M&Aで2,000億の損失観測を報道されたキリンビールに中小企業が学ぶこと

事業譲渡

 キリンビールが、2011年にブラジルでM&Aにより買収した同業メーカーを、トータル2,000億円の損失を出して売却する見込みである、と報道されました。金額の大きさは大手ならではのものですが、中小企業のM&Aにおいても今回の事例と同じ要因で失敗が起きます。今後、企業買収や事業譲渡を検討される方にとっては、貴重な教訓を与える事例です。

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キリンのM&A失敗は中小も他人事ではない

 先週、キリンビールが、2011年にブラジルでM&Aにより買収した同業メーカーを、トータル2,000億円の損失を出して売却する見込みである、と報道されました。

 参考URL:キリン、3社とブラジルビール事業再建へ提携協議

 参考URL:キリンがブラジル撤退へ。3000億円かけて得た教訓:週刊ダイヤモンド

 3,000億円で買収した企業を6年後に1,000億円で売却する、これは文字通りの敗戦です。

 もっとも、直近の10月に発表した第三四半期の業績発表をみると、営業利益を大幅に上方修正し、流動負債6,659億円に対して流動資産が7,819億円になるなど財務体質は万全。

 会社の存続を脅かすまでの失敗とは、今のところならないでしょう。

 しかし、今回の失敗については、これからM&A(事業譲渡)が起こりやすくなる中小企業の経営者の方にとって、他人事ではなく、良い勉強材料として見ていただければと思っております。

 規模の大小に関係なく、M&Aで失敗する事例の多くには共通項があるからです。

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M&Aで失敗する事例の多くに共通すること

 M&Aで失敗する事例の多くに共通すること、今回のキリンもそうですが、読者の皆さんは何だと思われますか?

 私の考えは、わざとわかりにくく言うと、「ビジネスDD(デューデリジェンス:精査)の失敗」が大きな原因だと思います。

 もう少し分かりやすくいえば、買収後に、

  • いつ
  • 誰が
  • 何を
  • どうする

 ということに対するイメージがないまま、買収をした結果起きることが多いのです。

 キリンの場合も、周りが海外案件を買うから、焦って買ってしまった、という点にそれが現れています。

 これは、M&Aが手段ではなく、いつの間にか目的になってしまっているともいえます。

 M&Aを真剣に検討することはよいことです。

 しかし、部署が作られ、人を配置し、責任者がつくと、いつの間にかM&Aを成約させることが組織の目的になってしまう場合があります。

 これを補正できるのは、経営者しかいません。トップが自分の客観的な考えなしに、丸投げをしてしまうようでは、M&Aの成功は覚束起こり得ないのです。

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買収後のイメージを裏打ちする事業計画を持つ

 M&Aの成功確率は、将来をどれだけ具体的にイメージできるのか?によって大きく変わります。

 まったく将来がイメージできないようでは、どれだけの価値をつけてよいかわからないはずです。

 EBITDA倍率などで相場を見定め、それをベースに価格を決めてはいけません。

 表向きの交渉の材料として使うことはまったく問題ありませんが、自社内ではこれだけの価値があるはずだというイメージ、そのエビデンスとして具体的な事業イメージに裏打ちされた事業計画が必須になります。

 金額の大小で違いこそあれ、これからM&Aを実行される経営者の皆様には、ぜひ今回の教訓からM&Aに必要なことを掴み取っていただければと思います。

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大原達朗

一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会代表理事・アルテパートナーズ株式会社代表取締役として、M&Aを手掛ける公認会計士です。

BBT大学、法政大学院イノベーションマネジメント科の教員も兼任しております。

大企業だけではなく中小企業にとっても、ユーザーフレンドリーな会計業界を、世界中に広めることが目標です。

M&Aの悩み(会社や事業を売りたい/会社や事業を買いたい/小規模M&A投資を検討している)があれば、お気軽にお問い合わせください。

運営サイト:
経営者のための実践ファイナンス

【現職】
一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会代表理事
アルテ監査法人代表社員
アルテパートナーズ株式会社代表取締役
日本マニュファクチャリングサービス株式会社監査役
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼任講師
ビジネス・ブレークスルー大学大学院准教授
ビジネス・ブレークスルー大学准教授
PT. SAKURA MITRA PERDANA Director

【職歴】
1998年10月 青山監査法人プライスウオーターハウス入所
2004年1月 大原公認会計士事務所開設
2004年6月 株式会社さくらや 監査役
2006年1月 株式会社ライトワークス リスクコンサルティング部ディレクター
2007年4月 ビジネス・ブレークスルー大学大学院講師
2008年4月 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼任講師(現任)
2008年4月 アルテ公認会計士共同事務所開設 代表パートナー
2008年6月 日本マニュファクチャリングサービス株式会社 監査役(現任)
2009年4月 アルテパートナーズ株式会社設立 代表取締役(現任)
2010年7月 アルテ監査法人設立代表社員(現任)
2010年8月 日本M&Aアドバイザー協会 理事
2014年10月 日本M&Aアドバイザー協会 代表理事(現任)
2016年4月 ビジネス・ブレークスルー大学准教授(現任)

【所属団体】
日本公認会計士協会、一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会(JMAA)、日本税理士会、日本CFO協会

【資格】
公認会計士、税理士、 JMAA認定M&Aアドバイザー (CMA)

【その他】
ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA/経営管理修士(専門職) 日本CFO協会主任研究員(2006年)

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