4月末に米マクドナルドが日本マクドナルドの売却を見送ったことが報道されました。米マクドナルドのケビン・オザンCEOは、日本マクドナルドの好調を表向きの理由としますが、一方では売却検討先の商社・ファンドとの交渉が難航したことが主要因と見られています。なぜ、米マクドナルドは日本マクドナルドを売却できなかったのか?その理由を解説いたします。
米マクドナルドが日本マクドナルド売却見送り
2016年1月に、米マクドナルドが日本マクドナルドの株について、最大で全体の33%を売却検討していると大きく報道されました。
ところが、ここに来て、米マクドナルドは、日本のマクドナルドを現時点では売却しない意向を会見で表明しました。
現在報道されているところによると、「米マクドナルドによる売却見送りの主要因は日本マクドナルドの好業績が大きい」という論調が強いようです。
実際に、米マクドナルドのケビン・オザンCEOは、日本マクドナルドの好調を売却見送りについての表向きの理由としています。
米マクドナルドが日本マクドナルド売却を見送った本音とは?
ところが、日経新聞の4月26日の記事ではチラッと一文触れられているだけですが、米マクドナルドは商社やファンドに打診したものの交渉に難航した、ということも同時に明らかになっています。
これに鑑みると、米マクドナルドは、むしろ、「日本マクドナルドを売却できなかった」のが本音、と推測することが可能です。
日本マクドナルドは東証一部に上場する上場企業であり、時価総額が常に変動します。
2017年5月15日9時現在の時価総額は、約4,970億円と5,000億円に迫る規模となっています。
足下の業績は、今期の売上2,300億円、営業利益90億円、純利益85億円の見込です。
対して、米マクドナルドが売却を検討した株式は全体の33%程度です。
米マクドナルドが日本マクドナルドの株式を売却したとしても、日本マクドナルドは上場廃止にもならないでしょうし、既存株主を守るためにプレミアムをそれほど上乗せする必要はありません。
しかし、あまりに低い金額で売却するのでは米マクドナルドにとって殆ど意味がなく、他方で買おうとするファンドや商社にとっては高すぎます。
日本マクドナルドが上場企業であるがゆえに、条件が折り合わず売却できなかったと見るのが自然です。
日本マクドナルドの時価総額は直近の利益60年分に相当
利益が年間で85億円の会社の価値(時価総額)が約5,000億円ということは、直近の利益の60年分くらいの価値が、マクドナルドの株価に付いているということです。
しかも、今回は最大の売却比率が33%であり、株式の取得可能割合が半数以下と、子会社にすることもできませんから、買う方からすれば何も今買う理由が見つからなかったのでしょう。
このように上場会社の株式売却は、株価があるがゆえに、売買の価格設定の自由度がないということは、あらためて知っておいていただければと思います。
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