サービスの細分化や通販事業者によるサービス競争の激化により、従業員の長時間労働や人材不足、CO2排出量の削減に対する要請など、様々な問題を抱えている物流業界。ただし、官民ともに手をこまねいているだけではなく、これらの問題を解決しようと新たな取組を始めています。本稿では、その内容をかいつまんでご紹介します。
物流業界の問題解決に向け官民で動きが活発化
年末に佐川急便の従業員による荷物叩き付け動画が動画共有サイトに掲載され、現場におけるドライバー達の深刻なストレスや、モラルハザード問題、社内の体制不備に注目が集まりました。
この一件に留まらず、現在物流業界では、CO2排出量の削減や、宅配ドライバーの人手不足が深刻な物流問題が露見しています。
荷物の流通量が増加している一方で、「送料無料」や「スピード配送」などサービスの細分化や、通販事業者のサービス競争が、これらの問題を深刻化させています
ただ、これに対して、官民ともにだた手をこまねくだけではなく、解決に向けての取り組みを活発化させています。
そこで本日は、その取り組みをかいつまんでご紹介しようと思います。
宅配ボックスの設置で問題の軽減に光明を差す
まずは、政府の動きから見ていきましょう。
再配達の削減対策として、環境省は国土交通省と連携した新規事業「オープン型宅配ボックスの普及事業」に、2017年度予算案として約5億円を計上しました。
この事業は、物流事業者、ロッカー設置者などを対象に、特定の会社でなくとも利用できる「オープン型」の宅配ボックスの設置にかかる費用に対して補助を行うというものです。
設置場所は、再配達の多い地域の駅・コンビニ等の公共スペースやオフィス、マンションへの集中的な面的設置を図るとしています。
都心マンションでは宅配ボックスの設置が増える
また、民間では戸建住宅用宅配ボックス設置の再配達減少効果に関する実証実験も行われています。
昨年11月より、福井県あわら市とパナソニックが日本郵便、ヤマト運輸と共同で実証実験に着手しました。
1月下旬に発表予定されている中間結果では、宅配業者の労働時間やCO2の排出量に削減効果が表れている模様です。
4月の最終結果発表が楽しみです。
会社の垣根超え荷物集約と一括配送の取組も
一方、配送の効率化の側面からは、各宅配会社の荷物をまとめて配送する一括配送の取り組みも生まれています。
ヤマト運輸(株)とFujisawa SST協議会(代表幹事:パナソニック(株))は、昨年11月にFujisawaSST(神奈川県藤沢市)内の物流拠点として「Next Delivery SQUARE」を開業。
「Next Delivery SQUARE」に各宅配会社の荷物を集約し、ヤマト運輸他7社の宅配会社が各世帯に一括配送するというもの。
全国初の改正物流総合効率化法の対象として、国土交通省より認定されました。
さらに、2017年3月から全ての荷物情報を一本化し、当日のお届け予定情報や不在連絡をFujisawa SST内の各住宅に設置されたスマートテレビに配信し、居住者は、テレビ画面からまとめてお届け日時の変更や受取場所の指定ができるとか。
「ロスのない配送」と「ユーザーの受け取りやすさ」が高まる社会インフラの改善に、期待が高まりますね!
Photo credit: halfrain via Visualhunt / CC BY-SA