JASRACが6月7日に、音楽教室に対する著作権料の徴収について、使用料規程の改訂を文化庁に届け出たことを発表しました。法的な側面から著作権について冷静に考えた場合、感情論はさておき、現時点で圧倒的に分が良いのはJASRACです。音楽教室を守る会は法で争う姿勢ですが、現実には法律ではなく、仕組みで子供の教育現場を守るという視点が必要となりそうです。
JASRAC対「音楽教室を守る会」の対決〜分が良いのはJASRAC
JASRACが6月7日に、音楽教室に対する著作権料の徴収について、使用料規程の改訂を文化庁に届け出たことを発表しました。
一方で、音楽教室を運営する法人など300社が加盟する、「音楽教育を守る会」(代表・ヤマハ音楽振興会)は、著作権料の支払い義務は生じないとして、東京地裁に訴訟を起こすことを検討しており、JASRAC対「音楽教室を守る会」の対決は新たな局面を迎えています。
しかし、法的な側面から著作権について冷静に考えた場合、感情論はさておき、現時点で圧倒的に分が良いのはJASRACです。
詳しい内容については、以前寄稿した下記の記事をご参考にしていただければと思います。
参考リンク:JASRACvs音楽教室〜著作権巡る対決の法的な勝者はどちらか?
訴訟を起こしたとして、音楽教室を守る会が著作権料をこれまで通り、一切支払わずに済むというのはかなり困難では?というのが、現時点での見解です。
著作権法の改正も議論されるが現実は難しい
それでは、もし、音楽教室を守る会が著作権料を一部、もしくは全部支払わねばならなくなったとしたら、音楽教室はどんな策を講じていくことになるのでしょうか。
音楽教室が著作権料を徴収された場合、その著作権料は結局、生徒の月謝に反映され、お稽古代の値上げにつながることになるでしょう。
とはいえ、例えばエステのお店で楽曲を流した場合、著作権料はエステ代に反映されます。 飲食店しかり、ショッピングモールしかりです。
このような現状を考えると、音楽教室も他の事業を運営する会社と同じフィールドに乗っただけということになります。
通常の事業と異なる点は、子供たちに対し音楽教育を行っている点です。
お稽古代が値上がれば、経済的事情から音楽教育を受けられる子供の人数が減る可能性は否めません。
従って、結果の云々はさておき、音楽教室側は著作権料の徴収により、子供たちの教育機会の縮小につながらないよう配慮する必要が生じるはずです。
この議論については、著作権法を改正すれば良いという意見もありますが、著作権はあらゆる業種業態に渡り大きな影響を及ぼす法律であるため、今回の事例のみで、即、改正されるのは考えにくい話です。
法律ではなく仕組みで子供の教育現場を守る
確かに、法律を改正して対応することも可能ですが、その前に仕組みの上で工夫することも十分可能です。
例えば、医薬品の選択肢としてジェネリック医薬を選択できるのように、子供たちが授業において著作権のある楽曲と、ライセンスフリーの楽曲を選択できるようにするなどの措置も考えられるでしょう。
ジェネリック医薬が選択できるようになって良くなったことは、薬代が安くなるという直接的な効果もありますが、薬の開発には非常にお金がかかり特許で保護されていることを知ることができたという知識普及の効果もありました。
同様に、子供たち(親を含め)が著作権のある楽曲とライセンスフリーの楽曲を選択できるようになることは、子供たちが著作権に関する知識を深め、他人の著作権を尊重する意識を持つようになるという教育的な効果も期待できるでしょう。
著作権料の支払が生じるようになれば、年間10億~20億円のお金が動くことになるため、たしかに音楽教室団体が争う事情も理解できますし、これを否定する気もありません。
ただし、音楽教室を守る会のホームページでは、その事業が学校と同レベルで社会的公共的意義の強いものだと記述されています。
子どもたちへの音楽教育が置き去りとなることだけは避けねばなりません。
民間事業として利益を得ることと、円滑に事業を継続することのバランスを図り、こうした仕組み作りの可能性を探ることにも力を入れるべき局面を音楽教育は迎えそうです。