法や、就業の場所、勤務の時間などに関して、会社は労働者に対する指揮命令権を持っています。
基本的人権として保障されているとはいえ、就業時間中に勝手に持ち場を離れて、タバコを吸いに行くことを禁止すれば労働者はそれに従う必要があります。
就業時間内に持ち場を離れることが業務に支障を生じさせること、タバコを吸わない人と休憩を公平に与える必要があることを考えると、合理的な理由を示してタバコ休憩に関して検討した方が良さそうです。
更に、最近ではスモハラという言葉をそこかしこで聞きます。 和製英語でスモークハラスメント(たばこの嫌がらせ)です。
タバコを吸わない人にとって、あの煙は嫌がらせのようなものですよね。副流煙によって強制的に受動喫煙させられてしまう、洋服や髪の毛に匂いがついてしまう、頭痛や吐き気など健康面での被害も耳にします。
このスモハラですが、法的に見る場合には健康増進法(最終改正:平成26年6月13日)という法律の第25条が受動喫煙に触れていますので、ご確認ください。
また、以下に記述する、厚生労働省健康局長健発0225第2号も大変参考になりますので、一読することをお勧めします。
第二十五条 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
第五章 第二節 受動喫煙の防止
この法律は、非喫煙者の受動喫煙を防ぐのに必要な、企業に求める努力義務をうたっています。
罰則はありませんが、努力義務を怠れば告訴されるリスクがあることを、十分に認識しておいた方が良さそうです。
社内で受動喫煙の有害性やリスクを防ぐ手段
また、喫煙する人の自由や権利と対極には、吸わない人の権利が存在します。
受動喫煙の有害性やリスクがはっきりとしてきた現在では、吸わない人の権利も考えなければなりません。
タバコの煙は自分だけではなく周りにいる他の人にも有害なものですから、タバコを吸わない人もいる可能性がある公共の場所では、タバコを控えるように、喫煙者である従業員へも周知する必要があります。
また、企業としても、事業場内に喫煙スペースを設けるなどして、タバコを吸わない人がタバコの煙にいぶされることのないような配慮が必要です。
社内向けの喫煙のルールを人事部で作って従業員に周知させて、禁煙を勧めるきっかけにしてみましょう。