フランク三浦が高級時計ブランド「フランク・ミュラー」と商標を巡り行われた訴訟で勝訴したのに対して、公道を走るマリカーは任天堂に不正競争防止法違反で訴えられ厳しい状況に追い込まれています。2つの事件は有名ブランドと商標や著作権を争う点で非常に似通っていますが、ここまでの結果は正反対となっています。2つの騒動では何がどう違うのでしょうか?
フランク三浦が最高裁でフランク・ミュラーに対して勝訴確定
フランク三浦の事件が最高裁で決着したようです。
スイスの高級時計ブランド「フランク・ミュラー」を連想させる腕時計「フランク三浦」の商標が有効かどうかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は6日までに、フランク・ミュラー側の上告を退ける決定をした。
フランク三浦とマリカー、いずれも有名な先行企業のマネをしたとして大きな話題を呼びました。
しかし両者の結果は、現時点だと正反対のものとなっています。
フランク三浦は勝訴し、一方のマリカーは旗色が必ずしもいいとはいえません。
両者の違いは一体どこにあるのでしょうか。
それぞれの事件の内容をおさらいしながら、2つの違いを見てみましょう。
フランク三浦の商標登録が有効とみなされたのはなぜ?
フランク三浦の事件は、フランク三浦が取得した商標登録が無効であるとして、フランク・ミュラーが訴えた事件です。
訴訟を起こした理由は、フランク三浦の商標がフランク・ミュラーの商標と似ているというものです。
2つの商標が似ているかどうかが争われたわけですが、裁判所は、似ていないと結論づけました。
この理由を、ざっと分かりやすく、似ている度合いをポイントで表すと次のとおりです。
- ・フランク三浦とフランクミュラーは読み方が似ている(+1)
- ・「三浦」という漢字が使われているので見た目では区別できる(-1)
- ・「三浦」は人の名字を連想させるので意味の点でも区別できる(-1)
- ・時計のブランド名は見た目や意味でも記憶され、読み方だけが特別重要なわけではない(-1)
今回の判決で、裁判所がフランク三浦の商法にお墨付きを与えたわけではありませんが、商標が似ていないと判断されたことで、フランク三浦はその名前の時計を販売し続けることができます。
マリカーが任天堂に不正競争防止法違反で訴えられたワケ
一方、マリカーの事件は、著作権侵害のほか、不正競争防止法違反であるとして任天堂が訴えた事件です。
著作権の問題と不正競争防止法の問題はポイントが異なり、本来はそれぞれ解説しないといけないのですが、本稿では、2つの事件の違いを分かりやすくするため、商標の制度に近い「不正競争防止法の問題」に焦点を当てて2つの事件を対比します。
マリカーの事件では、誰が見ても任天堂のキャラクターであると分かる衣装をレンタルし、サービスを提供する行為が問題とされています。
フランク三浦の件とは対象が異なるものの、キャラクターをマネしているかどうかが争われている点で共通しています。
なお、事件の詳細は任天堂から著作権侵害で訴えられた「マリカー」の対応が企業としてスベってる2つの理由をご覧ください。
2つの事件は何がどう違うのか?両者の行方を変える要素
2つの事件で問題となるのは、
- フランク三浦:消費者がフランクミュラーの時計と間違ってフランク三浦の時計を購入してしまうかどうか
- マリカー:消費者が任天堂のサービスと間違ってマリカー社のサービスを購入してしまうかどうか
という点です。
すなわち、消費者の立場に立って消費者が間違えるかどうか?という点が問題になります。
この点、フランク三浦の事件では、「三浦」という漢字を用いていることから、消費者が明らかに区別できると判断しています。
これに対し、マリカー事件では、そのように明確に違うと分かるものが乏しいため、消費者が明らかに区別できるとはいえないかもしれないという違いがあります。
このような表示(フランク三浦でいう「三浦」のような表示)は、消費者が間違って購入するかどうかを分ける重要な要素になってきます。
マリカーの事件は、まだ裁判所の判断が出ていませんが、このような表示があるかどうかが結論に大きく影響する要素の一つといえるでしょう。
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