今、関西が熱い。大きな要因の1つは、京都をはじめとした豊富な観光資源を背景に、インバウンド消費が急拡大していることにある。しかし関西人のビジネス感覚は東京人と大きく違う部分があるため、予め彼らの本質を掴んで現地で商売しなければ成功することはあり得ない。関西出身の経営者が語る言葉から関西人の考え方を知ろう。
関西が今までにないくらい熱気を帯びている
今、関西が熱い。
筆者はお笑い芸人ダウンタウンの出身地で生まれ育ち、現在も在住している生粋の関西人だが、地元愛を差し引いて客観的に見ても、関西はビジネスチャンスに今溢れているのだ。
大きな要因の1つは、インバウンド消費が目に見えて増えていることである。
日本古来の美しさを味わえる京都をはじめ、大阪、兵庫、奈良など全般的に個性がたった地域には外国人が押し寄せているのだ。
インバウンド消費を支える施設も現在充実し始めている。
日本一高い高層ビルのあべのハルカスの展望台入場料は、スカイツリーの半額の1500円。2014年世界人気都市ランキングで世界第1位となったのは京都は素材がとにかく良い。※1観光都市・神戸では、外国人観光客向け公衆無線LANサービスを提供している。
経営者が残した名言から関西の商習慣を知る
日本の首都は言わずもがなのこと、東京都である。大阪の人口は東京の3分の2ほどで、神奈川県が第2位に上昇したため、国内3番目の都市だ。
とはいえ、全国的にみると人口が集中していることは間違いなく、企業の数も多い。が、企業数でいうと大阪府に所在する企業数は、東京都と比較しても約65%に達する。※2
また先述の通り、関西圏にはビジネスチャンスが生まれているため、今後多くの企業が進出することが予想される。
しかし東京と関西の商習慣の違いは非常に大きい。
そこで、関西で商売する上で気をつけたいことを、関西出身の経営者の名言とともにご紹介しよう。
1)パナソニック 松下幸之助
「日本の憲法は、他人から助けてもらうことを前提として、生存と安定を図ろうとしているが、そこから、みな他力本願になってくる。他力本願を自力本願に変えなければならない」
→関西企業の特徴は、共存共栄ではなく”強存強栄”。強いものだけが栄える。自力本願で、ある程度”がめつく”進めなければ進化はない。
2)ワコール創業者 塚本幸一
「数字をにぎる、数字をまとめる、数字を利用する」
→ソロバンに強い滋賀県出身の塚本氏は、経営の原則である収支記録、月ごとの決算、純益の資本繰り入れを繰り返したことで有名。一見ダイナミックで丼(どんぶり)勘定に見える関西人だが、経営者も消費者も実のところは計算を持って行動するという特徴がある。
3)岩谷産業 岩谷直治氏
「日本の会社は大きくなると儲からない。外国の会社は大きくなると儲かる。会社が大きくなればなるほど、小企業の心構えでやっていくこと」
→カセットボンベで有名なイワタニの創始者の言葉は、あくまで企業は市場中心主義、お客様第1主義であるべきだとも読み取れる。消費者の支持がなければいくら大企業でもつぶれる。一番重要ことは商品力、サービス力だ。
東京ではブランドの三越伊勢丹さえ撤退した
三越伊勢丹は鳴り物入りで大阪へ進出したが、わずか3年で撤退が決定し、三越伊勢丹のホームページにある地図からは大阪にあったはずの店舗がすっかり消え去っている。
失敗の大きな要因は、東京の商習慣を持ち込んだことだ。
ブランドのバッグを購入したとする。
東京の人は「このバッグ、10万円もするの」と”高価であること”をまわりに誇るのが普通だが、関西人の気質はその逆で「このバッグ、70%OFFの3万円で買えたんやで」と”安く買えたこと”を自慢する。
関西人の商売に関する考え方の本質は、「究極の合理主義」という言葉に集約できる。
合理主義の消費者・ビジネスパートナーを味方に付けて支持を得、口コミネットワークにうまく乗っかれば、驚くほど関西の商売はうまくいくはずだ。
参照元
※1 京都市「2014年世界人気都市ランキング」
http://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000169423.html
※2 中小企業庁「企業の数 2012年」
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H26/h26/html/f02.html