円滑なコミュニケーションを図るには、自分の伝えたいことを相手に理解してもらう必要があります。ただし、相手の知らないことを自分の説明を通じて理解してもらうには、相手が具体的なイメージを頭の中にありありと描ける必要があります。そこで活用したいのが、たとえ話です。具体的な事例を踏まえながら、たとえ話の有用性をご紹介します。
自分の考えや要求をきちんと理解してもらうのは至難の業
こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。
今回は、コミュニケーション上達のポイントをお伝えします。
私たちは日々、職場や家庭などで、様々な相手と様々な目的でコミュニケーションを取っていますね。
単に「時間つぶし」が目的であれば、お互いに好き勝手なことをだらだらと喋っていてもいいでしょう。しかし、ほとんどの場合、コミュニケーションの目的は、自分の伝えたいことを相手にきちんと「理解してもらうこと」です。理解してもらえなければ、話は進みません。
ただ、この「理解してもらうこと」って、意外に難しいとお感じではないでしょうか?
英語も通じないような外国に行くと、自分の考えや要求を現地の方にちゃんと「理解してもらうこと」がいかに難しいか、想像しやすいと思います。
ところが、同じ言語を話していても、話がかみ合わないことって結構多いものです。伝えたいことが相手にうまく伝わらないために、皆さんもイライラした経験がいくらでもお有りでは?
シマウマを知らない人にシマウマをどう理解してもらう?たとえ話のススメ
そこで、いったん原理原則に立ち戻り、そもそも「理解する」とはどういうことなのかを考えてみましょう。
実は「なにかを理解する」、というのは「具体的なイメージを頭の中にありありと描けること」なのです。
わかりやすい例を示します。
「シマウマ」を見たことない人がいたとして、その人に言葉でシマウマがどんな動物か説明しなければならない状況で、「シマウマは四本足の動物で・・・」と言っても、四本足の動物はたくさんいますから、相手はピンとこないでしょう。
しかし、仮に相手が「馬」を知っていたら簡単です。「名前の通り、馬のような体形・大きさで、身体全体に縞模様が入っている動物ですよ」といえば、相手の頭の中には、縞模様の入った馬の姿がありありと浮かび、シマウマがどんな動物か、すぐに理解してくれるでしょう。
その時に頭の中で思い浮かべるシマウマのイメージは必ずしも正確ではありませんが、とっかかりとしては近似していれば十分。
確かに現実のコミュニケーションはこんなにシンプルではありませんね。でも、同じように説明をすればいいのです。つまり、理解してほしいことについて、「~のようなものですよ」と説明してあげるわけです。
すなわち、相手がすでに知っている情報を使って説明する(=たとえる)ことで、理解してほしいものごとについて具体的なイメージを描かせてあげる。これが自分の伝えたいことを相手にうまく理解してもらうコツです。
説明が難しい話であればあるほど、できるだけ、「~のようなものですよ」というたとえを用いて話すことをお勧めします。
イメージを思い起こしてもらうところから「理解」は始まる
蛇足ながら、今回こんなテーマにしたのは、詩人の穂村弘氏のエッセイに触発されたからです。そのエッセイでは、穂村氏が20代の人々と話をしたときのことが書かれています。
話の中で穂村氏は、若い人たちの誰も「沢田研二」を知らなかったことに驚き、「ジュリー(沢田研二の愛称)を知らないなんて・・・」と愕然としたとのこと。
往年の人気歌手であった沢田研二も最近はあまりメディアに登場しませんし、彼を知らない若い人がいるのも仕方ないと思うのですが、面白いのは、若者のひとりが「えーと、じゅりいってキムタクみたいなもんですか?」という質問をされて穂村氏が答えに窮したというところ。
その若い人は、沢田研二という未知の人物を理解するために、「キムタクみたいな人」というたとえの妥当性を穂村氏に確認したわけです。トップスターだった当時の沢田研二と今のキムタク、同じような存在といえるかどうか難しいところ。しかし当たらずしも遠からずではないでしょうか。
穂村氏はまじめな方なので困ってしまったようですが、私なら、「そうだね、当時の沢田研二は、今のキムタクのような存在だったのは確かだよ」という形で受け止めて、「でも、沢田研二はね、キムタクとは違って・・・」と説明を続けたでしょう。
コミュニケーションを行うとき、正確性を重視しすぎると、「たとえ話」ができなくなります。まずは「たとえ話」で大雑把に理解してもらう、つまり雑なイメージでいいから相手に浮かばせる。そうして詳細な説明に移れば相手の理解が容易になるのです。