新興起業家に踊らされないために読み返すオオカミ少年の話

資金調達

 昨年11月に東証一部へ上場した、スマホアプリゲームのメーカーgumiの大幅下方修正と、その後に続く不祥事に代表される「上場ゴール」問題が、新興市場の株価上昇に影を落とし始めています。なぜ「上場ゴール」現象が起きることは望ましくないのか?イソップ童話「オオカミ少年」のストーリーに当てはめるとよくわかります。投資家はどうあるべきか、今一度思い起こしましょう。

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gumiの下方修正で失望に陥った個人投資家

 昨年11月に東証一部へ上場した、スマホアプリゲームのメーカーgumiが、上場直前の計画である営業利益13億2900万円の黒字計画に対して、2月に出た決算が4億円の大幅赤字見通しの下方修正だったことから、「上場ゴール」として一般投資家による大バッシングを受けています。

 gumiの株価は上場日2014年12月18日につけた高値3,400円を最後に、3月19日には1,282円まで下落しました。

 gumiの下方修正は未だに新興市場全体へ、大きな影響を与えています。

 日経平均株価やTOPIXなど大型株のの株価指数が年初来高値を更新しているのに対して、gumiと同業種のインターネット新興企業が多く集まる東証マザーズ市場は、年初の安値圏で推移しています。

 gumiが大バッシングを受ける要因の1つとなったのが、代表取締役社長である國光宏尚氏のビッグマウス(大口叩き)です。

 「gumiで時価総額8兆円は見えた!」「組織力が出来てからでないとIPOすべきでない」など、インターネットを通じて國光氏が放つ数々のビッグマウスは、一般投資家に夢を与えるものでした。

 しかし、前述の大幅下方修正に加え、上場直後の複数役員による株式大量売却、株式金融機関からの30億円に登る追加融資借入、韓国子会社の横領を防げなかった資金管理の甘さ、を要因とした株価の大幅下落により、投資家の期待は大きな失望へ変わったのです。

 日本取引所グループは3月31日、これらの事態を受けて新規株式公開(IPO)案件への対応策(上場審査の強化、業績予想の厳格化、上場時期の集中回避)を正式に発表しました。

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オオカミ少年の童話は投資家を冷静にさせる

 今回の一件に代表される「上場ゴール」がなぜいけないのかは、イソップ童話の「オオカミ少年」を読み返すことでよくわかります。

 童話では、羊飼いの少年が、退屈しのぎに「オオカミが出た!」と嘘をついて何度も騒ぎを起こします。その度に村人は騙され、オオカミ退治に馳せ参じますが、いずれも徒労に終わります。

 少年が繰り返し嘘をついたので、本当にオオカミが現れた時も村人は信用せず、誰も羊を救援に行きませんでした。そのため、羊は全て狼に食べられてしまったのです。

 「オオカミ少年→上場する新興起業家」「村人→一般投資家」「羊→お金」と当てはめてみるといかがでしょうか?

 オオカミ少年には悪気はないかもしれません。

 しかしホラ吹き(大口叩き)を続け実際に事実(業績)が発生しないと、オオカミ少年はいずれ本当に素晴らしい結果(好業績)を生み出したとしても、誰にも適正価値のお金を出して(投資して)もらえなくなり、村人もホラ吹き(大口)が重なる度に投資意欲をなくすため、市場はやがて縮小してしまいます。

 やがてオオカミ(不況)がいなかった市場環境が変化してしまうと、平和だった村(好況を博す市場)から羊(原資)が奪われ、村人は一文無しとなってしまいます。

 かなり簡易に描きましたが、上場ゴールは市場を縮小させる要因となるため、誰も得をしない結果が生まれる、非常に望ましくない兆候と言えます。

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言葉に踊らされぬ賢明で冷静な投資家になる

 イソップ童話「オオカミ少年」は3つの教訓を与えています。

 1つ目は、オオカミ少年のように、「ホラを吹き続けていると、誰も信用してくれなくなること」です。

 2つ目の教訓は、村人のように「自分が調べもしないで人の口車に乗らないこと」、最後の1つは「本当のピンチやチャンスを見極める自己の能力を鍛えないと、最終的に損失を被ること」です。

 1つ目は多くの起業家が肝に銘じるべき教訓であり、2・3つ目は投資家にとって身にしみる教訓と言えます。

 インターネットにより格段に情報の拡散性は強まりましたが、情報の取捨選択は受け手側に求められています。

 情報を容易に手に入れられる分、情報が真実か否かを分析する能力を磨く必要も生じています。

 新興起業家(オオカミ少年)の口車に踊らされず、自分自身で適正な情報を収集できる投資家(賢明な村人)となり、大切な資金(羊)を守る姿勢を貫きましょう。

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