インターネットを利用したオンライン上の商取引(見積書、請求書、契約書)のやりとりで、Web印影を利用するのが当たり前になっているが、そもそもそれらの行為は法律的に有効なのだろうか?普段根拠を知らずに行っているなら、それらの行為が有効な根拠を法律から知ろう。商取引がWebで便利になっている分、取り扱いにも気をつけたい。
オンラインで印鑑を活用した取引は増加
「請求書に押印がないので、手配し直してもらうよう仕入先に伝えてほしい」と、経理から請求書を突き返された経験はないだろうか?
確かに、経理関係書類や契約書にハンコを押すのは商売上の常識と言えるが、最近では迅速なやりとりのために、見積書や請求書をメールだけで済ませるケースやWebで作成した印影を利用して、書類を作成する企業も増えている。
当たり前のように、オンライン上での印影を利用した商行為を行った場合、法律上の効力はそもそも発生するのだろうか?
契約書のやりとりまで拡大したときにも、オンライン上の印影を利用したやりとりは許されるのだろうか?
法律上は効力が発生し有効な書類となる
これらの問題を解決するためには、そもそも契約がどの段階で効力を持つのか?を知ることが必要になる。
民法は「口約束」でも、93条から96条で、心裡留保、虚偽表示、錯誤、詐欺・脅迫、に当たらず、双方の合意があった場合に、契約の効力が発生することを認めている。
更に、平成12年に制定された「電子署名及び認証業務に関する法律」には、「電磁的記録であって情報を表すために作成されたものは、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する」という条文がある。
従って、オンライン上での印影を利用した商行為(見積書・請求書)の送付、契約の締結を行うことは、認められた行為である。
会社の角印や実印はPDFやJPEGデータで取っておき、迅速なやりとりに活用することで、時間の効率化を図ることが可能となる。
社員に見積もりをウェブ上でやりとりさせるならば、クリップスタンプのダウンロードをしておくよう指示したり、Web認印、などを教えてあげると、時間短縮に役立つだろう。
見積もりはオンライン 契約書はなるべく実紙
とはいえ、オンライン上の見積書や請求書のやりとりで気をつけなければならないことがある。
データを改ざんされないようにすることだ。
エクセルやワードに印影を貼り付けて、取引先へデータを送ってしまうと、自分の手元を離れた印影データを勝手に利用されて、下手をすれば別の契約に使われてしまう可能性もある。
特に角印や実印を貼付した資料は、PDFなど改ざんされにくいデータへ必ず処理してから先方へ渡そう。
なお、筆者の顧問弁護士に今回の件を相談したところ、「契約書(特に金額の大きなもの)へ印影を落とす場合は、現時点なら実紙上のやりとりが一番確実な証明になる。」とのことであった。
オンラインによって商取引が効率化され便利になった分、印影の取り扱いには十分気をつけよう。