与野党が党の枠組みを超えて、現在「20歳以上」と定められている選挙権の付与年齢を「18歳以上」に引き下げる公選法改正案を来週を目処に衆議院へ再提出することが判明した。世界の先進国で選挙権の付与年齢や成人年齢がどうなっているか比較しよう。アラブ首長国連邦の特殊な選挙権に関する事例も背景とともにご紹介する。
18歳選挙権が成立か 16年から適用目指す
2月17日(火)に自民・民主・公明・維新の会が与野党の枠組みを超えて、現在「20歳以上」と定められている選挙権の付与年齢を「18歳以上」に引き下げる公選法改正案を来週を目処に衆議院へ再提出することが判明した。
今国会で法案が成立する見通しが立っており、2016年夏の参議院選挙から適用されることが予想されている。
成立すれば2016年から新たに、約240万人の未成年が有権者としての資格を保有することとなる。
選挙権が付与される年齢引き下げは、1945年以来実に70年ぶりのことで、当時は「25歳」から「20歳」まで大幅な年齢引き下げとなった。
若い世代のの声を政治に反映することで、社会保障の負担方法など、世代により見方に大きな違いが生じる政策へ少なからず影響が見込まれる。
海外は何歳から選挙権が付与されている?
多くの新聞報道では、今回の選挙権を付与する年齢の引き下げについて、日本がやっと「国際標準」に合わせ始めたという論調が多い。
調べてみたところ、先進国と言われるG7(先進7カ国)では、選挙権を付与される年齢は以下のとおりであった。
- フランス:18歳
- アメリカ合衆国:18歳
- イギリス:18歳
- ドイツ:18歳
- 日本:20歳
- イタリア:18歳
- カナダ:18歳
- ロシア:18歳
G7の枠組みだと先進国の中では、日本だけが選挙権の付与年齢が20歳からであった。よって、選挙権を取得する年齢が遅いという論調は正しい。
選挙権付与年齢が引き下げられても、日本の成人年齢は20歳以上で変わらないとされているが、これもいずれは引き下げられる可能性が高い。
なぜなら、G7諸国のほとんどが18歳を成人と見なし、選挙権を与えているからだ。
例外として、アメリカでは成人年齢が州ごとに変わり、18歳が45州、19歳が2州、21歳が3州で成人として認識される。
日本でも選挙権の付与年齢引き下げを契機に、成人年齢の引き下げ論争が、少子高齢化の負担層拡大や、若年層による凶悪事件の増加を鑑みた少年法の改定を理由に、活発化することが見込まれる。
興味深いのは中東・アラブ首長国連邦の選挙
先進国の多くが民主主義の拡大と共に、選挙権の付与年齢引き下げや投票層の拡大策を投じる中、ゴーイングマイウェイな国がある。
UAE(アラブ首長国連邦)だ。
UAEには2005年まで、一般国民が国政に関与する選挙権がなかった。現在は参政権を付与される人の範囲が広まっているが、その数、国民900万人に対してわずか2,000人程度である。選挙権の付与される年齢も実に25歳以上からだ。
それでもUAEで選挙権について激しい抗議活動が起きないのは、石油が生み出す莫大な富によって、国籍を持つ国民はゆりかごから墓場までの手厚い政府の保護を受けているからにほかならない。
各首長が国民の声を直接聞く伝統的なマジュリスなどの制度も残っているため、選挙の民主化を求める動きは大きくない。
実際に2011年にアラブ世界全域へ広がった民主化運動「アラブの春」の時ですら、UAEでは民主化要求デモが起きなかったという。
お国柄や国家の財政状態により、政治参加の意味合いは全く変わることを示す興味深い事例と言えよう。